現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 将棋
  4. 朝日アマ名人戦観戦記
  5. 記事

<  第33期朝日アマ名人戦三番勝負第3局  >
▲清水上徹(第32期名人)―△早咲誠和(挑戦者)

清水上さんが初防衛

対局日:2010年5月30日

第1図拡大  

第2図拡大  

第3図拡大  

第4図拡大  

第5図拡大  

第6図拡大  

終了図拡大  

■第1局と同じ相振り飛車

 早咲さんにとって第2局の逆転負けは痛かった。ほぼ手中に収めていた朝日アマ名人の座を逃したショックは大きかっただろう。第2局は第1局の翌日に行われるのに対し、第3局は第2局と同じ日に行われる。初戦で敗れた清水上さんは一晩、気持ちを立て直す時間があったが、早咲さんに与えられたのは昼食休憩の1時間ほど。早咲さんは昼食を軽めに切り上げ、自室に戻った。

 1勝1敗で迎えた第3局は改めて振り駒が行われ、清水上さんが先手に決まった。午後1時30分、加藤一二三九段が「それでは戦いを開始してください」と発して対局は始まった。

 清水上さんの初手は第1局と同じ▲5六歩。早咲さんは△3四歩と応じ、第1局と同じ出だしだ。ただ早咲さんが10手目△4四歩と角道を止めたことで第1局の駒組みに別れを告げ、相振り飛車の穏やかな進行となった。

■早咲さんがポイント挙げる

 互いに美濃囲いに組み、角交換になったが、清水上さんは▲6六角と急所に角を打った。対する早咲さんは、先手が銀冠に組み替えようとした瞬間をとらえ、リードを奪いにいった。第1図は3五の角で2六の歩を取ったところだ。▲2六同銀とすれば角銀交換で先手の駒得になるが、以下△2六同飛とされた時に歩切れで▲2七歩と打てないのが痛い。▲2七金と上がって受けるくらいだが、△2四飛と引かれて先手陣をまとめるのは容易ではない。

 清水上さんは△2六角を放置して▲8八飛としたが、△4四角と引き揚げられて先手の1歩損だ。「先手はつらいですね」と立会人の加藤一二三九段。はやくも早咲さんがポイントを挙げた。

■一気に終盤戦

 第2図は早咲さんが4四にいた飛車を7四に転回したところだ。先手が▲6七金と受ければ、△4四角▲2七歩に△2五歩で先手の銀が助からない。清水上さんは▲3五銀と受けたが、以下△7六飛▲7八歩△7五角▲2八玉△8六飛▲同飛△同角▲2一飛△7九飛と進み、一気に終盤戦に突入した。

 飛車の打ち合いは、陣形にまさる後手に分がある。単純な攻め合いでは勝てないとみた清水上さんは、何とか入玉の形にしようと、竜と馬を引きつけて上部を開拓する。これに対し早咲さんは確実に寄せの網を絞っていった。

■先手玉捕まる

 第3図は4九の竜で4七の歩を取り、早咲さんが歩切れを解消した局面だ。以下▲4八歩△4五竜▲同竜△2六歩▲3九桂△5四角▲同竜△同歩▲2一飛△4九飛▲1三角。清水上さんも必死に粘るが、早咲さんも手を緩めれば入玉形を築かれてしまうので、攻め続ける。早咲さんは△4八飛成から決めにいった。

 第4図の△2七銀で、ついに先手玉が動けなくなった。▲2六飛成は△2八馬の1手詰みだ。ただこの局面、△1六歩が打ち歩詰めのため、詰めろにはなっていない。△2五桂▲同飛成△1六歩▲同竜△2八銀不成▲1八玉△1七歩▲同竜△1九銀成で詰むようだが、△2五桂には▲同飛不成があって打ち歩詰めが解消できない。どちらからも容易に手出しができない珍しい状態だ。

■見えない寄せ

 受けようのない清水上さんは第4図で▲3四飛と打った。これは△1四桂(詰めろ)▲同歩△1五歩(必至)の筋を消した防御の手だ。△3六歩には▲3五馬と出て後手玉に圧力をかける。

 早咲さんはここで△8二玉と馬筋を避けたが、△3九金と桂馬を取れば、これが詰めろ(次に△2五桂▲同飛不成△2八銀不成▲1六玉△2七馬)となって勝ちだった。清水上さんがすでに秒読みだったのに対し、早咲さんはまだ5分ほど持ち時間を残していた。だが、死角に入ったかのように、この寄せが見えなかった。

 次の▲8四歩や▲8五歩と継ぎ歩した時点でも△3九金のチャンスはあったが、早咲さんはずっと受けに回り、ついに1分将棋となった。

■勝ちがこぼれる

 第5図は清水上さんが3四の飛車を▲3五飛と引いたところだ。2五に飛車を利かせて次に▲6一飛成を狙っている。ただ、ここでも△1四桂▲同歩△1五歩(▲1五同飛は△1六歩▲同飛△2八銀不成から詰み)という必至があった。結局、早咲さんはこの筋も見つけられず、追いつめられていった。

 第6図の▲4三竜でついに後手玉に詰めろがかかり、逆転。早咲さんは△4四金で待望の銀を手に入れたが、すでに遅し。後手玉には▲8四馬からの詰みが生じていた。

 ▲9六香と打たれて早咲さんは扇子を広げ、一瞬窓外に目をやった。そして小声で「詰みました・・・」。最後の▲9六金(終了図)を見て、はっきり「負けました」と頭を下げた。終了図以下は△8四玉▲4四竜△7四香▲8五金△8三玉▲8四歩△7二玉▲6四桂以下、即詰みだ。結局、清水上さんの玉は、40手近くも身動きできない終了図の状態で耐えた。

 大逆転で初防衛を決めた清水上さんは「最後はずっとダメだと思っていたので不思議な気分です」。一方、早咲さんは「最後は勝ちの順をいっぱい逃して、情けないというほかない。自分の弱さというか。寄せに気付かないんだからしょうがない。それ以外は自分らしさが出せたんじゃないかと思います」。

 史上まれに見る劇的な幕切れだった。

(村上耕司)

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介