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<  第3回朝日杯オープン戦第1局  >
1次予選1回戦 ▲吉田正和四段―△清水上徹アマ

新旧朝日アマ名人対決

対局日:2009年7月4日

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■4年ぶりの雪辱

 第3回を迎えた朝日杯。開幕を飾るプロアマ戦の目玉は、元朝日アマ名人と現朝日アマ名人の対決だろう。

 昨年10月にプロになったばかりの吉田四段は4年前、第28回朝日アマ名人戦全国大会で優勝し、その後行われた三番勝負で天野高志さんを2勝1敗で破って歴代最年少の19歳で朝日アマ名人になった。「アマチュアには負ける気がしない」など強気な発言でも注目された。さらに朝日杯の前身の朝日オープン選手権に出場し、阪口悟四段、浦野真彦七段、有吉道夫九段を連破して予選決勝に進出。決勝では矢倉規広六段に討ち取られたが、その勢いはすごかった。設けられたばかりの奨励会初段試験を受験して見事合格。それからわずか3年で、フリークラスではあるが、四段昇段を果たしたのである。

 一方、清水上アマは子どものころからアマ棋界で活躍し、小学生名人や学生名人、アマ竜王、アマ名人、アマ王将など数々のタイトルを獲得した。いわばアマチュア棋界のエリートである。今年3月の第32回朝日アマ名人戦全国大会で初優勝し、三番勝負で金内辰明さんを2勝1敗で破って朝日アマ名人の座についた。4年前の全国大会では吉田四段に敗れており、プロとアマに分かれて戦うとはいえ、清水上アマにとっては雪辱戦でもあった。

■角交換の力戦形に

 プロアマ戦は朝日新聞東京本社で8局、関西将棋会館で2局、いずれも公開で行われた。東京はテーブル席で、午前中に4局、午後4局。本局は午前10時開始だ。記録係は熊倉紫野女流初段。振り駒で吉田四段が先手に決まった。

 後手ゴキゲン中飛車の出だしから、清水上アマは角交換から向かい飛車に構えた。飛車取りの▲7七角には△1二飛とかわし、△2二銀〜△3二金と駒組みを進める。対して吉田四段は▲8八玉(第1図・33手目)と銀冠に入城。飛車を銀冠に囲った形の後手と、珍妙な対抗形が出現した。

 第2図(42手目)は清水上アマが△2五桂と桂交換を挑んだところだ。▲同桂なら△3七角▲3三桂不成△同金▲4五桂△2八角成▲3三桂成△1九馬▲2二歩△7一飛▲2三成桂の進行が考えられたが、吉田四段は▲3八銀と自重。「自信満々に跳ばれたんで、取りづらかった」と言う。確かに清水上アマは背筋を伸ばし、自信満々の手つきで指し進める。吉田四段はその迫力に押されてか、手が萎縮(いしゅく)気味になっていたようだ。

■吉田四段が仕掛ける

 その後は膠着(こうちゃく)状態を保ちながらの駒組みが続いた。吉田四段はがっちり銀冠を完成させたのに対し、清水上アマは金銀をバランスよく配置し、その指し方はまるで駒落ちの上手(うわて)のようだ。駒組みが頂点に達したころ、先に仕掛けたのは吉田四段だった。▲4五歩から角道を通し、1筋からの端攻めを狙う。83手目▲2四桂(第3図)は、後手の飛車の利きを止めながら金取りの攻防手だが、逸機。以下△4二金に▲1二歩としたが、△4六銀と角道を止められ、▲1一歩成に△2四飛と桂を取られてしまった。第3図の▲2四桂では、先に▲1二歩とたたき、△同香に▲2四桂(△4二金には▲1二桂成)なら難しかった。

■飛車の働きに違い

 88手目の△2四飛に対し、吉田四段は▲5七桂と打って根本の4五歩を取り除こうとした。清水上アマが△3七角▲4九飛△4四銀右▲4五桂△4八歩(第4図・94手目)と先手の飛車を押さえ込みに出る。ここで吉田四段は▲8九飛と逃げたのが、弱気過ぎた。ここは▲2九飛と回り、△2七歩成には▲4七歩△2八と▲8九飛△4五銀▲4六歩△3六銀▲4五歩△2七飛成▲1三角成と進めれば、まだ難解な勝負が続いていた。

 本譜は第4図から▲8九飛に対する△2五飛が、次の△4五飛を狙った好手で、飛車の働きの違いがはっきりし、後手が優勢になった。一連の手順について吉田四段は局後、「1手ごとに少しずつ損をしていった」と反省した。

■堅実な勝ち方

 優勢になってからの清水上アマの堅実な指し方は見事だった。先手の飛車を封じ込め、その飛車を相手にせず、先手玉に迫る。第5図(115手目)の▲5七銀に対し、△7八馬と切って飛車を成り込んだのが実戦的だ。以下、先手も馬を引きつけ、竜を追いながら防戦したが、第6図(126手目)の△4九歩成が厳しい。▲同飛は△8七香▲同玉△7五桂▲同歩△7六金▲同玉△7八竜で寄り筋なので、吉田四段は▲3八飛としたが、△同竜▲同馬に△5八飛の「おかわり」が利いては万事休した。

■大差で現名人の勝利

 吉田四段も最後に▲8三香と打って迫ろうとしたが、これは詰めろにもなっておらず、しかも先手玉は即詰み。最終手の△6九角を見て、テーブルに両手をついて頭を下げ、「負けました」と投了を告げた。新旧朝日アマ名人対決は、大差で現名人の勝利だった。局後、吉田四段は「こんなに本気で受けつぶしにあうとは思わなかった。甘かった。指した手がみんな次善手だった」。清水上アマは「常にぎりぎりだった。△2五飛(96手目)がすごいぴったりの手だったので、これで行けるかなと思いました」と感想を語った。

 対局を終えた両対局者は、少し離れた大盤解説会場へ。解説の佐藤紳哉六段から「何か思い入れはありましたか?」と尋ねられ、吉田四段は「特にないです」と即答したのが印象的だった。

(村上耕司)

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