写真・図版 今が旬の人気の微笑庵の「ちごもち」

写真・図版 悲話を伝える大信寺の徳川忠長の墓

写真・図版 トラットリア風のボンジョルノ本店

写真・図版 菓子に腕をふるう、微笑庵店主の宮澤啓さん

 高崎といえば白衣大観音、高崎少林山達磨寺など思い浮かぶ観光名所は多くない。けれど中山道、三国街道など古くからの交通の要衝、また井伊直政が高崎城を築いて以来、城下町、宿場町、問屋町として栄えた地である。

 そんな歴史の面影も戦災で多くが失われ、上越・北陸新幹線、鉄道、自動車道など人や物資の交流による県内第一の商都の発展に埋もれて影が薄い。そこで先日思い立って、所用後の3時間ほど街をぶらりと歩いてみた。

 最初に立ち寄ったのは高崎城址。西を流れる烏川を天然の堀として三方を土塁と三重の堀で固めて築いたのは関ヶ原の戦いで功を挙げ、のちに彦根藩を興した徳川四天王の一人の井伊直政だ。城主はめまぐるしく代わったが、三ノ丸堀と土塁、入母屋造り2階建の乾櫓、東門が往時の面影を今もわずかながら伝える。

 城跡は桜の名所の城址公園となり、高層の高崎市役所がそびえ立つ。最上階から展望していると、思い出したのが3代将軍で兄の徳川家光に高崎城に幽閉され、自刃に追い込まれた弟・忠長(2代将軍秀忠の第3子)のこと。

 才気は家光に勝るといわれた忠長は若くして甲斐、信濃、駿河、遠江55万石を領する大名(駿河大納言)となったが、父・秀忠の死後、家光から乱行をあげつらわれ、時の城主・安藤氏の助命嘆願にもかかわらず、38歳の短い一生を閉じた。

 自刃したと伝わる部屋があるのが長松寺。五輪塔の忠長の墓があるのは駅近くの大信寺。時代の底にひそかに押し込められた史実を思い描くと、高崎の街が歴史の中でうっすら色を帯びて浮かんでくるようだった。

 旧中山道の雰囲気を探して歩いた後、“パスタの街・高崎”のうたい文句にひかれ、地元の人に連れて行かれたボンジョルノ本店(027・362・7722)で、“キングオブパスタ2009”の大会でグランプリに輝いた「ハーブ豚のカッチャジョーネ」を賞味。驚くほどの大盛りで、とろとろの豚肉と濃いトマトベースのソースがほどよい歯応えのパスタにからんだパンチの利いた美味だった。普通のパスタの1・5倍以上はありそうたが、高崎では当たり前のボリュームだそうだ。

 高崎はまた“スイーツの街”。横山製菓の「栗甘納糖・初霜風情」や七冨久の「鉢の木」、全国人気のガトーフェスタハラダのラスク「グーテ・デ・ロワ」など数多くある。なかで行列ができ、売り切れご免の「ちごもち」が評判という御菓子司・微笑庵(027・343・3026)に足をのばした。

 苺の紅色が薄い羽二重餅からほの見えるいちご大福だが、繊細で軟らかな餅皮の中からほとばしる苺のみずみずしい甘さと香りはうっとりする美味しさ。人気振りが納得できた。群馬県指定品種の「やよいひめ」の大粒高糖度の極上品だけを使用していて、「基準以上の苺が手に入らない時は製造しません」と心意気を語る店主の宮澤啓さん。5月までの期間限定発売である。

 そういえば群馬は全国4位の小麦生産県で、古くからうどん、おっきりこみ、饅頭、パンなど粉食文化の地。パスタもお菓子もそんな風土から生まれたのである。

文・写真 中尾隆之

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。文中・写真説明のリンク先は楽天トラベルの旅行情報ページです。

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