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< 第1回朝日杯将棋オープン戦 観戦記第8局 >
本戦1回戦 先手 ▲ 佐藤和俊 五段   対  後手 △ 堀口一史座 七段

佐藤和、本戦開幕戦を制す

対局日:2007年12月14日

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■本戦開幕

 ネットと融合した画期的な早指し新棋戦、「朝日杯将棋オープン戦」もいよいよ本戦に入った。実績のある強豪が名を連ねる中、唯一のルーキーとして残ったのが佐藤和俊五段。佐藤といえば17歳で三段昇段し、その後リーグで苦杯をなめ続け25歳でプロ入りした遅咲きの新鋭。三段リーグ在籍16期はもちろん過去最多、今後もまず破られることのない記録である。

 クールな外見からは、苦労もその胸のうちも想像できない。しかし性格は自他ともに認めるかなりの負けず嫌い。このメンバーの中でも負けるわけにはいかないと内心思っているだろう。相手は三段時代数多く記録を取り、終盤の才能を認める先輩。不足はない。

 堀口一史座七段は本棋戦の前身「朝日オープン」初代覇者でもある。自身の研究手までノータイムで指し進め、急所で大長考に沈む独特の対局スタイルが持ち味。順位戦では5時間を超える長考をして周囲を驚かせた。哲学に傾倒したり、ベジタリアンであったりと、内面でもこだわりが多い。そのこだわりはともすれば生きるのに、勝負をするのに不自由さを強いる。だがそれが堀口の魅力を形成しているのも間違いない事実だ。

■おお捌きに

 もともと四間飛車メーンの使い手だった佐藤は、「将棋の幅を広げるため」と今期から中飛車を連投して勝率を稼いでいる。対する堀口は得意の持久戦模様。5筋の歩交換(第1図・23手目▲5五同飛まで)に△5四歩と穏やかに受ければ、後手は穴熊に囲い、先手は5六銀の好形を主張する戦いになっただろう。本局は5筋を受けない欲張った指し方。佐藤はこれをとがめんと第2図(31手目)、元気よく▲4五歩と仕掛けた。

 以下は複雑な手順をたどるが、39手目▲4五銀の局面は第2図で△同歩▲同銀となった局面と同じ。堀口は40手目、かなりの時間を費やし△5五歩とひねった受けを編みだした。もちろんここは△5四歩もあるところで、▲4四歩△同銀▲5四銀△5五歩▲4三銀成△同金▲4五歩△同銀▲5五角と先手の攻めが続き、難しい。本譜は▲5一飛成と龍を作らせるものの、佐藤が軽視していた△4二銀〜△5二銀が手順に自陣を固める好手。おお捌(さば)きになった第3図(58手目・△5二銀まで)は手厚さの勝る後手を持ちたい。「仕掛けたわりにはうまくいってない」と佐藤も認めた。

■プレッシャー

 先手は4筋の薄みが気になる。また△8九馬〜△6七馬とされると馬が絶好の位置だ。ならばと第3図から▲7一馬が勝負手だった。▲9一馬なら香が取れるが、9九馬に少しでもプレッシャーをかけないと勝てないという読みだ。4四が気になった後手は△4七歩と垂らしたが、ここでは△4四香▲4七歩△8九馬と駒得を重ねていけば有利だった。「なんだ。難しく考えすぎちゃったな……」と堀口。本譜は佐藤が丁寧に4筋の面倒を見、後手に△8九馬のいとまを与えない。結果的に7一馬の牽制(けんせい)作戦が成功した。

■秒読みのコツ

 方針をはっきりさせるのが、終盤の、特に秒読みの戦いを乗り切るコツだ。佐藤は一貫して丁寧な指しまわし。3八の銀や、8筋の飛車など、幾度も行ったりきたりさせられるのは悔しいが、このような辛抱強さが無ければ振り飛車は指しこなせないだろう。

 △4四香と打ち下ろした局面はもうどちらがいいかわからない。俗に4枚の攻めは切れないといわれるが、後手の攻め駒は3枚。続く82手目の△4七香成が失着で、ここは△3三桂と攻め駒を足しておくべきだった。香を手にした先手に▲5九香と打ち返されては流れがおかしい。第4図(87手目)の▲5五歩が佐藤自賛の一着。「相当打ちづらいけど、よく辛抱できた。これで簡単に負けなくなりました」

■角一閃(いっせん)

 91手目▲8一竜では▲7五銀と馬を攻められると堀口は困っていた。本譜は再び堀口に攻めがまわってくる。△5五飛からはっとさせる手順を連発。「勝つ筋はこれしかない」(堀口)と120手目△5九角を打ち下ろした。▲5八金には△4九銀▲同金△同歩成▲同玉△5七飛成。望みを託すのも無理もない鮮やかな順だ。

 だがここで、今までの辛抱のうっぷんを晴らすがごとく▲8七角(第5図・121手目)と打ったのが絶妙な返し技。△6八角成とすれば▲5四角△同金▲3四桂がある。堀口はノータイムで△5二飛とぶつけたが、これには▲4一銀が狙いすました決め手。▲3二銀成〜▲4四桂以下の詰めろ飛車取りで、勝負あった。

 最後に▲6九金と落ち着いて受けて先手勝勢。秒読みの将棋らしく、堀口は可能性のある手を最後まで指し、△4九とで力尽きた。

 佐藤の長年培った振り飛車らしい辛抱が実った一局。次の目標はベスト4だ。「ここまで相手のミスにも助けられ、幸運でした。公開対局がかかる次が大一番、どちらが来てもキツイ相手ですが、頑張りたいです」(佐藤)。

(藤田麻衣子)
(2008年01月09日 更新)

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