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創業百二十年余の木版画制作工房 | |
竹中木版 竹笹堂原田裕子さん | ||
江戸時代より木版技術を継承、創業してから百二十年余の竹中木版竹笹堂は、現在の店主、原田さんで五代目。町屋を改造し、二階が木版画制作工房、一階をお店にしている。最近ではインターネットでの販売も実施。全国に伝えたい、生活の中に活きる木版画の魅力とは?
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カジュアルだった木版画
江戸時代の版元と呼ばれる出版社は、人気商品や売れ筋商品を生み出そうと流行に敏感で、試行錯誤しながら絵師に絵を描かせていた。いかに少ない版数で多くの色数を出し、そして表現するかということ。それでいて素材や技術に誇りを持ち続けることを忘れない。これは、芸術ながらも販売を前提とする木版画だからこその理念である。
現代の我々も、こうした版元としての目を持ちながら、絵師、彫師、摺師との共同作業によって、木版画を制作していきたいのだと、店主は語る。
少し前までの日本で、印刷といえば木版画によるものであった。それは絵画として楽しむのはごく一部で、娯楽品や情報提供といった現代の新聞やミニコミ誌のようなものなど、木版画は生活の中に溶け込んでいた。そして、北斎や写楽といった名だたる浮世絵画家ですら、当時はイラストレーター的な存在であった。
そんな庶民に親しまれた木版画のように、もっとカジュアルに、生活にとけ込んで活用できるような“使える木版画”を制作することを目指しているのだ。
使える木版画、お香袋飾りの誕生
使える木版画を作るきっかけとなったのは、お香袋を制作したスタッフの森嶋さんのこんな言葉であった。
「木版画というと多くの人は浮世絵みたいな美術品を思い浮かべるんじゃないかな…。でも版画を始めてから自分の身の回りを見回してみると、版画と同様に転写してあるものっていっぱいあるって気が付いたんですよね。」
木版画の特徴は、一度版を彫ってしまえば、何度でも摺って作れるということ。機械的な大量生産は難しいとしても、ある程度の量産は十分可能だ。だからこそ、身近なものとして木版画を使うことが出来ると感じたという。
そしてこの考えと、ひとつの袋との出会いが“使える木版画”お香袋飾りの誕生のきっかけとなった。
ある時、森嶋さんが服を購入すると、大きな紙袋の他にもみ紙の内袋を用意してくれた。何気なくその内袋に、自分の持っていた版木を押し当てて摺ってみると、絵柄の入った小さい封筒のようになった。可愛い、もみ紙の封筒。これにお香を入れてはどうだろうかと、ひらめいた。タンスに忍ばせる芳香剤はすでに市販されているが、飾る芳香剤は見た事がない。それでは、お香を入れて飾ったらどうだろう。素敵なインテリアになるのではないかと思い付いたのだ。これならば、香りも長く持ち、かつ版画としても可愛く鑑賞できるので、生活にとけ込ませることが出来る。
「これは使える! 面白い!! 」。店主が求め続けている“使える木版画”の理想像がそこにあった。新商品が誕生した瞬間である。
古典的な絵柄をモダンで粋に!
和柄が好きで自らそればかり求めてきたという、お香袋飾りの制作者、森嶋さん。古典的な絵柄は日本独特のものであるし、性別や世代を問わず受け入れられやすい。しかしその反面、古くさいとか、在りきたりなどと思われがちでもある。そういった扱いが難しい古典的な絵柄をいかにモダンに見せるか、現代に沿うように、かつ粋に作れるかが焦点となった。
「私はアンティークなものを現代に活かすことがおしゃれなことだと思っていたから。今の若い子たちが、古着の着物を現代風に着ているみたいに。」
そう、一度廃れたものでも、時を経て新鮮に映り持てはやされることが多々ある。アンティークやビンテージの着物は現代にはない色使いや柄で、若い女性には新鮮に映り、それを今風に着こなすことが流行している。だから、お香の木版飾りにも、馴染みの深い柄であると同時に新鮮さも持ち合わせるように努めたのだ。
森嶋さん曰く、古来の日本人がそうしてきたように、暮らしの中に四季を取り入れることが、良く、楽しく生活するために必要なのだという。例えば季節ごとに色紙を変えたり、行事に合った小物を置いたりといったことである。木版画は絵具さえあれば自分の好きな色合いを出すことは勿論のこと、暖色系、寒色系と使い分けることで季節感も出すことが可能だ。木版画で四季を感じ、それを飾る。そうして、インテリアや小物をちょっと変化させるだけで、ぐっと身近に四季を感じさせることができる。
そうやって、身近に木版画に触れることで、「きれいやなぁ」とか「贈られて嬉しい」とか「大事にしていきたい」という気持ちになってもらいたい、その為には制作から販売まで頑張っていきたいと店主は語る。
木版画を生活の中に取り入れることで、生活の充実を得られれば……。そういった思いを込めて、竹笹堂では、日々商品を開発し、これからも続けていきたいと考えている。
美しき青き鴨川
おすすめ商品の中に、鴨川を望む版画がある。何気ない風景だが、突き抜けるような青、清々しい青が見る者の心を洗う。奈良時代から伝わる木版画の技術や技法が、幾度となく歴史の舞台となった鴨川が、遙かなる刻を経て、現代の自分の部屋に在る。素晴らしいことだ。そんなことを考えるだけで、心が浮き立つ。
また、物の溢れた時代だから、プレゼントの候補が無限に広がってしまい、かえって何を贈ったら良いかと悩む人が多いはずである。花も良い。アクセサリーも良い。しかし、時には絵を、カジュアルな木版画を贈ってはどうだろうか? 記念日に贈られた絵を見れば、贈り主やその記念日のことを容易に思い出すことができるだろう。生活に邪魔にならないモダンで粋な木版画であれば、なおさら喜ばれるはずだ。
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木版のしおり 手漉きの和紙の風合いを感じさせるミミ付き木版画のしおり。上品な色合いで季節を感じさせる。 |
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お香の木版袋飾り 新年から春にむけてのお香が勢ぞろい。きつい匂いではなく、ほのかに香るので邪魔にならないのも嬉しい。 |
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青三条(木版画) 京都三条大橋から望む鴨川の風景を全て青系の色で表現。浮世絵の「藍絵」の感性を現代風にアレンジ。 |
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