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<  第3回朝日杯オープン戦第33局  >
本戦2回戦 ▲久保利明棋王―△佐藤康光九段

久保棋王が2年連続ベスト4

対局日:2010年1月19日

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■最後のイス

 ベスト4入り最後のイスをかけた一番は、久保利明棋王と佐藤康光九段の対戦となった。すでに谷川浩司九段、羽生善治名人、佐藤和俊五段の3人が勝ち上がっている。本棋戦では準決勝からは公開対局で行われる。ファンの前で指すことは、棋士にとって晴れ舞台の一つだ。とくに今期順位戦で不調の佐藤にとっては、棋王挑戦に続いて存在感を示すチャンスでもある。

■相振り飛車

 両者で争われる棋王戦五番勝負は2月5日に開幕している。第1局は序盤から乱戦だったが、終始リードしていた佐藤が制した。本局はその前の1月19日に指された。タイトル戦を見据えて、お互い手の内を見せたくないという気持ちが働くのだろうか。先手番になった久保は最近愛用の石田流ではなく、▲1六歩△1四歩を交換してから四間飛車に構えた。そして居飛車党の佐藤も△3二飛とし、相振り飛車になった。

 佐藤は早々と美濃囲いにし、久保が金無双から矢倉に組みかえている間に攻撃態勢を整える。久保が▲2八玉と入城すると、すかさず△1五歩(第1図)と仕掛けていった。

■久保の受け

 第1図から久保は▲1五同歩△1六歩に▲2六銀。△4五歩には▲3五歩△4六歩▲3六金で、後手の攻めを金銀を繰り出して受け止めた。このような展開を想定し、久保は▲6五歩を突いていなかったのだ。

 佐藤は△5四銀〜△6四歩と戦線拡大を図る。▲3四歩〜▲3五銀と押さえ込みに対し、△4三金から△5五銀で銀交換を迫った。銀を手持ちにすることで、攻めの継続を狙う。

■攻め合い

 第2図から▲6五歩△5四銀▲同銀△同金▲6四歩△9九角成▲6三歩成△6七歩▲6二歩と一直線の攻め合いになった。最後の▲6二歩が好手で、以下△同金▲同と△同飛▲6九飛で先手は駒得に成功した。

 その後、6筋の攻防があって迎えた第3図では「少し悪いかな」と佐藤。第3図から▲5二金△6六馬▲5六金△7六馬▲6五歩△5四金▲6四銀と久保は確実な手で攻めていく。佐藤は△8五馬から馬を使って耐えたが、久保が飛車を奪って優勢を拡大した。

 佐藤が期待した△3六香には、▲4七金△5八銀▲3六金△6九銀不成とあっさり飛車を渡すのが久保の好判断。第4図の▲6四香がめちゃくちゃ厳しく、そのまま久保が押し切るかと思われた。

■粘る佐藤

 第4図から佐藤は△7八飛▲3七玉△6四金▲同歩△9六馬▲6二金打△同銀▲同金△9四歩と粘る。今後の対戦のことを考えると、簡単に負けるわけにはいかないのだ。佐藤の表情は、鬼の仮面をかぶったようだった。

 戻って▲3七玉では▲1七玉がまさった。佐藤は△9六馬とし、△9七馬〜△5九角の筋をみせて、先手にプレッシャーをかける。

 実戦は△9四歩に▲6三歩成△9七馬▲7二金△9三玉▲9七桂△5九角▲4六玉△4八飛成▲4七銀△8四玉▲5三飛成△9五玉(第5図)と進んだ。

 ▲9七桂は▲8二角△8四玉▲8五銀以下の詰めろだが、久保は△5九角〜△4八飛成でその筋を消した。△4八飛成に▲5五玉と逃げるのは、△7七角成▲6四玉△5四金▲7五玉△7四香以下、先手玉はトン死してしまう。

 佐藤玉が5段目に上がってきて、久保に焦りが見え始めた。

■佐藤、必死の抵抗

 中盤の途中から、双方1分将棋が続いている。一流棋士の両者でも、最善手を続けるのは難しい。第5図で久保は▲8五銀と打ったが、この手は悪手。▲8五角なら佐藤玉は上部へ逃げることができず、明快に勝ちだった。

 「銀だったから勝ちまであるかと思った」と佐藤。入玉を目指して必死の抵抗をみせる。▲8五銀から△8四歩▲5五竜△9三桂▲6六竜△8六香▲2六角(第6図)と進んだ。▲2六角は、8六の地点に利いている5九の角を動かそうという狙いだ。

■佐藤の錯覚

 第6図から△8五歩▲4八角△同角成▲8五桂△9七銀▲9八飛と、派手な順で久保は寄せに出た。戻って第6図では△3七歩があった。以下▲同角△同竜▲同桂なら、5九の角が受けに利いたままで本譜と全然違う。「これならこちらも入玉を目指すことになりそう」と久保。感想戦で△3七歩を発見した佐藤は、この手を逃したことへの悔しがり方は相当なものだった。

 しかし、実戦もどっちが勝っているかわからない。▲9八飛に△8五玉▲9七飛△5四桂(王手竜取り)▲5五玉△6六桂▲同金のときに、佐藤が△5四歩という悩ましい手を打てば、まだアヤがあった。

 実戦は△5四歩ではなく、△5一飛▲5四桂△5七馬としたが、これは錯覚。佐藤は▲7六銀(終了図)をうっかりしていて、なんと詰まされてしまった。

 「桂合いさせておけば自玉は詰まないと思っていた」と佐藤。終了図から△8四玉▲7五金△8三玉▲7三と以下の即詰みだ。

 本局の終盤はかなり面白かった。佐藤の粘りが久保のミスを誘い、その後の入玉をめぐる攻防には迫力があった。勝った久保は2年連続の準決勝進出を決めた。

(藤本裕行)

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