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<  第3回朝日杯オープン戦第30局  >
本戦1回戦 ▲久保利明棋王―△鈴木大介八段

好調久保が初戦突破

対局日:2010年1月19日

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■棋王が登場

 前回準優勝でシードの久保利明棋王が1回戦に登場した。前回決勝戦があった昨年2月には棋王戦五番勝負で佐藤康光棋王(当時)に挑戦中だったが、その勝負を制して念願の初タイトルを獲得した。

 久保は今期も好調を維持。ただいま羽生善治王将に挑戦しながら、今月から自身の防衛戦も始まり、冬の主役を演じている。一方の鈴木大介八段は、2次予選で青野照市九段、近藤正和六段を破って本戦入りした。今期は目立った活躍がなかった鈴木。得意の早指し棋戦でひと暴れしたいところだ。

 ここまでの対戦成績は久保7勝、鈴木5勝と伯仲している。

■久保の居飛車

 振り飛車党同士の対戦なので、相振り飛車を予想されたファンも多いだろう。筆者もそう思ったが、先手になった久保は3手目に▲2六歩と早くも居飛車を明示した。今年度は相手が振り飛車党のときは、積極的に居飛車を採用している。自分の研究を深めようという狙いもあるのだろう。

 対する鈴木は△4四歩〜△4二飛と得意の四間飛車に構えた。戦型が決まれば次は玉の囲い。先手は居飛車穴熊を目指し、後手は美濃囲いに組んだ。

■鈴木の工夫

 △7四歩〜△7三桂(第1図)と桂跳ねを急いだのが鈴木の工夫。実戦例はないが、駒組みの可能性を試したかったのだろう。第1図から▲6六銀△5四銀▲7五歩△6五銀▲7四歩△同銀▲7五歩△6五銀▲9九玉△6四歩▲8八角(第2図)と進んだが、鈴木の思惑と外れた展開となった。

 まず△6五銀では△7五同歩も有力。以下▲同銀△7六歩▲6八角△4五歩▲6六歩△6四歩と激しくいく順があった。「△6四歩(次は△6三金)でまずまずかと思ったけど、第2図の▲8八角がうまい手でした」と鈴木。

■先手優勢に

 第2図から鈴木は△4五歩と飛車角をさばこうとしたが、角と銀を交換したあとの▲6六角が攻防の一手。そこで△4三金▲2四飛△2二歩と辛抱するようでは、先手の優勢がはっきりした。

■決め手の逃す

 鈴木が△7六歩から△7七銀と打ち込んだ第3図。久保は▲7三銀としたが、ここでは▲同桂△同歩成▲同金と清算してから▲7三銀を狙う方が良かった。ただ実戦心理としては、囲いを崩さず手抜きして勝ちたいと思う局面でもある。そんな事情をしっかりくみとっていた鈴木は「手抜きしてくると思ったよ」と笑って語っていた。

 実戦は▲7三銀以下、△6三銀▲7七桂△同歩成▲同金△7四銀▲7六金△9四角(第4図)と進行。△6三銀〜△7四銀がうまい粘り方。そして最後の△9四角は厳しい手。「この手が見えていなかった」と久保は苦笑いした。

■ついに逆転

 攻守が逆転した第4図。▲7八飛△7七歩▲同金△6二金▲6四銀成△7七桂不成▲同飛△7六金と後手が緩急をつけて、手の調子が良くなってきた。適当な受けのない久保は▲7四成銀と銀を取ったが、△7七金▲同角△6九飛▲8九金△6七角成▲7八銀打△7七馬▲同銀△7六歩と鈴木の快調な攻めが続く。手順中、△7七馬では△7六歩だと、▲6九銀△7七歩成▲3一飛△4一桂▲6三歩で先手の勝ち筋となる。

 本譜の△7六歩に▲同銀や▲8八銀引は、△7七桂と8九の金を攻められてしまう。そこで久保は▲5八角と非常手段に出た。△6五飛成▲7六角△7四竜(第5図)で自玉は安全になったが、「7四の成銀を取って逆転したと思った」と鈴木。

■鈴木の失速

 悪くなった久保だが、ここからがしぶとい。第5図から▲6五銀△8四竜▲6四歩と拠点を作り、次に▲5五桂を狙う。それを受けて△4四金に、久保は▲5八金と遊び駒を活用しながら手を渡した。「この金で焦ったね」と鈴木。力強く△7五銀と打ったが、ここでは△7三桂と打って6五の銀を外せばわかりやすかった。

 実戦は△7五銀以下、▲6八金△7三桂▲7四歩△6五桂▲同角△5四金▲7六桂△9四竜▲5四角△同歩▲7三金(第6図)と進み、再逆転。手順中、△5四金で△6四銀は、▲2一角成△7四竜▲3一馬で意外と大変。そう読んだ鈴木は△5四金に期待したが、この手が敗着となった。

 △5四金では△5四歩が正着で、これなら先手の攻めは切れていたようだ。久保は「この手は考えていない」。首をかしげながら△5四歩の局面を考えたが、結局うまい手は見つからなかった。

■久保が勝ち切る

 第6図から△7二銀▲6五桂△7六銀▲同銀△4四角と攻防の角を打って鈴木は粘った。しかし、▲8八銀と王手を防がれたあと、自陣を受ける手がなかった。△8四桂▲6七銀△7六角と絡んでいったが、先手陣には響かない。

 そこで久保は▲6二金△同玉▲5三銀と寄せに出た。△同角なら▲7三歩成△同銀▲6三金△5一玉▲5三桂成で一手一手。実戦は△5一玉と逃げたが、▲4四銀不成と角を取られたところで鈴木は投了した。

 序盤から目の離せない展開になった本局。苦しい局面での粘り方にお互いの持ち味が出ていた。勝ち切ることは大変だなと感じさせる将棋だった。

(藤本裕行)

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