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<  第3回朝日杯オープン戦第2局  >
1次予選1回戦 ▲大石直嗣四段―△金内辰明アマ

金内アマ、実力発揮

対局日:2009年7月4日

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■新鋭登場

 4月1日付でプロになったばかりの大石直嗣四段(19)と6月に朝日アマ名人を失冠した金内辰明アマ(33)の顔合わせ。共に居飛車党だが、もちろん初対戦の2人。どんな戦型になるかは互いに予想しづらかっただろう。

 大石四段は最近活躍が著しい関西勢の1人だ。08年度後期の三段リーグで13勝5敗の成績を残し、プロ入りを決めた。デビュー4戦目でここまで2勝1敗。この対局の約2週間前に指されたC級2組順位戦では、白星でスタートを切っている。

 対する金内さんは、小樽商科大学在学時に学生名人と学生王将を獲得。社会人となってからも、昨年、朝日アマ名人に就いたほか、アマ竜王戦準優勝などの実績がある。北海道稚内市役所に勤めており、「日本最北のアマ強豪」とも称される。

■一手損角換わりに

 振り駒の結果、後手になった金内さんの誘導で一手損角換わりに進む。プロ間では03年ごろから指されているが、今やアマでもすっかり定着した。最近では木村一基八段が多用して勝ち星を稼いでいる。

 大石四段が▲3六歩と突いて早繰り銀の意思を示したのに対し、金内さんは2、3分考えて△5二金(第1図)とした。ここでは△6三銀から△4二飛と反撃含みに構える積極的な形も考えられるが、手厚い棋風の金内さんは玉を固めて相手の攻めをがっちりと受け止める方針だ。

 ▲3五歩に対し△4五歩は突き違いの手筋。△3五歩(第2図)までで双方が歩を1枚ずつ持ち合う形になり、一息ついた。

■プロの素質

 金内さんは、昨年の朝日アマ名人戦三番勝負で加藤幸男さん(27)を2勝1敗で破って名人になった。今年6月の三番勝負では清水上徹さん(29)に2勝1敗で惜しくも敗れたが、その戦いぶりは見事だった。

 大石四段は金内さんとは初対戦だが、加藤さんと清水上さんとは、01年3月にあったアマ大会「キリンビバレッジカップ学生将棋選手権」で対戦したことがある。小学5年生だった大石四段は清水上さんを破ってベスト8入りしたが、準々決勝で加藤さんに敗れた。清水上さんと加藤さんは当時大学生で、既にトップアマの実力があった。大石四段はその年の9月に奨励会に入ったが、小学生の時点でそれだけの実力があったのだから、19歳と若くしてプロになれる素質があったと言うべきだろう。

 持ち時間40分と短いこともあり、2人の指し手は速い。互いに玉を囲いあい、本格的な戦いに備える。

 積極的に動いたのは大石四段。後手の8筋の歩交換を防がずに、▲6四歩(第3図)とたらす。この後、敵陣に▲7二角と打ち込んで▲6三歩成とと金を作った。

 金内さんも負けてはいない。△8六歩で▲8八歩と受けさせ、△3九角から△4八歩とたらす。互いに似た手の応酬だが、先手の玉が窮屈になったため、金内さんがポイントを稼いだようだ。

■勝負どころで誤る

 金内さんはコップに注いだ水に時折口をつけ、考えに沈んでいる。対する大石四段はお茶を用意しているが、ほとんど飲まない。中盤の山場にさしかかり、互いに頭をフル回転させているが、ここで大石四段に痛恨のミスが出る。

 (第4図)は大石四段が▲5七歩と打ち、金内さんが△同馬と応じた局面。ここで1分将棋になった大石四段は▲5八銀と打ち、△3五馬に▲5七歩と相手の馬の利きを遮ったが、△5三馬▲6一飛成△4一歩▲4九銀に△6四飛(第5図)と飛車交換を挑まれ、苦戦に陥った。金内さんも局後、「△6四飛で良くなったと思った」と振り返った。

 (第4図)では▲2三歩とたらし、△5九となら▲6七金△3五馬▲6三角成と進めた方が良かった。実戦は目障りな後手のと金を取れたが、攻めの拠点だった5三の成り銀を取られたのが痛かった。

■金内さん快勝

 リードを許した大石四段だが、表情は変わらない。対局中、横顔を見る限りでは苦しそうなそぶりはなかったが、このあたりでは既に苦戦を自認していたようだ。

 △6三歩から金内さんも1分将棋になったが指し手は冷静だ。△5九飛から△4九飛成(第6図)と銀を取って後手の銀得になった。苦しい大石四段は何とか食い下がろうとするが、届かない。

 △4二歩(終了図)を見て、大石四段は投了。終了図では後手の角得で、先手は攻防共に見込みがない。「負けました」と告げながら見せた苦笑いは、「不出来な将棋を指してしまって情けない」という気持ちの現れのようにも見えた。

 公開対局はもちろん初めてとなる大石四段は少し硬くなっていたという。「序中盤は自分らしい将棋になったと思うが、中終盤でミスが出てしまった。来年はぜひ勝ちたい」と語った。

 対する金内さんは持ち味の手厚さを発揮して快勝。「公式戦でのプロとの対戦成績はこれまで1勝6敗。『もう勝てないかも』と思っていたので、勝ててうれしい」と笑顔を見せた。2回戦の相手は20年以上前に小学生名人戦で対戦し、敗れたという北浜健介七段(33)。その時の借りを返せるだろうか。(村瀬信也)

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