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プロの語りごと

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トータルデザイナー

サラ・アロイジ 〜後編〜

サラ・アロイジさんのアートは、美への飽くなき探求心と、好奇心により生み出されたものである。そしてそれらを生み出すインスピレーションは、どこから得るのか? アーティストの生き方からより良く生きる知恵を模索する。
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文化の背景や言葉を知ることで、その土地の美意識への理解を、より一層深めようとする。

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ブラジルで儀式に使われる鳥の羽を、重ねて撮影したアート。

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空間の中にあることをふまえたファッションまでも演出したいというサラの個展。

情熱の国ブラジルを訪ねて

「最近、ブラジルに行ったのですが、ここも素晴らしい国でした。エネルギッシュで未来がある国です」

 日本の真裏に位置するブラジル。我々がイメージするのは情熱の国。サラもブラジリアンのエネルギッシュさに圧倒され、また原色の色使いに興味を持ったようだった。

 そのブラジルの歴史を少し紐解くならば、15世紀の大航海時代まで遡ろう。1494年のトルデシリャス条約により、スペインとポルトガルの新大陸の所有は、カーボ・ベルデ島の西370レグアを起点とした想定線の東方をポルトガル、西方をスペインが所有することとなった。

 それから、1822年に独立するまで、ブラジルは長らくポルトガルの占領下にあった。それ故、現在でもブラジルの公用語はポルトガル語である。さらに、ブラジル人は基本的に原住民であるインディオと、その後ブラジルに押し寄せたポルトガル人を中心とするヨーロッパの白人、加えて西海岸のサブ・サハラを中心とするアフリカの黒人の3人種から構成されていた。

 そして19世紀になってからも、世界中の移民を受け入れるようになったことで、ブラジルの混血化は加速していく。寛容で情熱的なお国柄、それは混血の人々から生まれたものなのだ。

「もっとブラジルを理解するためにも、これからポルトガル語を習いたいわ! そうすれば、現地の人とももっとフラットに付き合うことができるから」

 サラは語学にも長けている。そして、何よりも体得しようと努力をする。背景や言葉を知ることで、その土地柄の美意識への理解をより一層深めようとしているのだ。

「ブラジルで現地の儀式に使う鳥の羽を重ねて撮りました。ほら、こんなアートになるんですよ」

 旅先で興味を持ったものも彼女流のアートとなる。儀式に使われる鳥の羽も、サラにとっては美しいアートと成り得るものなのだ。そういった発想は、美とアートを生活の中心に置き、求め続けている所以かもしれない。

美術館で温故知新を

 サラは、貪欲に美を求める。パリや東京を散策するだけではない、それこそ世界中を回って美を探し続けている。そして、美の追究、創作意欲はファッションだけに止まらない。

 そもそもサラは、建築学を学んでいたのだという。日本に最初に来た時も、インテリアなどのインダストリアルデザインや空間演出を学びに来た。

「私はデザイナーです。でも単に服を作るのではなく空間の中にあることをふまえたファッションまでも演出したい」

 欲張りだが、これこそが美を求めて止まないアーティストの真髄である気がした。

 また、フランスにはルーブルやオルセーなど、名だたる美術館が沢山ある。サラも、そういった美術館へ足繁く通うことで、デザインのインスピレーションを受けるという。

「ルーブル美術館の13〜15世紀に作られたポリプティックが好きです。宗教画だけど、緻密に描かれていてとても美しいのです」

 ポリプティックとは多翼祭壇画のことである。サラは、現代アートだけからではなく、こんな意外なところからも創作のヒントを得ているのだ。

「あとは、デューラーやブリューゲルも好き。彼らの絵の中の服飾などをじっくり見るのは飽きないわ!」

 デューラーは、ドイツルネサンス期に活躍したドイツ美術史上最大の画家といわれる人物。版画をひとつのジャンルとして確立し、数多くの作品を残した人物である。

 片やブリューゲルは、16世紀に活躍した画家であり、ネーデルランド絵画の巨匠である。素描や銅板下絵画、そして農民の生活をテーマにした絵画を多く残している。

 その2人に共通することは、やはり並はずれた観察力だろう。モノの細部までよく観察し、それを確かな表現力で描き出す。彼らの絵を見れば、当時のライフスタイルがありありと思い浮かべられるほどだ。

「勿論、洋服だけを見るのではありません。絵画における空間も意識して見ることが必要ですね。そして当時のライフスタイルや、作り手のメッセージも感じ取りたいのです」

 古きを知って新しきを得る。まさに温故知新である。そして、古の巨匠達は死しても己の作品によって、現代のサラのような現代アーティストを育てているのだ。

素晴らしき日本の文化

 サラは、色々な国の文化や芸術を見てきたが、やはり日本の文化がとても好きだという。

「美術・建築を学びたいならば、必ず日本へ行かなければいけないと思います。それだけ日本の文化は興味深い。和紙が持つ繊細さと儚さ、陶芸の曲線の美しさ、そして移り変わる四季、どれをとっても素晴らしい。そしてできれば日本語を学んでほしいですね」

 この言葉を外国人のアーティストに向けられたものと捉えるのは、ナンセンスである。これこそ、私たち日本人に当てはまる言葉ではないだろうか。私たちは、美しいものに囲まれて暮らしながらも、それを「美しい」と意識することがあまりにも少ない。モノをよく見ることで、美しさに気付き、そして感動する。それこそが、煩雑な毎日をより意識的なものに活性化させるのではないだろうか。

 好奇心を失わないようにするのは難しいことではない。サラのように色々なものに興味を持ち、または興味が持てることを探し続けることこそが、知的探求の源であり、ひいては自分の仕事の向上にまで繋がるのではないだろうか。

取材/文 吉岡美那子

(12/20)

達人プロフィール

サラ・アロイジ

パリ在住フランス人。1989年にパリのアートスクールを卒業。1996年には武蔵野美術大学でインテリアデザインを学ぶ。留学中に書道と出会い、日本文化の造詣を深める。1999年と2000年の高島屋が開催した展示に出展。2001年からは東京の南青山のギャラリー「ギャルリーワッツ」で、年2回の個展を開催。平面としてではなく、立体として捉えてデザインした洋服は、フランスのみならず日本のファッション業界でも注目されている。

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