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<  第3回朝日杯オープン戦第5局  >
1次予選1回戦 ▲稲葉 聡アマ―△西川和宏四段

西川プロ、「辛抱」で熱戦制す

対局日:2009年7月4日

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■大阪対局

 朝日杯将棋オープン戦のプロアマ一斉10対局は3回目だが、関西将棋会館での対局は初めて。第1回と第2回は朝日新聞大阪本社で指されたが、新ビル建設計画の影響で従来のスペースを使えなくなったため、関西棋士のホームグラウンドでの実施となった。準備作業の大半を担ってくれた日本将棋連盟関西本部に感謝したい。担当理事の西川慶二七段は当日も会場の隅に控え、対局に支障が無いよう、ソッと目配りをしてくれていた。

■「ジュニア」対「兄」

 その西川七段の長男が、本局の西川四段。区別のため、「西川ジュニア」と愛称で呼ぶ関係者もいる。08年10月のプロ入り時には「初の現役親子棋士誕生」と話題になった。父は居飛車党なのに「ジュニア」は振り飛車党なのが、面白いところだ。後日、本稿のために自戦解説も引き受けてくれた。

 一方の稲葉アマは、今期棋聖戦で挑戦者決定戦まで駆け上がった関西期待の新鋭・稲葉陽(あきら)四段の兄。「稲葉兄」と呼ばれることもある。

 ふたりはプロ棋士の研究会で対戦経験があった。1勝1敗と記憶していた西川四段は局後、「互角の勝負。自分の一番の得意型でいこう」と思っていた、と明かした。

■西川、得意の中飛車

 午前10時、対局開始。駒を並べる時、西川四段の手が震えていた。本人いわく「あがり症」。しかし、関西将棋界の情報通によると「西川ジュニアは度胸が良い」。そう言われれば、物腰は柔らかく、いつも笑顔を絶やさないのに、芯の強さを感じさせる場面が何度か、あった。

 さて、盤上。稲葉アマの居飛車に対し、西川四段は角道を止めての中飛車。得意なはずの序盤だが、西川の△6四銀(第1図、18手目)がミス。「とてもプロの序盤とは思えない」と局後、西川は嘆いた。稲葉アマの▲6六歩が「歩越し銀には歩で対抗」という格言どおりの好手。後手の狙いは△5五歩だが、▲6七金△5六歩▲同銀△5五歩▲6五銀で、以下(1)△5三銀▲7五歩は玉頭の位が大きいし、(2)△6五同銀▲同歩も振り飛車の陣形(例えば4三の地点)に隙(すき)が多い。後手5五歩と突けないようでは△6四銀は悪手という。「相当、不利になった」と西川四段。

■稲葉アマの後悔

 29手目の▲3五歩(第2図)で稲葉アマの消費時間は5分、続く30手目の△同歩で西川四段は同23分と大差だった。「途中で長考してもらったので、『普通に指せば、こちらが良くなるはず』と思った」とは局後の稲葉アマの弁。活字にするとややキツいが、さわやかな口調でイヤみはまったく無い。

 しかし、稲葉アマも悔やんだ。「細かいミスを積み重ねてしまった」と。第2図の▲3五歩では「▲3八飛△3二飛▲4六銀とじっくり仕掛ける方が、△3六歩と突き出される筋も無く、良かった」。▲2二歩(第3図、57手目)でも「▲2二角成が良かった」。次に▲2一馬と桂を取る手が飛車取りで、調子が良い。高い次元にいるからこそ、自分のわずかなミスも許せないのだろう。稲葉アマは、まだまだ強くなる、と感じた。

■形勢・分岐点

 △6三銀(第4図、66手目)が「ずっと苦しくて、相手のミスを待つ中、良い頑張りだったと思う」と西川四段。70手目の△3二金も「辛抱して、勝機を待った手」。

 ▲3三桂成(第5図、81手目)が形勢の分かれ目になったようだ。▲3三桂成に代えて▲5三桂成なら「先手からは飛車を取って、▲1一飛と打つ手が厳しかった」と西川四段。「▲3三桂成の後は、後手が良い」とも。ただし、稲葉アマは「▲5三桂成は自分の棋風ではない……」と口を濁していた。

 本譜は、激しい攻め合いに突入した。

■双方にミス

 △6六歩(第6図、86手目)では「単に△5六歩で後手勝ちだった」と西川四段。以下▲6一馬△5七歩成▲6二金△6七と▲6三金の局面で、先手玉が詰むからだ。すなわち、△6九竜▲同銀△6八銀と進め、(1)▲同銀には△7八金(2)▲8八玉でも△7八金以下(3)▲同飛なら△同と、で以下▲同銀△7八金▲同玉△6六桂▲8八玉△7八飛▲9七玉△8五桂▲8六玉△7六飛成が変化の一例だ。

 本譜△6六歩に対して▲7七金寄なら難しかったが、稲葉アマは▲6八金引。「これでハッキリ後手勝ちになった」と西川四段。

 △7八飛(終了図)で、先手玉は詰み。以下▲同金△同成銀▲同玉△5六馬▲8八玉△7七竜▲同玉△7六銀▲同玉△7五銀▲7七玉△7八金まで。手順中、△7七竜が派手な手で、西川四段は「盤上で指したかった」と笑った。

 夕方の打ち上げには、午前中に東京でアマを破った稲葉陽四段も合流した。稲葉アマは「またプロ公式戦に出られるよう、アマ棋戦で頑張りたい。でも、今回、弟と指したかったなあ」と笑顔で話していた。「10局のうち1局だけでもいい、読者投票で対戦カードを決める趣向があれば」と記者は思った。

(佐藤圭司)

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