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「旅立つ鉄郎に『とうとう、とうとう…』と言わせたのは、自分自身の思い」と語る松本氏。 |
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名作『銀河鉄道999』の世界をスケールアップした『銀河鉄道物語〜永遠への分岐点〜』 |
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汽車の旅で浮かんだ構想
ドクロのマークが目印の、おなじみの黒いニット帽姿で、サラサラと色紙に筆を走らせる松本氏。慣れた手つきながらも丁寧に描かれていくのは、氏の最新作『銀河鉄道物語〜永遠への分岐点〜』の中で宇宙の運命すべてを担う謎の女性、レイラ・デスティニー・シュラの美しい横顔だ。銀河鉄道を守る「空間鉄道警備隊」(通称SDF)の活躍を描いたこの作品は、松本氏が長年にわたり大切に温めてきた構想がベースになっているという。
「高校卒業後、漫画家を目指して九州の小倉から上京するときに、汽車に乗りましてね。夜中、窓から外を見ていると、線路脇の外灯がまるで幾多もの星のようで、それこそ銀河の中を鉄道が走っているような感覚にとらわれたのです。当時は東京まで24時間という長旅でしたから、時間はたっぷりある。頭の中では物語の構想がどんどんと膨らんでいくわけです。その一部が、今こうして作品として形になったのです」
筆を置き、遠き日に思いを馳せる松本氏の眼差しは、まるで少年時代にタイムスリップしたかのように純粋な輝きをたたえている。
旅立ちを夢見る少年
松本氏が終戦後に移り住んだ小倉の自宅は、鹿児島本線のすぐそばにあった。手製のカメラで、まだ物心のついていない弟を線路前にてフィルムに収めた少年時代。その写真は今も大切に持っているそうだ。
「鹿児島本線には『東京駅』というプレートのついた特急や急行が走るんです。それを見るたびに、『俺もいつかあれに乗って東京へ行く』と、心に誓ったものです。『銀河鉄道999』の劇場版の中で、旅立つ鉄郎に『とうとう、とうとう…』と言わせたのは、自分自身の思いでもあったのです」
やがてトランク1つと夢を抱え、憧れの汽車に乗って松本少年は上京を果たすことに。
「SLで東京に来られたのは、本当にハッピーでした。数年後にはディーゼルに代わり、電気機関車に代わってしまいましたからね。僕は長距離を汽車で24時間かけて上京できた最後の世代だったんです。つまり、泣いても死んでも帰れないという距離感だったわけで、それ相当の覚悟がいったのです。これも運命でしょうね。ディーゼルや電気機関車で上京していたら、そういう思いにはなれなかったでしょうから」
鉄道への深いこだわり
その後、思い出の蒸気機関車「C62」をモデルにした銀河鉄道「999号」で、少年時代の旅の続きを実現させた松本氏。『銀河鉄道物語〜永遠への分岐点〜』の中では、SDFシリウス小隊専用車輌「ビッグワン」がその役目を引き継ぐ。原型となったのは、米ユニオン・パシフィック鉄道が1941年〜44年にかけて製作した世界最大の蒸気機関車「ビッグボーイ」である。
「ビッグボーイの模型を買ったのは近年ですが、保証書はなんと1950年で切れていましてね(笑)。ずっと店の棚で眠っていたんでしょう。でも、お店のご主人から構造図なども頂きまして、車体の仕組みなんかも熟知しているんですよ。僕は汽車でも飛行機でも、実物に沿って描くのが好きなんです。そこがマニアのマニアたるゆえんでしょうね(笑)」
鉄道の話となると、ことさら饒舌となる松本氏。温かい愛情が言葉の端々から溢れ出す。10代で夢を持って汽車に乗り、デビュー53年を迎えた今も、同じレールの上で夢を抱き続けているという松本氏。「若者と一緒に旅を続けていきたい」との願いで製作された『銀河鉄道物語〜永遠への分岐点〜』は、少年少女やかつての若者、そして松本氏自身の夢を乗せ、今、発車の汽笛を鳴らしたばかりだ。
取材/文 高間裕子
(10/14)