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<  第3回朝日杯オープン戦第16局  >
2次予選決勝 ▲谷川浩司九段―△阿部 隆八段

谷川、阿部下し本戦へ

対局日:2009年11月4日

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■対局前の二人

 11月4日、もうすぐ2次予選Gブロックの決勝が行われようとする関西将棋会館の対局室・芙蓉(ふよう)の間。気合をみなぎらせて対局開始を待っているのは阿部隆八段だ。今年度は珍しく不調で、B級1組順位戦では1勝7敗と降級の危機に立たされている。本局に勝って本戦入りすることで、復調のきっかけにしたいところだ。

 対する谷川浩司九段は普段通りの自然体。こちらは本局を迎えるまで9連勝中と絶好調。A級順位戦では挑戦者争いで首位だし、竜王戦では1組昇級を決めている。

 記録係・藤原結樹初段の振り駒で谷川の先手が決まり、対局は始まった。

■穏やかな序盤

 谷川の居飛車に、阿部が5筋位取り中飛車にした出だし。第1図は阿部が美濃囲いに組み、谷川は▲9八香と穴熊を目指したところだ。先手陣は穴熊が未完成なうえに、金が上ずっていて不安定な形をしている。だから阿部は△2二飛〜△3二金〜△2四歩と飛車交換を狙う順を考えた。「よっぽど飛車を回ろうかと思った。でも△2二飛に▲3六歩△3二金▲3七桂で、こっちの次の手が難しい」と話す。△2二飛からの変化を見送り、第1図から△5四銀▲9九玉△8四歩▲8八銀△7四歩(第2図)と穏やかな展開になった。

■駆け引き

 第2図で若手棋士なら▲5九銀〜▲6八銀と、自玉を固める順を選ぶ方が多いだろう。ただ、その形に組むと先手からの仕掛けが難しくなってしまう。谷川はそれを嫌い、▲4六歩〜▲4七銀と銀を前に繰り出した。阿部は前者を予想していたので、本譜は意外だったようだ。

 その後、阿部は△8三銀〜△7二金と銀冠に組み替え、9筋の歩を伸ばしていく。谷川はその間に▲3六歩〜▲5九角〜▲2六角と角を転回させて、攻撃態勢を整えていった。

 第3図は△7三桂と跳ねた局面。先手がゆっくりしていると、後手は△5一飛〜△4二角〜△9二香〜△9一飛と駒の利きを端に集中させるつもりだ。こうなってしまうと先手は△8五桂からの端攻めだけで負かされてしまう。「この順を見せられ、こちらもプレッシャーがあった」と谷川。▲7九金の一手を省略して、第3図から▲3七桂△4二角▲5六歩と動いていった。

■谷川ペース

 ▲5六歩からは中盤戦。実戦は△5六同歩▲同銀△5五銀▲同銀△同飛▲5六歩△5一飛▲4五桂△5二金▲2四歩(第4図)と進んだ。△5五銀とぶつけて銀交換から△5一飛までは一本道。そこで▲4五桂が味のいい手で、次に▲5三銀の攻めを狙っている。阿部は△5二金のところで時間を使ったが、表情はあまり良くなかった。どうやら谷川がペースを握ったようだ。

 その谷川だが、▲2四歩では▲5五歩の方が良かった。以下△3三桂ぐらいだが、▲同桂成△同角▲5四歩で先手良し。局後、阿部に指摘され、「直接手の方に手がいってしまった」と谷川は苦笑い。だが、第4図の▲2四歩も悪手ではなく、のちの飛車の活用をみた突き捨てだ。△同歩なら▲5三銀△同金▲同桂成△同角▲同角成△同飛▲2四飛で、桂損ながら飛車成りが約束された先手が優勢だ。

 そこで阿部は角で歩を取った。以下▲5三銀△6四銀▲5二銀成△同飛(第5図)と進む。薄くなった5三の地点での攻防。第5図では谷川に決め手があった。それは▲5五金なのだが、谷川は「気がついていなかった」。

■阿部、盛り返す

 第5図から谷川は▲1七角と指した。角道を生かしつつ▲2四飛と角を取る手を狙い、好手にみえるがそうではなかった。次の△1五歩が大きな手で、先手の攻め駒を攻める楽しみができた。「この歩が突けて難しくなったと思った」と阿部は言う。

 そこで先ほどの▲5五金だが、ここでは決め手にならない。以下△同銀▲5三桂成△2二飛▲5五歩△1六歩▲2六角(第6図)と進んだ。

■谷川が本戦へ

 阿部にとって第6図が最後のチャンスだった。その順は△1七歩成▲同香△同香成▲同角△1六歩▲2六角△2五香の田楽刺し。以下▲6二成桂△2六香▲7二成桂△同飛▲2六飛△6二金が予想される変化だが、これなら優劣不明だった。

 感想戦で谷川に指摘された阿部は「なんで見えなかったんかな」と嘆いた。その表情は自分自身にあきれたような感じだった。実戦は△8五桂▲6一銀△7三銀▲7二銀成△同銀▲6二金(終了図)で阿部が投了。谷川が本戦進出を決めた。

 ▲6一銀が厳しい手で、△7三金と逃げるのは、▲8六歩と桂を取りにこられて、後手が困る。桂が入れば▲6五桂が痛い。「こんなに▲6一銀が厳しいとは思わなかった」と阿部。終了図からは△6二同銀▲同成桂は▲7一銀と▲5三角成の両方が受からない。△8一金や△8三銀打は▲6三成桂がある。

(藤本裕行)

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