現在位置:asahi.com>将棋>朝日杯将棋オープン戦> 記事

< 第1回朝日杯将棋オープン戦 観戦記第21局 >
準決勝第2局 先手 ▲ 丸山忠久 九段   対  後手 △ 羽生善治 二冠

重量級のぶつかり合い

対局日:2008年02月09日

棋譜再生 別ウインドウで開きます | 使い方

棋譜

棋譜

棋譜

棋譜

棋譜

棋譜

棋譜

 最後の朝日オープン覇者・羽生とA級の丸山。重量級の両者が準決勝で激突した。準決勝と決勝はインターネット中継だけでなく、有楽町マリオンの朝日ホールで公開のイベントとして行われる。

 観客の拍手に迎えられ入場する準決勝進出の4人。2局並んで行われ、大勢のファンがぐるりと取り囲んだ。対局場は大盤解説場と行き来できるようになっている。対局席は公式戦では珍しいイス席だ。丸山は背筋をピンと伸ばしきっていた。ひじをテーブルに載せる羽生の対局姿はチェスをプレーしているようで違和感がなかった。

■意表の2手目

 振り駒で後手となった羽生の2手目△3二飛(第1図)には早くも驚かされた。「後手になったらやろうと思っていた」と羽生。プロの間では最新の研究課題という。2筋を伸ばされると受けがないようだが、▲2六歩には△6二玉▲2五歩△3四歩と進め、(1)▲2四歩には△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△2二飛、(2)▲2二角成△同銀▲6五角には△7四角で、どちらの順も受かっている。すぐにつぶれないなら△3五歩〜△3四飛と石田流に組めるという理屈だ。論理的な裏付けはあっても公式戦ではまだほんの数局指された程度。試してみるのが羽生流だ。「△3二飛は予想外でした」という丸山は、3手目の▲9六歩に5分ほどを費やした。持ち時間40分のこの棋戦では大長考といえるだろう。

■攻めの技 受けの技

 9筋の位を取っていわば持久戦を選択した丸山に対し、羽生は一気に襲いかかる。玉の囲いを最小限にとどめ、△3六歩と合わせた第2図。「位を取られているのでゆっくりできない。いくしかない」と羽生は語った。

 丸山は受けに秀でた棋風。ゆがまされた陣形のバランスを巧みにとっていく。第2図から▲5六角△4四銀▲3六歩△6四角▲1八飛△2四飛(第3図)と進む。△4四銀ではあくまで3筋を狙う△4四歩がまさったようだが、△6四角に期待した。△2四飛で受けのない形、と思いきや▲4六歩△同角▲3八角が粘り強い受けだった。△5七桂成が生じるので盲点だが、すぐに△5七桂成は▲3七銀△6四角▲5八歩で成桂の行き場がない。

 羽生は△3七歩▲4九角△5七桂不成という凝った順をひねり出した。角を移動させて△3八歩成を実現させる意味で、▲3八同飛には△2七飛成がある。しかし丸山の▲4七銀△2八角成▲3八銀がうまい受けだった。「飛車を取れば手が続くと思ったのですが」と羽生は誤算を口にした。△1八飛成まで後手が先に香得したが、攻防の▲4六角(第4図)から流れが変わる。△2五飛に▲3五歩も落ち着いた手で、あわてて▲9一角成は△8二銀▲9二馬△9一香で馬が死んでしまう。

■急転直下

 ▲5七角と桂を取った第5図。すでに両者1分将棋。羽生があわてたそぶりで打った△5六香が敗着となった。5七角と3八銀の両取りだが、構わず▲7五桂が後手玉の急所を突いた。第5図では一回△2四飛と角に当て、▲7五歩とさせてから△5六香とすべきだった。先手からも▲3七桂の反撃があって簡単ではないが、局後、羽生は「▲7五桂を打たせる手はなかった」と反省した。大盤解説場で一貫して後手よしと解説していた島八段も急転直下、先手勝ちと評した。

■一気の寄せ

 本譜は7筋と9筋の位が最大に生きる展開。第6図▲7四歩と食いつかれた羽生玉はもはや受けがない。

 最後の▲7二歩(終了図)に羽生は「負けました」と頭を下げた。▲7一歩成△同玉▲7二銀以下の詰めろで、△7二同銀としても▲同成桂△同金▲7三歩で一手一手。先手玉は△7八角成としても▲同玉で詰まない。

「持ち時間40分の秒読み1分はテレビ棋戦よりたくさんあると思ったけど、やはり短いです。公開対局は全然気にならなかったし、やりやすかったです。見ている方のマナーもよくて静かだったですし。そうでしたよね? 決勝戦も自然体で指したいです」と局後の丸山。強敵を降し、決勝に駒を進めた。

(水沢桂介)
(2008年03月26日 更新)

このページのトップに戻る