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<  第3回朝日杯オープン戦第27局  >
本戦2回戦 ▲深浦康市王位―△佐藤和俊五段

佐藤和、難敵深浦を破る

対局日:2009年12月25日

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 タイトルホルダーの深浦と2年連続ベスト4入りを狙う佐藤の対戦。

 朝日杯は午前と午後で1日2局指すケースが多い。午前に行われた1回戦の佐藤と木村一基八段の将棋が千日手となったため、対局開始時刻が遅くなり、本局は午後3時15分に開始された。佐藤はあまり休む時間が取れなかったが、朝とさほど変わらない表情で席についていた。

 1回戦の深浦対丸山忠久九段戦が正午ごろに終局したため、本局開始まで3時間ほどの休憩時間があったが、深浦も変わりない表情で対局に臨んだ。

■深浦の新構想

 振り駒の結果、深浦の先手に決まった。佐藤のゴキゲン中飛車は予想されたところ。1回戦で木村八段に勝った戦法でもある。深浦の対策が注目されたが、第1図の早い銀上がりには驚かされた。ひとまず玉を7八まで移してから攻めの態勢を整えるという常識から外れた指し方だ。

 従来は第1図の▲3七銀で▲7八玉〜▲6八銀〜▲5八金右と構えてから▲3七銀と出動させる指し方が多かった。その後、2009年に入って▲5八金右を省略して銀を繰り出す指し方が多くなった。そして、本局。時がたつにつれて、玉の囲いが簡素になっている。どことなく居飛車穴熊に対する藤井システムを連想させる。第1図は本局以降で数局現れた。また、非公式戦ながら羽生善治名人も採用しており、今後の動きが注目される。

 第1図から佐藤の熟考が続く。朝日杯は持ち時間が40分しかないが、新構想を出されては仕方がない。佐藤は「左銀を4四に構えて受ける指し方は、居飛車側が持久戦に変化しやすいのが嫌だった。しかし、突っ張り方が分からなかった」と言う。△3二銀〜△5四飛として角頭を守りつつ、△4四歩から銀挟みを狙ったのは、実戦らしい臨機応変の指し方だ。

■深浦、ペースをつかむ

 深浦は本棋戦の前身の全日本プロトーナメントや朝日オープン選手権で優勝経験があるが、朝日杯ではベスト8が最高記録となっている。以前は粘り強い棋風で知られていたが、ここ数年、激しく動く将棋も得意にしており、年々積極性が増している。

 佐藤は毎年高い勝率を挙げており、活躍が期待される棋士の一人。朝日杯では第1回でベスト8、第2回ではベスト4入りしている。森内俊之九段、丸山忠久九段、藤井猛九段といったA級棋士を破っており、今期も1回戦で木村一基八段を破った。

 深浦は右銀を捕獲されないように攻めていく。第2図の▲2八飛に△4四歩は▲2二歩成△同金▲2四歩の筋があって先手が良い。このあたり、深浦がリードしている場面だ。佐藤も「銀が取れなかったので自信がなかった」と振り返る。

 本局の深浦は序盤の速攻から積極的な指し回しが目立つ。▲7四歩(第3図・55手目)と突き捨て、△同飛に▲8八玉△7二銀▲9八玉と玉を深くしてから△9四歩に▲7八飛とぶつけ、局面を激しく動かしていく。5筋〜9筋を主戦場にしてしまえば、後手の左の金銀が働かないという判断だ。

■深浦変調

 序盤から時間を使う展開だったので、▲7八飛の局面で両者1分将棋となった。佐藤は「端玉には端歩」で△9五歩〜△9六歩から玉頭に襲いかかる。

 第4図は△5五歩(74手目)と打ったところだが、次の▲4一飛では佐藤指摘の▲6二歩が良かった。(1)△7一金ならそこで▲4一飛が▲7一飛成の美濃崩しを狙って厳しいし、(2)△5一金なら▲2二角成△5六歩▲2一馬△4三歩▲1一馬と駒を取って先手良しだった。「そうか、踏み込まないで冷静に行って良かったのか。本譜は焦点がぼけてきた」と深浦。序盤からの流れで、勢いよく指していたのがここでは裏目に出た。

■逆転

 ミスはあったが、まだ形勢は深浦が良かった。しかし、佐藤の粘りにやや持て余し気味でもあった。第5図の△9四飛(84手目)は▲7四桂を消しながら△9八歩成の攻めを見せた勝負手だ。

 1分将棋の深浦は首を横に振り、悩みを断ち切るようなしぐさで▲9五歩と打ってから▲9七桂と受けたが、▲9五歩では強く▲3二竜が成立していた。次に▲4二竜△同金▲7一角の詰み筋があるし、△9八歩成としても▲同香△同香成▲8七玉で先手玉は簡単には寄らない。深浦は局後に「▲9五歩から▲9七桂が敗着ですね。△9四飛を通してしまったのはまずかった。▲9七桂は1手の価値がなかった」と反省していた。

 勝負手を通した佐藤は△5六歩から△6五銀と上部を厚くしながら寄せを目指す。△6五銀と攻防の要所を押さえたことにより、▲8五桂に△8四玉と美濃囲いの屋根に上った形が攻められにくくなっている。

■2年連続ベスト4入り

 佐藤は第6図の▲9五香(101手目)で▲8七金寄と金を逃げる手を気にしていたという。本譜は先手陣を攻めながら後手玉が安全になっている。深浦は執念を燃やして戦ったが逆転には至らない。佐藤は「△7八とから△7七歩と迫って勝ちを意識した」と言う。

 深浦は△7七銀を見て投了した。終了図以下は▲7七同玉△7六銀▲8八玉△7七銀打▲8九玉△8八金と上から押しつぶして詰む。

 佐藤は1回戦の木村八段に続いて強敵を破り、2年連続ベスト4入りの快挙。局後のインタビューで「去年はすぐに負けてしまったので、今年は対策を立てて、次のステージに立ちたい」と意欲を見せた。

 本局の数日後、佐藤は結婚した。人生のパートナーに自身の活躍を見せられるだろうか。

(君島俊介)

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