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ロンドン中心部からはずれた港湾地帯の会場で開かれる「アフロビート」というDJイベントは、午後11時を過ぎてようやく客がそろい始めました。アフリカ諸国からDJを招いて開かれるダンスパーティーです。若い体力と性欲と、おそらくは望郷心とで会場が爆発するのは、ようやく午前4時を過ぎてから。アフリカ系の客が多いけれど、モデルのような白人女性も会場をねめ回します。音楽を聴くクラブの客層が人種ごとにくっきり分かれるアメリカに比べてロンドンは、音楽に関しては人種の混在が進んでいる印象があります。
世界各地を侵略し、植民地統治した大英帝国。イギリスの音楽には、かつての宗主国の光と影が混在します。ロックの代名詞であるローリング・ストーンズの音楽も、例外ではありません。
1968年に発表された「悪魔を憐れむ歌」は、中期ストーンズ絶頂期の幕開けを高らかに宣言する傑作です。ロック史に残る名曲ですが、少し変わった「ロック」でもありました。左右のスピーカーに分かれて聴こえるリズムは、それまでにない種類のものでした。アフリカや中南米で使われる打楽器のコンガやシェケレ、マラカス……。ファンキーなピアノに、いい意味でルーズな、粘りつくベース。いつまでたってもストーンズらしいドラムが前面に出てきません。変則的なサンバのリズムで最後まで押し通します。目の覚める新しさでした。
「London Is The Place For Me」――ロンドンこそ俺の場所、という題名のCDがあります。50年代のロンドンで活動した、移民ミュージシャンたちによる貴重音源です。当時からジャマイカなどカリブ海諸国や、ガーナなどアフリカの音楽家がイギリスに入り、さかんに演奏していました。この中の、西インド諸島セントビンセント・グレナディーン出身のミュージシャンによる曲が「悪魔を憐れむ歌」のリズムに似ています。かの地は元は英国の植民地でした。
60年代末のストーンズは、どうやらアフリカの音楽にいたく「やられて」いたらしいのです。想像以上に、ストーンズは「ワールドミュージック」でもありました。
(続きは2月25日付け朝刊の別刷り「be」をお読みください。)

「悪魔を憐れむ歌」は1968年のアルバム「ベガーズ・バンケット」(CDはUSMジャパンから、2200円)に収録。フランスの名匠ジャン・リュック・ゴダールの映画「ワン・プラス・ワン」(68年)は、ストーンズが試行錯誤をしつつ「悪魔を憐れむ歌」を録音する様子を収めたドキュメンタリーを含む、貴重な資料だ。DVDがキングレコードから発売されている。2940円。69年のストーンズ全米ツアーを追ったドキュメンタリーが「ギミー・シェルター」。オルタモントで開かれ、黒人青年が刺殺された事件が起きる問題のフリーコンサートも収録。ミックらメンバーの、沈鬱でうつろな表情が切ない。デジタルリマスター版のDVDがワーナー・ホーム・ビデオから出ている。1500円。

キース・リチャーズの自伝『ライフ』(棚橋志行訳、サンクチュアリ出版)が2011年に出版され、各国でベストセラーに。ニュージャーナリズムの旗手、ハンター・S・トンプソンが27歳でデビューした作品が『ヘルズエンジェルズ』(石丸元章訳、リトルモア)。ゴンゾー(ならず者)ジャーナリズムの金字塔で、1960年代の荒ぶる空気を伝える。
ローリング・ストーンズが1968年に発表したアルバム。「悪魔を憐れむ歌」「ストリート・ファイティング・マン」など10曲を収録している。
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ジャン=リュック・ゴダール監督によるドキュメンタリー映画。「悪魔を憐れむ歌」のレコーディングなどを見ることができる。
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1969年に行われたローリング・ストーンズの全米ツアーを追った作品。ツアー最終日、オルタモント・スピードウェイでのフリーコンサートで起きた衝撃的な事件についても収めている。
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アメリカのオートバイ集団で、オルタモントで黒人青年が刺殺された事件にもかかわりのある「ヘルズエンジェルズ」。彼らの姿を描き出した、ゴンゾー(ならず者)ジャーナリズムの旗手ハンター・S・トンプソンのデビュー作。
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beは朝日新聞の土曜朝刊に挟み込まれてくる別刷り紙面です。ビジネスの「b」(青のbe)と、エンターテインメントの「e」(赤のbe)から成っています。「うたの旅人」は赤beのフロント紙面で、08年4月から続いている企画です。毎週、一つの歌を題材に、記者が歌にちなんだ土地を旅し、歌にまつわるエピソードを探します。
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