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<  第4回朝日杯オープン戦第23局  >
本戦2回戦 ▲渡辺明竜王―△村田顕弘四段

渡辺、2年ぶりのベスト4

対局日:2011年1月19日

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■連戦に挑む

 午前10時から行われていた本戦1回戦の勝者同士が対戦する一局。渡辺が畠山鎮七段に快勝した対局は午前11時21分、村田が久保利明棋王・王将を振り切った対局は午後0時46分に終了した。

 渡辺のほうが約1時間20分も休憩時間が長かったことになるが、それが必ずしも渡辺に有利に働くとは限らない。ゆっくり食事に出る時間がなかった村田は近くのコンビニエンスストアで軽食を買い、控室で仲のいい奨励会員と語らいながら休憩。笑顔の中に、適度な緊張感が残っているように見えた。

 渡辺と村田が準決勝進出をかけて、午後2時からの2回戦に臨んだ。

■村田、ゴキゲン中飛車へ

 記録係の都成竜馬三段が振り駒を行うと、2枚が「歩」、2枚が「と」、そしてもう1枚が立って無効に。これでは先後は決まらない。畳に散った5枚の歩を拾い集めた都成三段は、先ほど以上に念入りに手の中で駒を混ぜ、空中に放りあげた。今度は「歩」が3枚。上位者である渡辺の先手と決まった。

 渡辺は居飛車党だが、村田は後手番だと飛車を振ることも多い。果たして、村田はゴキゲン中飛車に構え、渡辺は▲3七銀(第1図)と急戦を目指した。

■新しい形への挑戦

 これまで渡辺は、ゴキゲン中飛車に対しては「超急戦」と呼ばれる作戦(参考1図)を採ることが多く、この▲3七銀からの急戦は指したことがない。先後同形の角換わり腰掛け銀もそうだが、渡辺は「詰みまで研究しないと指せない」と言われる形を深く研究し、公式戦でぶつけてくる。

 その渡辺が本局では第1図を選んだ。新しい形に挑戦してみたかったのか、それとも後日開幕する棋王戦五番勝負に向けて、ゴキゲン中飛車を得意とする久保利明棋王の姿を村田の向こう側に見たのか。いずれにしても、ここに書けるのは、渡辺はさして迷うことなく本局の進行を選んだということだ。

 後手は美濃囲いに囲って急戦を受ける指し方と、銀を4四まで持ってきてがっちりと受け止める指し方が考えられる。本譜は後者。渡辺は後手の動きを見ながら▲9八香(第2図)と穴熊を目指した。

■争点は中央

 対局中の村田はポーカーフェースだ。局面が良くても悪くても表情を変えず、跳ねるような手つきで駒を動かしていく。

 そんな村田が、渡辺が▲8八銀と穴熊を完成させて席を立った時、わずかに表情を変えた。すぐに△4二角(第3図)を指そうと手を伸ばしたところだったからだ。感想戦で渡辺は、△4二角では「△7三桂もあったのでは?」と問いかけた。ここは考えると思って席を外したのかもしれない。

 後手が△7三桂なら先手は▲6五歩と突きにくい。先手からの攻めがないのであれば、次に△4二角と引き、△8五桂の端攻めがある。

 本譜は△4二角(第3図)に▲6五歩〜▲6六金が生じ、中央が争点に。村田の思惑とは違う方向に局面が動いていった。

■渡辺が準決勝進出

 先攻された村田は、自陣に駒を埋めるなどしながらじっと反撃の機会をうかがう。渡辺も攻めあぐねていた。▲5四金(第4図)と出た局面は村田にとってチャンスだった。ここで△3五歩なら、以下▲4五桂△3六歩▲3四歩△3一飛(参考2図)の進行が考えられる。これならまだまだ難しい戦いが続いていた。

 本譜は第4図から△4四歩▲同角△4一飛。当たりをきつくするため、角を近づけて飛車を回ったが、呼び込んだ角の位置が好所。以下▲4六歩△8五歩▲7七銀引△3三角▲4五歩△4四角▲同歩と、渡辺の自然な指し回しに村田は苦戦に陥った。やはり先手玉が安定しているのが大きい。

 その後も村田は眉間(みけん)にしわを寄せながら細い攻めをつなげようとしたが、局面をリードしている渡辺は無理せず自然な手を重ねる。午後3時58分、▲6六金(終了図)で渡辺が受け切り、村田の投了となった。

 1次予選から勝ち続けてきた村田の進撃はここで止まった。とはいえ、これまでの実績と言えば棋王戦の本戦入り(32人)くらいだったのが、今回はベスト8入り。大きな壁を越えたと言ってもいいだろう。

 勝った渡辺はさすがの存在感。本戦1回戦もそうだが、一度奪ったリードを保ったままゴールした。第2回以来、2年ぶり2度目のベスト4進出となる。準決勝では木村一基八段と対戦する。

(諏訪景子)

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