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<  第3回朝日杯オープン戦第20局  >
2次予選決勝 ▲窪田義行六段―△畠山 鎮七段

畠山が2年連続本戦進出

対局日:2009年11月9日

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■「アラフォー世代」の対戦

 2次予選Fブロック決勝は関西から来京した畠山鎮七段と個性的な振り飛車党の窪田義行六段の対戦となった。

 畠山は2005年度の第64期B級2組を10戦全勝でB級1組に昇級。36歳での順位戦全勝は最年長記録だ。昨年は本棋戦の2次予選で谷川浩司九段を破って本戦入りした。窪田は昨年度の勝率が6割を超え、第67期C級1組順位戦では、8勝2敗の成績でB級2組へ昇級を果たした。現在、畠山は40歳、窪田は37歳と、ともに「アラフォー世代」。円熟期に入りつつあるが、少しずつ実績や実力を積み重ねているところは、さらなる伸びしろを感じさせる。

 本局は、先手番になった窪田が趣向を凝らして角道を止めない向かい飛車に構えた。棋士になってから四間飛車一本だった窪田だが、近年は本局のように出だしで角を一つ上がる作戦を用いることが多い。先後は違うが、1次予選の対矢内理絵子女王戦でも用いて勝っている。

 5手目▲8八飛(第1図)に△7七角成▲同桂△4五角は、▲6五桂△6二銀▲5五角で先手よしだ。

■千日手含み

 窪田は畠山の指し手をとがめるために、▲8六歩(21手目)と動いた。これは畠山も読み筋。09年3月に指された第50期王位戦の▲橋本崇載七段―△久保利明棋王戦(振り飛車側が後手)と類似していることを頭に入れながら指し手を進めている。

 △8七歩(第2図)に普通は▲5八飛と逃げるところだが、△5四角▲5五歩△6三角▲7六金に△4五角▲7七金△6三角と千日手を狙われてしまう。前述の▲橋本―△久保戦は、向かい飛車側が後手だった。先後の違いによって、千日手の変化に対する捕らえ方が違ってくる。

 窪田は▲6八飛と逃げ、△5四角▲5五歩△6三角と進行。ここで▲7六金は、△8五銀や△4二金▲7七桂△5四歩で後手十分だ。本譜は▲8七金と垂れ歩を払ったが、銀がさばけて後手有利の分かれとなった。

■持ち味の出た攻防

 窪田は独特の粘着力を持った棋士で、金銀が玉から離れるのをいとわない。相手の攻めを力強く押さえ込もうとすることが多い。対する畠山は、鋭い攻めを得意にしている。故・大山康晴十五世名人の「最初のチャンスは見送る」とは反対に、スキあらば常に踏み込むタイプだ。

 本局も積極的な動きで優位に立った。窪田も△6三角に対して▲7五銀(41手目)から▲7七金と駒を使いながら何とか後手の攻めをしのごうとする。互いの持ち味が出た進行だ。

 苦しい展開の窪田は第3図から▲5四歩(47手目)とアヤをつける。△同歩に▲6六金△8六飛▲8七歩。ここで畠山からいくつか有力な手段(例えば△8七同飛成など)はあったが、本譜の△6六飛からの進行も飛と金桂の2枚換えで△4五馬と急所に引き付けて後手優勢だ。

■楽観で混戦に

 ▲8五飛(第4図)に△3三桂(60手目)は気持ちのいい跳躍だった。▲8一飛成なら△2七馬▲同玉△3五桂の筋で先手玉が詰む。▲8一角成と駒がソッポに行くのでは見るからに先手がつらい。

 しかし、▲3六歩を△同馬と取ったのは疑問手で、ここは△1六歩▲2六歩△1七歩成と攻めるべきだった。本譜は▲3七銀から壁になっていた金銀が働き出した。畠山は△4七馬に▲3八金△5七馬の進展を考えていたため、▲4八金〜▲6三馬をうっかりしていたと言う。「優勢だけど、勝負としてはまだ大変。こういう将棋がひっくり返ることは昔からある。▲8一角成に楽観してはいけない」と畠山は局後に反省していた。

 ここから少しずつ局面が紛れていく。第5図から▲2五桂が窪田の勝負手。△同桂▲同歩で相手に手番は渡るが、▲2四歩の攻めにかけた。後手玉は守り駒のいない2筋が薄い。畠山の△4四香では△1九飛▲2九香△1八銀▲4九玉△5六香と攻めるのがまさっていた。△4四香と打ったために後手玉が狭くなり、▲2四歩がより厳しくなった。「△4四香はひどい手だった」と畠山。

■ビッグチャンス到来

 第6図は詰むや詰まざるやの最終盤。窪田にとって、耐えに耐えてようやく迎えた本局一番のチャンスだ。あごを引いて盤面を見据える窪田の息遣いが荒くなってきた。緊張状態によって、心拍数が上がってきたのだろう。盤側にいる記者にもはっきり聞こえる。

 ここで窪田は時間ギリギリまで考えて▲2六香と打った。持ち駒は豊富なので王手がかなり続く。以下△2四歩▲同香△同玉▲3六桂△2五玉▲2六歩と必死に迫ったが、後手玉はわずかに詰まなかった。△1一玉まで進み、畠山の表情が穏やかになった。

 第6図では▲2五香と中段に打つ手があった。ひねった手だが、香を2五から打てば、△2四歩に▲1五桂△1四玉▲2三角△1五玉▲2六金と攻めることができた。また、▲1五桂に△1三玉としても、▲1四歩△1二玉▲2三金△1一玉▲3三角と攻めて後手玉は詰んでいた。また本譜の▲2六歩では、▲2六銀△同玉▲3八桂△2五玉▲3七桂という詰将棋のような手順で攻めても詰んでいた。

 後手玉の詰みが分かると、窪田は逆転のチャンスを逃したことに対し、畠山は優位に進めていた将棋をひっくり返されてしまったことに対してうなだれていた。

 畠山は薄氷の勝利で、2年連続本戦入りを果たした。

(君島俊介)

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