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自分の手に合った万年筆を手に入れるのは、大人ならではの究極の贅沢と古山さん。 |
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万年筆の達人/古山浩一
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400本の“道具”
テーブルの上にずらりと並べられた万年筆。その数は優に20本を超える。所有本数は約400本と言うから、ここにあるのは厳選されたほんの一部ということになる。しかし、一口に万年筆と言っても、色も形も1本1本がかなり独創的だ。専用の皮ケースに入れられたそれらは、宝石のように色鮮やかで洗練されており、かつ重厚な存在感を放っている。
「コレクションというよりも、僕にとっては道具ですね。使うことが前提ですから」
そう言い、おもむろに1本を手に取ると、慣れた手つきで白い紙の上にサラサラと筆を走らせる。筆の角度や面に合わせて、線の太さもまるで生き物のように変化する。職人と直に向き合い、納得のいくまで調整してもらったというペン先。書き手の体温や呼吸をも感じさせる表情豊かな線は、この先端から生み落とされる。
「万年筆画家」と呼ばれて
今では「万年筆画家」と呼ばれることも多い古山氏。きっかけは13年ほど前、1本の万年筆との出会いにあった。
「仕事で細いインクの線が出したくて、最初はロットリングの製図ペンを使っていたんです。でもそれだと、水彩用のボソボソした紙に引っかかっちゃうんですよね。そこで、万年筆を手作りしている鳥取の専門店『万年筆博士』にお願いしてみたんです。0.13ミリの線がほしいんだけど、万年筆でできないかと」
前代未聞の注文ではあったが、同店秘蔵の極細用のペン先を使うことで、希望どおりの線が実現した。ボディには、熱伝導率が低く、万年筆に最適と言われるゴムと硫黄の化合物「エボナイト」に、水牛の角をアクセントに挟み込む。自分だけのオリジナルな1本の誕生だ。これを機に、古山氏の万年筆への情熱が急激に加速していく。
「こういうものもできないかと職人さんに相談し、できたもので新たな表現に挑戦する。道具が変わることで線も絵も変わり、表現の幅も広がっていく。それが驚きでもあり、おもしろくもありましたね」
こうして日本全国の職人と交流していくうちに、彼らの生きた証を記録に残したいという思いが強まっていった。万年筆離れが加速する中、最後までフィールドに残ったこだわりの職人たち。彼らがどのように生き、何を考え、どんなペンを作ったのか――それをしたためたのが、『万年筆の達人』だ。10年以上かけて27名の人生を追い、昨年ようやく出版にこぎつけた。万年筆に魅了された一画家としての、「集大成」とも言える渾身の1冊だ。
自分に合った1本を
思い入れのある万年筆だからこそ、人にも「これぞ」という1本を使ってほしいと古山氏は熱く訴える。
「一度、大井町にある万年筆専門店『フルハルター』で、自分の手に合った万年筆を実際に体験してみてください。ここは個人に合わせてペン先を研ぎ、納得のいく書き味にして渡してくれます。『これが本物の万年筆か!』と、目からウロコが落ちますよ」
軸からペンの太さまで、すべて自分の好みでオーダーして作りたい場合は、鳥取の「万年筆博士」へ。人気が高く、1年半ほど待たなくてはならないが、それだけの価値は十分あると古山氏は語る。さらに、困ったときには“ペン先の神様”長原宣義さん親子が全国を行脚する「ペンクリニック」が強い味方に。どんな万年筆でも、まるで魔法のようにペン先を復活させ、さらに好みの線が出るように調整してもらえるのだとか。
一流の職人と向き合い、自分にピタリと合った1本をカスタマイズしてもらう――大人ならではの究極の贅沢を、皆さんも一度楽しんでみてはいかがだろう。くれぐれも、その魅力にとりつかれることを覚悟の上で……。
取材/文 高間裕子
(03/10)