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<  第32期朝日アマ名人戦三番勝負第3局  >
▲清水上徹(挑戦者)―△金内辰明(第31期名人)

清水上・新名人が誕生

対局日:2009年6月7日

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■いよいよ大一番

 第1局は金内辰明・朝日アマ名人(32)が快勝。第2局は清水上徹挑戦者(29)が借りを返し、迎えた第3局。勝った方が第32期朝日アマ名人となる大一番は、中盤から終盤にかけて形勢が揺れ動く熱戦となった。

 7日午前の第2局の後、関係者一同で昼食。和やかな雰囲気が対局となるとがらりと変わるのは、第1局、第2局と同じだ。午後1時20分、振り駒の結果、清水上さんが先手を握り、対局が始まった。

 清水上さんの初手は▲7六歩。プロアマ通じて一般的に最も多い初手だが、この三番勝負では初めてだ。金内さんは△8四歩と応じて、第1局で功を奏した「引き角」の作戦をとる。果たして柳の下に2匹目のドジョウはいるだろうか。

 これに対し、清水上さんは第1局とは違う対策を見せた。それが、玉の囲いを後回しにして▲5五歩(第1図、11手目)と早めに5筋の歩を交換する手だ。1歩を手にしつつ、飛車の動きを楽にする自然な一着だ。

 先手と後手が逆だが、第1局でこの▲5五歩を推奨していたのが立会人の加藤一二三・九段。第1局で清水上さんは守勢に立ったが、「その原因は▲5五歩と交換しなかったからではないか」と分析していた。清水上さんは加藤説を採用したとも言える。清水上さんは後日、「▲5五歩△同歩▲同飛とする手もあると元々考えていたが、加藤先生の指摘もあったのでやってみた」と話してくれた。

■決断の一手

 ▲5五歩以降は、互いに駒組みが続いた。清水上さんは第1局では穴熊を目指したが、今度は通常の美濃囲い。バランスを重視した構えを築き、▲6五歩(第2図、33手目)と角道を通した。

 (第2図)で清水上さんは▲6六角から▲7七桂として好形を狙っている。金内さんはそれを防ごうと、△6四歩から歩を交換。その後、再度の△6四歩から△6五歩で先手の角を追い払って△6四角とした。今度は後手の角の位置が良いので、清水上さんは▲4六角と角交換を迫る。本格的な戦いを前に、ポイントを稼ごうとする手順が互いに続いている。

 角交換の後、金内さんに決断の一手が出た。△9四角(第3図、54手目)だ。もちろん△7六歩と桂馬を攻める狙い。清水上さんも自分の飛車をさばこうとしつつ、後手の飛車を狙って▲3六角と据えて対抗する。この後、清水上さんが後手の大駒の動きを封じる方針をとり、互いに動きが取りづらい将棋になった。

■一気に終盤へ

 互いに敵陣突破の策を練る中盤戦。加藤九段も「ここ数手が勝負どころ」と言い、控室の検討にも力がこもってきた。

 ▲5八角は次に▲7六角を狙っている。だが、この手が後手に手段を与えたかもしれない。金内さんは思い切って△7四角(第4図、78手目)。一度駒損になるが、▲同歩の一手に△6五飛▲同銀△6六桂▲7六角△7八桂成と進み、凝り固まっていた後手の飛車と角が一気にほぐれた。ここを境に一気に終盤に突入した。

 互いに敵陣に飛車を打ち下ろし、攻めを狙う。こうなってみると、先手は7六角と6五銀の働きの弱さが気になる。

 「ここが急所」と言わんばかりに、金内さんは△1五歩と突いた。清水上さんは前傾姿勢になり、上体を少し揺らして考え、▲6二とと攻め入る。清水上さんの残り時間は10分を切った。対する金内さんはまだ15分ほどある。

■痛恨のミス

 互いの玉の守りが薄くなった局面で金内さんに痛恨のミスが出る。△2五桂(第5図、106手目)は1七の地点の利きを増やした手だが、▲4九銀と引かれて玉の退路を開かれてみると効果が薄かった。清水上さんは「いやー」とつぶやきながら「59」まで秒を読まれてこの手を指した。困ったしぐさにも見えたが、ここで形勢は入れ替わった。

 感想戦では、△2五桂の代わりに△4二金と受けに回る手が有力とされた。▲6二竜と金を取りたいが、△8四角が詰めろ竜取りになるため指せない。清水上さんが「(△4二金なら)負けてますね」と言うと、金内さんは「そうか…」と言って無念さをにじませた。

 ▲4九銀に対し、金内さんも△1七金と打ち込んだところで秒読みになった。ミスが出た金内さんだが、ここから30手近く王手か詰めろの手の連続で迫る。迫力ある追い込みに清水上さんも生きた心地がしなかっただろう。だが、▲3六歩(第6図、139手目)まで進んでみると、やはり一歩届かない。金内さんはさらに△3七角成として先手玉を追いつめたが、さすがに駒を渡し過ぎた。△4八香に対し、清水上さんは40秒近く考えて駒音高く▲3一角と打ち込んだ。そして▲5三銀(終了図、159手目)に対し金内さんは投了した。△同金は▲同歩成で簡単な詰み。玉を逃げる手には▲2一竜に対する合駒が悪くて詰む。

 初戦を完敗した後、連勝して見事な逆転劇を成し遂げた清水上さん。アマ名人、アマ竜王などの他の主要タイトルは得たものの、朝日アマでは全国大会で準優勝2回にとどまっていただけに、「素直にうれしい」と喜びを表現した。金内さんは「3局目の最後、手が見えなかったが、それも実力だと思う。3局通して力は出し切った」とすがすがしい表情で話した。

 共に北海道出身で旧知の間柄の2人。7月4日の朝日杯将棋オープン戦プロアマ戦では、プロ相手にそろって白星を挙げ、実力を見せつけた。今回の三番勝負では清水上さんに軍配が上がったが、今後も2人による熱のこもった好勝負が期待できそうだ。(村瀬信也)

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