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2011年8月1日16時32分
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<  第34期朝日アマ名人戦三番勝負第2局  > ▲清水上徹(第33期名人)―△一瀬浩司(挑戦者)

清水上名人が3連覇

対局日:2011年6月19日

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■三番勝負の怖さ

 第2局は、第1局から一夜明けた19日午前8時半から行われた。前日は中盤で優位を築いて押し切った清水上・朝日アマ名人。終局後に「2日目の結果次第なので、気持ちを新たに臨みたい」と語った。前々期、前期と初戦を落とした後に連勝して、逆転した経験を持つ。第2局に負ければ、午後に行われる第3局までに気持ちを立て直すのは難しい。三番勝負の怖さをよく知っているのだ。

 一方の一瀬さんは初戦をいいところなく落としたが、気落ちした様子はない。意気込みを聞かれて、「まあ、明日頑張ります」。夕食後には蛍観賞に出向いて気分転換を図った。

 先手番は第1局と替わって清水上さん。持ち時間は第1局と同じ90分。使い切ると1手1分の秒読みだ。

■ゴキゲン中飛車対居飛車穴熊

 ▲7六歩△8四歩▲5六歩の出だしから、清水上さんは得意のゴキゲン中飛車に構えた。対する一瀬さんは、相手の出方を見ながら居飛車穴熊に組む。

 後手が△7三桂とはねた手をとらえ、清水上さんが動いた。三間飛車に転回して桂頭を狙い、作戦勝ち。「ちょっと指しやすいかと思った」という。ところが一瀬さんは「玉が堅いから何とかなるという気持ちで指してました」。相当な楽観派らしい。

 ところが後手が飛車先を突き捨てたのを清水上さんが▲同角と取ったために一瀬さんにもチャンスが生まれた。第1図は清水上さんが▲5二歩と垂らしたところだが、先手の飛車角がいかにも窮屈だ。ここから一瀬さんが△6五歩と突き、以下▲同歩△6六歩▲5七金に△8六飛▲同歩△6八角と進んで本格的な戦いが始まった。

■後手有利に

 第2図は4五から3六に引いた銀を、一瀬さんが4六の馬で食いちぎって△7五銀と打ったところだ。先手の飛車が簡単に詰んでしまった。ここでの形勢判断を、一瀬さんは「ほぼ終わりだと思ってました」、清水上さんは「全然だめですね」。後手有利で二人の意見は一致した。第2図以下は▲7五同飛△同歩▲5一歩成。開始から1時間半がたって、清水上さんの残り時間は30分を切り、一瀬さんは1時間以上残している。挑戦者の理想的な展開となった。

■清水上さん粘る

 一瀬さんは玉の堅さを頼りに先手陣に攻めかかる。清水上さんは攻め合うと負けなので、粘って手を稼ぎたい。第3図は△4八歩に対し、清水上さんが4九の金を▲5八金と上がったところだ。ここで一瀬さんは△4九歩成としたが、△3六桂▲3七玉△4九歩成▲3六玉△3九と▲4七銀△2九とと進めれば優勢だった。先に△4九歩成としたために、先手に▲4七金打という粘りを与えた。さらに続く△3九とに▲4九歩が手筋。残り2分となった清水上さんはこの手を指して慌てたように手洗いに立ち、1分将棋に備えた。

■うまい切り返し

 第4図は一瀬さんが7三の桂を△6五桂と捨てて、▲同金に△8二角と飛車香両取りをかけたところだ。先手陣は金銀の壁が厚く、そう簡単には崩せない。飛車が逃げてくれれば、香を手に入れて△4四香などで底歩の弱点を突ける。ところが、清水上さんの▲5五桂がうまい切り返しだった。以下△7一角▲4三桂成△8二角▲6四歩△9三角▲3二香と進み、あんなに強固で遠かった後手玉が先手の手の届くところまで近づいた。

■一瀬さんに痛恨のミス

 先手が▲3二銀と打った第5図が問題の局面だった。後手玉は次に▲2一銀成△同玉▲3三桂以下の詰めろになっている。ここで△2二銀打なら▲3一銀不成△同銀▲3二銀△2二銀打で千日手コース。一瀬さんが選べば清水上さんは避けられない。しかし一瀬さんは勝ちを読み切っていた。△3二同銀▲同成桂に△4五香なら後手勝ちだと。以下(1)▲5六玉なら△6七銀▲同玉△8七竜以下即詰み。(2)▲3七玉も△3九飛以下詰み。(3)▲4六銀打と合駒するのは△同香▲同角△2二銀で後手勝ちだ。さらに後日わかったことだが、△3二同銀▲同成桂に△5六金と打てば、長手数だが先手玉に詰みもあった。

 ところが一瀬さんは第5図でいきなり△4五香と打った。残り47分もあったにもかかわらず、痛恨のミス。△3二銀と銀を取るのを忘れたのだ。一瀬さんは終局後、開口一番「3手先を指しちゃって……。香を打ってから、銀を取ってないことに気づいた」と嘆いた。

■再び勝ちを逃す

 清水上さんに▲5六玉と逃げられて一瀬さんの手が止まった。遅ればせながらの△3二銀は▲4四角△3三銀打▲3二成桂で先手の勝ちだ。

 6分ほど考えただろうか。一瀬さんは△7六飛と打った。▲6六金打(第6図)の受けにすかさず△5八竜。以下▲4四角△3三銀▲同角成△同桂▲5八歩。ここで一瀬さんの残り時間は30分もあった。両者、頭をつきあわせて考えるが、先手玉に詰みはない。ここでは後手の勝ちはなくなっている。

 実は第6図では△6六同角とすれば後手の勝ちだった。以下▲同金は△6五金以下の詰み。▲6六同銀は△3二銀が△6七銀以下の詰めろになって勝ち。▲6六同角しかないが、△7四銀▲同金△5四金くらいで先手玉は受けなしだ。読み筋通りの勝ちを逃したとはいえ、まだ一瀬さんに勝ちがあったのだ。たっぷり時間があったにもかかわらず、手拍子の△5八竜が惜しまれる。

■2年連続の奇跡的逆転

 最後は一瀬さんが覚悟を決めたように△3二銀と自陣に手を戻したところで、清水上さんが後手玉を詰まして終局。一瀬さんは10分以上も時間を残しての悔しい敗戦だった。

 清水上さんは「最後は何通りも負けがあったので、運がよかった。昨年は奇跡的な逆転で望外な勝ち方をしたので、今年はいい将棋を指したかった。連覇できてうれしいです」。一瀬さんは「第2局は、まさか負けるとは思ってなかった。3二の銀を取ってなかったことに気づいて真っ青になりました。また来年、来たいです。来年こそ奪取します」と話した。

(村上耕司)

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