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<  第4回朝日杯オープン戦第15局  >
本戦1回戦 ▲谷川浩司九段―△丸山忠久九段

丸山、堅陣生かし攻め倒す

対局日:2010年12月24日

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 谷川九段、丸山九段というスター棋士同士が本戦1回戦でぶつかった。もっとも本戦までくれば、どの対戦も好カードだ。対戦成績は谷川27勝に丸山26勝と伯仲。谷川には1200勝のメモリアルも懸かっている。12月に入り、両者は3度目の対戦。丸山は「当たる時は結構あたりますよね。関東同士、関西同士ならたいして珍しくもないのでしょうが、関西の先生とは珍しいですね(笑い)」と意に返さない様子であった。

■先行策の谷川、待機策の丸山

 谷川が中飛車を採用し、丸山は穴熊を明示した。

 谷川は3筋に飛車を転回し、積極的に動いてポイントを稼ぎにいく。丸山は4枚穴熊の堅陣でガッチリ受け止めたい。攻めの谷川「光速流」と受けの丸山「激辛流」、棋風に準じた戦いとなった。第1図の▲3四歩と打った局面について、谷川は「威勢だけが良さそうな感じで…」、丸山は「難しい将棋」。どちらも自信がなさそうな感想だった。

■「そろそろ行かないと」

 第1図から△2二角▲3九金△5四歩と突き返した第2図。先手は▲5九金〜▲4九金左と固める余地を残しているが、後手はあまり動かす駒がない。丸山は「よく分からなかったが、そろそろ行かないと」と思ったと言う。

 対する谷川は「(5四の歩を)突かれて自信なかった」。△5四歩が着手されると数回、首を振るしぐさを見せ、10分ほど考えて▲同歩と取った。

 以下△同飛▲2二角成と進み、これを△同金と取ったのがうまい手だった。形よく△同銀だと、先手に銀を渡すと▲4一銀とかけられたときに3二の金にひもがついていない。

 ▲2二角成△同金に▲8二角と打ち込んだ谷川。「ひどい角になりそうでしたが、焦らせるしかなかった」と語る。相手に手を渡すのもプロのテクニックの一つだ。

■3筋を巡る攻防

 丸山は△3七歩▲同銀△3六歩▲2八銀と先手で飛車先を止めてから、△3四金と駒をさばいていった。

 谷川は▲2六金(第3図)と打って抵抗する。これを見た丸山は「ゲホッ、ゲホッ」と激しくせき込む。丸山はいったん席を外し、廊下に出たが、そこからも丸山のものと思われる激しいせきが聞こえた。

 局後、▲2六金では▲7一角成△3二飛に▲2六馬と引きつける変化が検討された。以下△4六歩は▲5八金で「どちらが得かわからない」と丸山。▲2六馬に△5五角は▲9八香(参考1図)で難しかった。丸山は「谷川先生は(8二の)角で桂・香を取る狙いなのでやりづらそうでした」と語った。

 本譜は▲2六金に△3七歩成▲同銀△同飛成が鋭い斬り込みだった。▲3七同飛に△6四角が強烈である。

 感想戦で示された▲3八飛打の受けには、△2五銀(▲同金には△3六歩)がある。ただ丸山は「自信があったわけではない」と語る。

■しかたなく

 本譜は▲3六飛打の受けに△3八歩▲同金△4九銀▲4八金に△3七角成▲同飛と進んだ。第4図は△8八飛の打ち込みに対し谷川が▲7八角と受けた局面。谷川は「しかたない」といった表情で、首を2度・3度と振りながら▲7八角を打った。

 しかし▲7八角では▲6八角の受けがあった。感想戦では以下△8九飛成▲7九金△9九竜▲4九金△5六桂▲5七角△3二香▲3三歩△同香▲3四歩△6八銀▲3三歩成△同銀に▲7五角(参考2図)と進んだところで、丸山は「駒をいっぱい取られて自信がない」。谷川は「こういう展開になれば駒が利いてますか。そうか、そうか」とうなずいた。

 ▲7八角に丸山は△5八銀打。後手玉は堅く、手がついていないので、確実な指し手で先手玉に迫ればいい。▲5八同金寄△同銀不成に▲同金は△7八飛成と角を取られてしまうので、▲7九金と飛車に当てたが、飛車切りから再度の△6四角(終了図)で勝負あった。先手玉は受けても一手一手。残された8二の角が悲しい。谷川はここで静かに「負けました」と駒を投じた。

 谷川がリードする形で小声で感想戦が始まった。終わるころには丸山のせきはすっかりやんでいた。

(滝澤修司)

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