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そそくさと邪念をふるい落とすように小きざみな足踏みをしてから、黒衣の選手はおもむろに走りだしました。
グラウンドをおおう枯れ芝にすえられた楕円(だえん)のボールまで約4メートルの助走には1秒とかかりません。その刹那(せつな)が、近鉄花園ラグビー場(大阪府東大阪市)を締めつけられるような緊迫感で包みこみ、スタンドの観客をことごとく金縛りにしていました。
1984年1月7日、近鉄花園ラグビー場の第1グラウンドは第63回全国高校ラグビー大会決勝戦の舞台となっていました。
地方予選を勝ち抜き、あこがれの「花園」でトーナメントを勝ちあがったのは天理(奈良県天理市)と大分舞鶴(大分市)でした。天理の純白のジャージーと大分舞鶴の黒一色のジャージーが死にもの狂いで激突した戦いは、すでに後半のロスタイムに入り、5分余り経過していました。
後半の30分の試合時間が尽きたときのスコアは、18対12で天理が優勢でした。ところが、ロスタイムに入って4分30秒後、大分舞鶴が起死回生のトライを決め、4点(現行ルールでは5点)を加えたのです。
18対16。ゴールキックをはずさなければ2点、上積みして同点になり、その瞬間に「ノーサイド」(試合終了)のホイッスルが鳴りわたります。ルールに延長戦はなく、引き分けなら両校優勝になります。あきらめかけた栄冠を崖っぷちのひと蹴りでもぎとる劇画さながらの幕切れがあるのでしょうか。観客は身を乗り出して見届けようとしていました。
(続きは12月1日付け朝刊の別刷り「be」をお読みください。)

「ノーサイド」は松任谷由実さんの最新アルバム「日本の恋と、ユーミンと。」(EMIミュージック・ジャパン)で聴ける。デビュー40周年記念のベストアルバムで3枚組み46曲収録、3600円。
松任谷さんはいま、イギリスのロックバンド「プロコル・ハルム」と共演するライブツアー中だ。1967年に大ヒットした彼らのデビュー曲「青い影」は、松任谷さんが13歳のときにラジオで聞き、シンガー・ソングライターになる未来を思い描かせた「運命の曲」だという。公演予定は3、6日=大阪国際会議場メインホール(大阪市)/10、11日=昭和女子大人見記念講堂(東京都世田谷区)/12日=名古屋国際会議場センチュリーホール(名古屋市)。詳しくは公式ホームページ(http://yuming.co.jp)へ。
「恋人がサンタクロース」「ノーサイド」「卒業写真」など、荒井由実時代から現在までに歌われた名ラブソング45曲を厳選した40周年記念ベスト。初回限定盤には、特典DVD“観るベスト”も同封されている。
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beは朝日新聞の土曜朝刊に挟み込まれてくる別刷り紙面です。ビジネスの「b」(青のbe)と、エンターテインメントの「e」(赤のbe)から成っています。「うたの旅人」は赤beのフロント紙面で、08年4月から続いている企画です。毎週、一つの歌を題材に、記者が歌にちなんだ土地を旅し、歌にまつわるエピソードを探します。
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