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<  第3回朝日杯オープン戦第15局  >
2次予選1回戦 ▲島  朗九段―△丸山忠久九段

丸山が九段対決制す

対局日:2009年11月4日

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■対戦成績は大差

 タイトル経験者の丸山忠久九段と島朗九段が2次予選1回戦で対戦した。

 二人はタイトル経験者であり、A級在位も長い実力者。しかし、意外なことに対戦成績はここまで丸山の15勝0敗と大差になっている。棋界の七不思議に入ってもおかしくない出来事だろう。今期の島はここまで11勝5敗と好調。丸山に雪辱できるか興味深い一戦だった。

■譲り合いと駆け引き

 午前9時45分ごろ、丸山が対局室に入り、下座に着いた。その後、島も対局室へ。丸山に上座をすすめたが、丸山が笑顔で断ったため、島が上座に着いた。島が駒袋を開けて玉将を持とうとしたが、丸山は笑顔で島に王将をすすめた。記者は丸山の自然な笑顔で、先輩に敬意を払う姿に好感を持った。

 近年は序盤から駆け引きがあり、神経を使う。二人とも基本的に居飛車党だが、丸山が△3二飛と三間飛車に構えた(第1図)。3手目の▲6六歩に反応したものだが、丸山の振り飛車は珍しい。その後は△3五歩から△3四飛(10手目)と石田流に構え、穴熊に組んだ。島は左美濃に囲った。3手目に▲6六歩と突いたせいでもあるが、もともと島の振り飛車対策は左美濃や居飛車穴熊が多い。

■スキのない陣形

 ここ数年、角交換振り飛車の流行によって、スキのない低く堅い陣形に効率よく囲う将棋が増えている。本局は角交換していないが、同じような発想の手が出た。丸山が第2図で指した△5一銀がそれ。珍しい手だが、低い陣形のままで玉をガチガチに固めるつもりだ。

 島は第2図と似た将棋を数局経験しているが、それらは△4四歩〜△4三銀や△5四歩〜△5三銀と出て攻めを狙う展開だった。銀の動かし方だけでも局面の進行がガラリと変わる。金銀をくっつけた第3図を見ると、5筋の歩を動かさなかったことによって、▲8六角〜▲4二角成を防いでいることが分かる。

 第3図から島が▲4六銀から揺さぶりをかけ、丸山が△6四歩と突き出したことで局面が動いた。

■丸山ペース

 第4図は島が▲5六金(59手目)と繰り出して反発したところ。後手は忙しい局面だが、石田流にこだわらない△7五歩〜△3二飛が柔軟な発想だった。次に△7二飛と転戦できる。島も「△7五歩〜△3二飛はいい手でしたね」と認めている。

 △7五歩の局面で、残り時間は島7分、丸山8分。二人の対戦では本局のように、持ち時間に差がつかないケースが多い。持ち時間も勝負のうちで、使うタイミングが難しいが、ペース配分が似通っている。本局では、島が▲6五桂(65手目)から、丸山は△5五歩(70手目)から秒読みに入った。

 島は△3二飛の対応に苦慮していた。残り時間のほとんどをつぎ込んで▲1五歩と攻めを催促した。「▲1五歩はいかにもさえないですけど、いい手が分からなかったですね」と島。

 △5四歩も好手で、△3一角の含みや5筋を絡めた攻めが狙えるようになったのが大きい。巧みな構想で丸山がペースを握った。

■島が追い上げる

 島は「角換わり腰掛け銀研究」や「島ノート」など、プロ棋士でも参考にする棋書を書いていることで知られる。その中で、島―丸山戦が数局題材として使われている。

 丸山も棋界きっての研究家で、得意の角換わり腰掛け銀や横歩取りなどの戦型で、定跡となる新手や新構想をいくつも打ち立てている。

 第5図は7三の地点で桂交換が行われた局面。▲5五銀が遊び駒を使いながら2六飛の横利きを通す粘り強い指し手だった。銀桂交換の駒損になったが▲7七歩とキズを消して頑張りの利く形だ。

 島は見込みなしと判断すると、短手数で投了してしまうことがある。しかし、底力を出したときの勝負強さが島の本領で、本譜の手順にもそれが出ている。

 島の頑張りに丸山が間違える。▲6五桂(91手目)にはすぐ△7五角の方が良かった。本譜は▲7六桂から▲6四歩と攻めが入って差が詰まった。

■島の粘り及ばず

 丸山は島の粘りに手を焼いていたが、逆転には至っていなかったようだ。第6図で△7四銀が冷静。銀を逃がしながら、5六角の利きを止め、攻め駒として使えるようになった。△7四銀▲8四歩に△7五桂と詰めろをかけて、先手玉の寄せが見えてきた。

 △8九金が「玉は下段に落とせ」の格言通りの最後の決め手となった。△8七桂を見て島の投了となった。

 終了図以下は(1)▲8七同金は△6八金▲8九玉△8七成銀で受けなし。(2)▲8九玉も△9九桂成▲同玉△8七香と攻めて受けが利かない。

 午後にも対局があるため、感想戦は5分ほど行われた。△6四歩周辺がスラスラと調べられ、▲7七桂では▲6五歩△同銀▲7七桂△6六歩▲6八金引△5六銀▲4五銀△同銀▲6六飛という手順が有力とされた。

 本局を制した丸山は、2次予選決勝で藤井猛九段に快勝して本戦進出を果たした。

(君島俊介)

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