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<  第4回朝日杯オープン戦第3局  >
2次予選決勝 ▲松尾歩七段―△丸山忠久九段

丸山九段が本戦一番乗り

対局日:2010年11月1日

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■2次予選開幕

 第4回朝日杯は2次予選が始まった。2次予選は、32人がA〜Hの八つのブロックに4人ずつ分かれ、それぞれのトーナメントを勝ち抜いた8人が本戦に出場できる。午前中に行われた1回戦で、松尾は村中秀史六段に横歩取りで快勝、丸山は中村太地四段のゴキゲン中飛車を破った。

 Eブロック決勝の本局は午後2時から行われた。記録係は川崎直人二段。振り駒はと金が4枚出て、松尾の先手番に決まった。

■一手損角換わりに

 後手の丸山は4手目で角交換した(第1図)。この形での角交換は意外と実戦例が少なく、序盤の構想が難しい。丸山は、先手では20年以上前から角換わり腰掛け銀を得意にしているが、近年は後手番での一手損角換わりもよく採用している。本局の数日前にも同じ出だしの将棋を指している。

■出ばなをくじかれる

 松尾は相懸かりや横歩取り、角換わりなど急戦調を得意にする居飛車党。研究家として知られ、松尾の将棋がベースになってタイトル戦で採用されるケースも多い。アマチュアだけでなく、同じ棋士仲間にも注目されている。

 後手番一手損角換わり対策に、先手は早繰り銀や棒銀を採用するのが主流だ。松尾も▲3七銀(第2図)と出て早繰り銀を狙った。先手から角交換する普通の角換わりに比べて1手余分に指せるから、それを生かして急戦を目指すのだ。

 ところが、第2図から△6三銀に▲2五歩と突いた時、△5四銀と2筋を放置されて当てが外れた。すぐに▲2四歩△同歩▲同飛と歩を交換できればいいが、△1三角の反撃があってまずい。仕方なく、玉形を安定させたものの、△4四歩と突かれ、作戦変更を余儀なくされた。▲4六銀と出たいが△4五歩で押し戻されてしまう。形勢に差がついたわけではないが、出ばなをくじかれた格好だ。

 松尾は「早繰り銀をやるつもりが阻止された。馬鹿な序盤でした」と悔やんだ。▲2五歩と突くなら△3三銀と受けるしかないタイミングを計るべきだった。

■危機が去る

 方針を変更して棒銀を目指す松尾に対して、丸山は居玉のまま、先手の駒組みを牽制(けんせい)する(第3図)。ずいぶん突っ張った指し方をするものだと思った。これくらい頑張らないと後手が不満なのかという危機感を感じた。

 第3図から先手は▲3五歩△同歩▲同銀△3四歩▲2六銀△7三桂と穏やかに進めたが、ここは▲3七角と打ち、△6二飛▲4五歩△同歩▲6四角△同飛▲8二角△7三角▲同角成△同桂▲8二角△7二金▲9一角成△6一飛▲9二馬△8五桂という激しい指し方もあった。また△7三桂にも▲8六角と角を合わせて、▲7五歩を狙っていく指し方もあった。

 先手側は陣形が少し堅いので、強気な戦いを考えたかった。松尾は「後からでも、攻められる」と思っていた。しかし現実は違った。

 丸山は「ふぅーっ」と大きく息をついて、大きな扇子であおいだ。表情は厳しかったが、序盤の危機を脱して、ほっとした気持ちが出たようだった。

 第4図では後手陣がバラバラだが、▲4五歩と戦端を開くのは、△8五桂▲3五歩△3七角成▲同桂△3五歩▲同銀△3六歩でわずかに攻め切れない。実戦は先手が▲5六歩と自重し、後手も△3二金としまって、「普通の角換わりになって一安心した」と丸山。松尾にとっては、手得が生きない形になり、主導権も握られることになった。

■丸山、仕掛ける

 自玉を固めて準備万端の丸山は、△4五歩(第5図)と自陣から歩をぶつけていった。▲同歩なら△3七角成▲同桂△6六歩▲同歩△同飛▲6七歩△6二飛の進行が考えられる。以下▲4六角△6三飛▲2九飛と辛抱すれば、▲4六角が好点で、先手もまだやれた。

 松尾は6筋の歩を交換されては面白くないと判断して▲6八金右を選んだが、以下△8五桂▲1八香に、△9五歩からの攻めが厳しかった。

 角換わりでは、細い攻めをつなげていく展開になりやすい。そのために、攻める方は駒をフル活用させる必要がある。駒の効率はすべての駒が使えている後手がまさる。先手の攻め駒は働きが悪く反発力に乏しい。

 △4五歩と突っかけてからわずか十数手後に丸山は飛角を金銀と交換した。主力を失ったが、小駒の連係プレーで攻めをつなげようとしている。

■丸山快勝

 第6図は丸山が△7六銀と打ったところだ。▲6六歩と5四銀の活用を阻んでも、以下△6七金▲同金△同銀成▲7八金△同成銀▲同玉△7六金で、先手がしのぎ切るのは大変だ。△7六銀では、△6五銀▲8四馬△7六銀打の方が分かりやすかったが、本譜でも受けにくい。

 松尾は△7六銀に▲7九飛と指したが、△4六歩▲同角△6七歩▲6九金△6五銀上。後手が上から押さえつける形になって、先手は受けが利かない。4六で手に入れた歩が大きな役割を果たしている。

 終了図以下は▲7八同金△同歩成▲同玉△7七桂成として、上から押しつぶしていけば良い。

 松尾にとっては、序盤の失敗から力を出し切れない展開になってしまった。第1回の準優勝者である丸山は快勝で本戦進出を決めた。

(君島俊介)

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