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21世紀を見つめた黙示録

井上陽水「最後のニュース」

2010年3月19日

写真:井上陽水さん編集の「最後のニュース」を映してもらうと、隣のスタジオに筑紫哲也さんがいる気がした=東京・赤坂のTBS拡大井上陽水さん編集の「最後のニュース」を映してもらうと、隣のスタジオに筑紫哲也さんがいる気がした=東京・赤坂のTBS

 2008年6月29日、東京・渋谷のオーチャードホール。井上陽水さん(61)の歌声を、客席からじっと見つめる男がいました。末期がんと闘っていた筑紫哲也さん(当時73)でした。

 陽水さんが思いを込めた歌は「最後のニュース」。筑紫さんはその3月にTBS系テレビで18年続けた「NEWS23」のキャスターを終えていました。

 終演後、楽屋で軽い会話を楽しんだふたり。至福の時と見えた筑紫さんですが、翌日、鹿児島での治療に移りました。再び戻った東京で息を引き取るのは4カ月余り後のことでした。

 ふたりの縁は陽水さんの出世作「傘がない」(1972年)にさかのぼります。〈都会では自殺する若者が増えている〉で始まり、〈だけども問題は今日の雨 傘がない/行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ〉と裏をかく例の歌です。全共闘が挫折した頃の「シラケ世代の歌」などと評判をとりました。

 筑紫さんは「すごいのが出てきた」と面白がりました。78年、テレビ朝日の新番組「こちらデスク」でキャスターになると、この歌を流して2番を口にしました。〈テレビでは我が国の将来の問題を/誰かが深刻な顔をしてしゃべってる〉。そんな風な番組にはすまい、と。今度はテレビを見ていた陽水さんが「この人、分かってるな」と驚いたそうです。

 「朝日ジャーナル」の編集長となった筑紫さんは「若者たちの神々」シリーズで陽水さんと対談し、この天才ミュージシャンが実はニュースに敏感なテレビ人間であることも知ります。やがて89年に新聞社を去り、TBSで「筑紫哲也NEWS23」を始めたとき、陽水さんにエンディングテーマ作りを頼みました。

 こうしてできたのが「最後のニュース」。呪文のような不思議な響き。自然破壊、戦争、薬害、マネーゲームと、重いテーマを叙情詩にして終末を予言する黙示録のようでもありますが、〈あなたにGood Night〉とラブソング風に終わる仕掛けもありました。

 2008年11月7日。筑紫さんは亡くなりました。深夜、その自宅に駆けつけて亡きがらと対面した陽水さんは、4日後の追悼番組で最後の歌をささげました。

 あなたにGood Bye

 サングラスの奥で目が潤み、声はかすかに震えていました。

 

 (続きは3月20日付け朝刊の別刷り「be」をお読みください。)

 

聴く

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 「最後のニュース」はCD「ハンサムボーイ」(フォーライフ)に収録される。CD「GOLDEN BEST」(同)や、歌手生活40周年を記念して3月末に発売されるDVD「40th Special Thanks Live in 武道館」(同)では「傘がない」ともども楽しめる。

読む

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 「最後のニュース」については筑紫哲也『ニュースキャスター』(集英社新書)、えのきどいちろう編『井上陽水全発言』(福武書店、絶版)、『井上陽水FILE FROM 1969』(TOKYO FM出版)などにも書かれている。週刊朝日MOOK『筑紫哲也』には井上陽水さんによる追悼文も載っている。

今回取り上げている商品

CD「ハンサムボーイ」

CD「ハンサムボーイ」

90年代に発売された「ハンサムボーイ」がSHM−CDとなって復活! 「最後のニュース」や「少年時代」などの名作を、クリアな音質で楽しもう。

CD「GOLDEN BEST」

CD「GOLDEN BEST」

1997年に発売された2枚組のベストアルバム。「少年時代」「ありがとう」「最後のニュース」など、代表曲をたっぷり収録している。同日発売の「GOLDEN BAD」も話題となった。

DVD「40th Special Thanks Live in 武道館」

DVD「40th Special Thanks Live in 武道館」

井上陽水デビュー40周年を記念した日本武道館でのスペシャル公演の模様を全曲収録。貴重なライブ映像を堪能できる一枚。

『ニュースキャスター』

『ニュースキャスター』

筑紫哲也が現場からの目線で語る「ニュースキャスター論」。「ニュース23」創設からの経緯を、自らの体験を軸に書き綴る。

『井上陽水FILE FROM 1969』

『井上陽水FILE FROM 1969』

井上陽水デビュー40周年に合わせて発売されたアーカイブス。40年間のインタビューの数々と関係者の証言、ディスコグラフィー、ツアースケジュールなど、貴重なデータを満載している。

週刊朝日MOOK『筑紫哲也』

週刊朝日MOOK『筑紫哲也』

立花隆による生前のロングインタビューや、家族が語る素顔など、筑紫哲也の魅力に迫る一冊。井上陽水、坂本龍一ら著名人のインタビューも掲載。

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