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<  第3回朝日杯オープン戦第6局  >
1次予選1回戦 ▲稲葉 陽四段―△浅田拓史アマ

稲葉四段がアマを圧倒

対局日:2009年7月4日

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■大型新人

 朝日杯のプロアマ一斉対局は第3回を迎え、完全に定着した感がある。対局は一般公開され、東京では午前、午後4局ずつ行われた。大盤解説は佐藤紳哉六段と佐藤天彦五段が担当。午前には第2回朝日杯覇者の阿久津主税七段が飛び入りで加わった。ここでは午前に行われた稲葉陽四段―浅田拓史アマ戦を紹介する。

 稲葉四段は昨年4月に四段に昇段した新鋭。プロ2年目だが、今年の第80期棋聖戦で挑戦者決定戦に進出した活躍は、棋界に大きなインパクトを与えた。ほかにも第22期竜王戦6組で優勝している。本局までの通算成績は37勝15敗。通算勝率が7割を超える大型新人だ。前回の朝日杯では中野博文アマ、内藤國雄九段、増田裕司五段、小林健二九段を破って1次予選を通過したが、2次予選で畠山鎮七段に敗れた。

 浅田アマは京都大学2年生の時にアマチュア名人を獲得。その後しばらくは目立った活躍がなかったが、今年3月の朝日アマ名人戦でアマタイトル経験者4人を破り、3位に入賞した。アマ名人の時に出場した棋王戦では1勝を挙げた。中学から高校を米国で過ごした帰国子女で、全米将棋選手権大会優勝の実績がある。

■最新形へ

 浅田アマの一手損角換わりに対し、稲葉四段は▲3七銀〜▲4六銀(第1図・19手目)とする早繰り銀を採用した。プロ間では最新形で、稲葉四段も多用している。早繰り銀を指すのは、先手が十分指せるという自信と、最新形への旺盛な探究心の表れだろう。棋聖戦の挑戦者決定戦で木村一基八段と戦ったときにも先手を持って指したが、敗れている。

 プロの得意とする形に飛び込んだ浅田アマは「棋聖戦のような展開なら後手がまずまずだと思っていた」と話した。

■稲葉四段が変化

 本局が行われた7月4日は関東奨励会が行われていたこともあり、東京の一斉対局では、女流棋士や女性の研修会員が記録係を務めた。本局の記録係は飯野愛・研修会員。飯野健二七段のまな娘で、女流棋士を目指して奮闘中だ。符号や秒読みの読み違えもせず、そつなく記録係の仕事をこなした。

 稲葉四段が▲2四同銀(第2図・31手目)と変化して、前例から離れた。棋聖戦では▲7七角と打ち、△8二飛▲3四歩の進行だった。変化された浅田アマは▲2八飛の局面で熟考。結局△8二飛と引いて▲7七角を避けた。

 ▲8三歩△同飛▲5六角(第3図・39手目)が稲葉四段期待の攻め。角の力で2筋を破ろうとしている。▲5六角に浅田アマが再び熟考した。プロの変化球に対応するためにやむを得ないのだが、消費時間は稲葉7分、浅田29分と大きな差がついた。△6五歩と突き出した手では、△8二飛▲8三歩△6二飛▲2三角成△同金▲同飛成に△1二角と打ち、以下△6五歩から大駒を活用する順も有力だった。

■痛恨の見損じ

 ▲2三角成に対し、浅田アマは△2七歩(第4図・42手目)の反撃に期待していた。しかし▲3八飛△2三金に▲3二飛成が妙手順。金桂両取りの上に▲7二銀が厳しい。「▲3二飛成には△5五角と攻防に角を打つつもりだったが、▲8四歩△同飛▲8五歩△同飛▲7七桂とされるのをうっかりしていた」と浅田アマ。痛恨の見損じで形勢が先手に傾いた。

 稲葉四段は「▲3二飛成となればいいと思っていた」と話す。始まってから数分しか使っておらず、このあたりまで研究範囲だったようだ。

 感想戦では第4図の△2七歩では△5五角が勝るとされた。以下▲2四馬△3三桂▲4六馬△8八角成▲同金△8七歩▲9八金△2七歩が一例で、後手も十分指せた。後手の飛車が素通しになっているため先手陣も薄い。事前の研究では重視していなかったためか、稲葉四段は意外そうな表情で△5五角の変化を調べていた。

 本譜に戻る。▲3二飛成に苦慮した浅田アマは1分将棋になるまで考えて△4一銀と受けた。しかし、後手陣はキズが多く、先手の攻めをすべて防ぐことはできない。△2二金から△3二金は千日手を狙ったクリンチだが、▲4二銀(第5図・55手目)のパンチが厳しく、稲葉四段が差を広げた。

■稲葉四段が快勝

 ▲7七桂(65手目)が大駒の利きを止める冷静な一着。これで浅田アマの万策は尽きた。▲7二銀(第6図・75手目)以下は詰み。△同金なら▲4一角△7三玉▲7四角成という順だ。本譜の△6四玉にも▲8二角と詰将棋のような捨て駒でピッタリ決まった。終了図以下は△5五同銀▲6三金△5四玉▲4三竜まで。

 短手数での終局となったが、感想戦は熱心に1時間かけて行われた。稲葉四段は研究手の成否を確認するため、また、力を出し切れなかった浅田アマは敗因をはっきりさせるため、39手目▲5六角周辺が詳しく調べられた。

 40手目で△8二飛、42手目で△5五角の有力手を検討した後、浅田アマは「本譜は最悪な展開だった。(44手目△2三金で)角得だが、大局観が悪かった」と反省した。

(君島俊介)

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