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<  第3回朝日杯オープン戦第23局  >
本戦1回戦 ▲森内俊之九段―△屋敷伸之九段

森内、朝日杯で初勝利

対局日:2009年12月24日

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■頂点めざし猛者集結

 朝日杯をめぐる戦いはいよいよ佳境。16人の猛者が出そろい、本戦が12月24日に始まった。トーナメント表のどこを見ても好カードだ。まずは永世名人の称号資格を持つ森内俊之九段と棋聖3期の実績のある屋敷伸之九段が1回戦で激突した。

 森内はどっしりと腰の重い、鉄板流が代名詞の棋風。対する屋敷は忍者流と呼ばれ、さまざまなところから手を作る変幻自在な指し回しを得意とする。

 森内が横歩を取り、屋敷は慎重に駒組みを進めた第1図の▲3六歩までは、11月5日に指された2次予選の糸谷哲郎五段―豊島将之五段戦と同一局面。糸谷―豊島戦は第1図以下、△5四歩▲3五歩△5五歩▲3六飛△5三銀▲3七銀と進行した。▲3七銀まで進んだ局面は先手を持っていた糸谷は指しやすいとコメントしている。

 屋敷の指し手は7分考えての△9四歩。しかし森内はこれにあいさつせずに▲3五歩と伸ばした。端よりも中央の方が手の価値ありと見たのだ。それでも屋敷は悠然と△9五歩と突きこす。「▲3六歩まで実戦例があるのは知っていましたが、局数が少なく、はっきりしなかったので、端攻めを見せながら形を崩さずに組むために△9五歩と突きました。ただ直後、森内さんの▲2六飛が機敏でしたね。△2三歩と打たざるを得なくなってしまいました。もしかしたら△9五歩では△2四飛と回って牽制(けんせい)するほうが良かったかもしれません」と後日、屋敷は語った。

 森内は第1図では「△5四歩と突かれるものだと思っていました」と述べた。

■両にらみの角で森内リード

 第2図は森内が▲5六角と両にらみの角を据えた局面。屋敷がやや苦しい展開で、次の手を考慮中に持ち時間がなくなり1分将棋となった。

 △8四飛に対して森内は▲2三角成と成り込んだ。以下△同金▲同飛成△2二歩▲2六竜。角金交換の駒損だが、竜を作って大きな戦果をあげた。森内は「竜が出来てよくなったと思います」と優勢を意識し、屋敷も「作戦負け」を自認した。

 森内が竜を作ってからは、互いに桂を攻めに参加させる。屋敷は常に▲3四歩から▲2二竜と飛び込まれる筋を警戒しなければならず、飛車を4段目から動かすことができない。

■森内、優勢を維持

 第3図は森内が▲4六銀とした局面。次に▲4五銀と出られてはたまらないので、屋敷は△2三角と打ってこれを防いだ。しかし森内は落ち着いて▲3七桂。駒を遊ばせないテクニックは心にくいばかりだ。

 第4図の▲7四桂は左右挟撃態勢に入った一手。屋敷の△7三銀に森内はズバッと▲3三馬。局後に森内は「急ぎすぎましたか、▲3二馬でしたかね」とコメントしたが、ここから寄せの網を絞り、加速をつけて後手玉を追い詰めていく。

■痛打▲5六香

 森内優勢のまま迎えた第5図。屋敷は△7四銀と桂をはずしたが、▲5六香の痛打をあびてしまった。感想戦では、第5図で△3五飛と飛車を逃げておく順も検討されたが、以下▲3六歩△2五飛▲2六歩△同飛▲7二金(▲6一銀以下の詰めろ)△2一歩▲2七歩△3六飛▲3七歩△7六飛に▲2一竜が一例で、これも先手よし。屋敷はどうやっても先手で飛車先を止められてしまう。

■堅実な寄せで森内快勝

 第6図は最終盤。ここでは▲7四金△同玉▲8三銀△6四玉▲7三銀不成△6五玉▲6三竜△7六玉▲8七金打△7五玉に▲7四竜までの詰みがあったが、森内は▲7三銀不成△6五玉▲5六金△7六玉に▲7四金と縛った。1分将棋では仕方ない。確実な順で屋敷玉を追い詰めた。

 屋敷は最後の一太刀とばかりに△4六桂打から先手玉に迫ったが、▲4七桂と打たれ駒を投じた。

 1次予選から勝ち抜いてきた屋敷は、「本局は、9筋の2手がのんびりしすぎていましたね。作戦負けでした。朝日杯はいろんな方に見て頂けてよかったです。インターネット中継で観戦していた方も、40分と言う持ち時間はちょうど良いのではないでしょうか」と振り返った。

 過去2回とも本戦1回戦で敗退した森内は朝日杯初勝利。局後は「▲2三飛成と飛車が成れて、リードできたと感じましたが、そこからモタモタしてしまいました。中盤で、もっと優勢を拡大するチャンスがあったと思います」と、勝利を納めた後にもかかわらず、気を引き締めた表情で語り、2回戦に備えて対局室を出て行った。

(滝澤修司)

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