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<  第3回朝日杯オープン戦第21局  >
2次予選決勝 ▲行方尚史八段―△郷田真隆九段

行方、第1回覇者の力見せる

対局日:2009年11月10日

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■早指し巧者の好カード

 11月2日に始まった2次予選も本局が最後となった。午前10時からの対局で、郷田は村中秀史六段、行方は佐藤秀司七段にと、ともに“しゅうじ”を破っての決勝進出となった。

 行方は言わずもがな第1回の朝日杯覇者。対する郷田は長考派のイメージがあるが、短時間の棋戦でも実績は十分。激戦必至の好カードだ。

■腰掛け銀に

 ここまでの二人の対戦は16局あって郷田が10勝に行方6勝。直近の3戦はいずれも矢倉戦だった。本局は行方が3手目▲2六歩と突いたため、角換わり腰掛け銀に進んだ。

 41手目の▲2五歩(第1図)まで、両者はすさまじいスピードで組み上げた。ここで郷田が考えこんだ。過去の実戦例では△6五歩と後手から仕掛ける指し方もあったが、郷田は△4三金直。郷田は局後、「△6五歩と指したことがなかったので…。追求するべきでしたね」と話した。仮に△6五歩なら、▲6四角と好位置に先手から角を打たれ、△9二飛に▲4五歩と突かれる。郷田としては角を打たせる変化は避けたかったのだろう。

 △4三金直に行方は▲4五歩と仕掛けた。以下△同歩▲同銀△4四歩(第2図)と進んだ。ここで郷田は「あ〜そうか〜」とつぶやき、4四に歩を打った。△4四歩を打たずに△2六角は、▲4四歩△同銀▲同銀△同角に▲同飛とばっさり飛車を切られ、△同金に▲7一角と先手にドンドンやってこられる。行方「△4四歩と打たせて気合が通ったと感じた」。郷田は「△4四歩は妥協で、歩を打つようでは面白くない」と語った。▲5六銀と引いた局面は、先手だけが駒台に1歩をのせ、主張が通った形だ。

 ▲5六銀に対して郷田は、3・9・7筋の順に歩を突き捨て、△9五香から1歩を入手して△3六歩(第3図)と先手の桂頭に打った。行方は得した香を3九に打ち付ける。桂を取られても▲3七同香と取った形が、3筋逆襲へ大きな役割を担う。のちの攻めをみせた先行投資だった。

■郷田、好機を逸する

 3筋の香が威力を発揮して迎えた終盤、▲3三歩(第4図)と打ったのがなかなかの一着だった。単に▲3二香成と金を取るのは△同飛で、手順に飛車を逃げられ、さらに飛車成を狙われてまずい。本譜は▲3三歩に△3四金▲3二歩成△同飛と進行した。これなら後手の飛先は止まっており、怖くはない。

 さらに▲4一銀△3三飛▲5二桂成と進んで第5図。ここで郷田にチャンスボールがきた。単に△9五角は、▲9六歩と打たれて△9六桂を消されるが、先に△9六桂と打ち、▲8七玉としてから△9五角と出れば後手有望だった。先手は玉形が乱れており、後手に角香香と持たれては気持ち悪かっただろう。行方も「この順が嫌でしたね」と振り返った。

 郷田は△7三角と逃げたが、「攻めるという発想がなかったです。ご機嫌伺いをするんだったか〜。勝負手としてありましたね」と話した。

■交錯する対局心理

 第6図は4一の銀を▲3二銀不成としたところだ。行方は「▲2一飛成として受け駒(桂)を補充する手も考えましたが、以下△1二銀▲1一竜に△2一金が気になりました」。これを聞いた郷田は「銀(1二)・金(2一)とは打てないですね」と、自陣に手を入れる気はさらさらなかったという表情で語った。行方の方はやや形勢がよいという認識があったのだろう。細心の注意を払い、いろいろと気にかかるという心理もなんとなく分かる。

 ここで後手は金銀を渡さずに詰めろを掛ける必要がある。金を渡せば▲2三銀成△同玉▲2一飛成以下、銀を渡せば▲2二銀△同玉▲2一飛成以下で後手玉は詰んでしまう。第6図で郷田は△7七香と打ち込み、▲6八金右に△9六銀と打ったが、これは詰めろではなかった。

■先手玉は詰まず

 △9六銀で郷田は、△8七歩▲同玉△8四桂も考えたが、▲2一飛成に△9六角▲9七玉△8七金▲同金△同角成▲同玉△9六銀▲9八玉△8七金▲9九玉で先手玉は打ち歩詰めになる。だから郷田はこの順を見送った。

 また△9六銀では、行方は△8七歩▲同玉△7八香成▲同金△7七歩成▲同金△6九角▲7八香に△2五角成と長く指される順を気にしていたようだ。

 △9六銀に▲2一飛成と詰めろを掛けられた郷田は、△8七歩▲7九玉△8八金▲6九玉△7八香成▲同金△同金と先手玉に迫ったが、▲7八同飛(終了図)を見て、駒を投じた。先手玉は飛車の横利きが強く、詰みはない。

 かくして本戦入りの最終切符を行方が手にし、16人すべてが出そろった。

(滝澤修司)

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