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2011年7月29日11時34分
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<  第34期朝日アマ名人戦三番勝負第1局  > ▲一瀬浩司(挑戦者)―△清水上徹(第33期名人)

清水上名人が先勝

対局日:2011年6月18日

拡大三番勝負第1局を指す朝日アマ名人の清水上徹さん(左)と挑戦者の一瀬浩司さん。中央は立会人の加藤一二三九段=6月18日、神奈川県湯河原町の「ゆがわら石亭」

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■震災で大会延期

 第34回朝日アマチュア将棋名人戦全国大会は、本来であれば3月12日・13日におこなわれる予定だった。ところが前日の11日に東日本大地震が起こったために延期となり、2カ月以上先の5月28日・29日に改めて開かれた。その全国大会に初出場にし、名だたる強豪を連破して優勝を飾ったのは南関東ブロック代表で千葉県在住の一瀬浩司さん(30)だ。元奨励会三段で、プロ入りまであと一歩と迫った実力者。現在はフリーライターとして、各種メディアで将棋界の動向を伝えている。

■3連覇目指す清水上さん

 一瀬さんの挑戦を受ける朝日アマ名人は、埼玉県在住の清水上徹さん(31)。現在はアマ強豪を多く擁するNECに勤務している。小学生名人から始まってほぼ全ての学生大会を制した後は、数多くのアマ大会でも優勝。朝日アマ名人戦三番勝負は、一昨年は挑戦者の立場で金内辰明さんを、初防衛がかかった昨年は早咲誠和さんを下している。実績は十二分。誰もが認めるアマ棋界の王者と言えよう。

 今期三番勝負も延期され、6月18日・19日に神奈川県湯河原町の「ゆがわら石亭」でおこなわれた。対局室、使われる棋具とも、アマ棋界の頂点を争うにふさわしいもの。一瀬さんは局後、「あまりにも立派なのでびっくりしました」と語っていた。現地ではちょうど、蛍の舞うシーズン。両対局者とも1局目終了後の夜には、美しい蛍を眺めに外に出かけていた。

■早指しの一瀬さん

 両者の棋風は、清水上さんがバランスの取れた振り飛車党なのに対して、一瀬さんは攻め気の強い居飛車党。振り駒で後手番となった清水上さんは△5二飛と得意の中飛車を選んだ。アマプロ問わず、大流行中の戦型だ。

 対して一瀬さんは▲7八金(第1図)と、最近ではあまり見られない対抗策を見せた。早い時間の使い方から見て、一瀬さんが事前に用意した作戦だろう。もっとも、その後も一瀬さんはさほど時間を使わずに指し進めていく。早指しで楽観的な棋風なのだ。一瀬さんは飛車先の歩を交換した後、2四に飛車を置いたまま自陣を整備していく。▲2八飛と引いてしまうと、△4四角から△2六歩と抑え込まれるのが見えているからだ。

 ところが、両者まだ駒組み途中と思われたところで、一瀬さんが▲6五歩と角交換を挑んだ。「びっくりしましたね」と清水上さん。持ち時間1時間30分のうち、両者ともにまだ10分ほどしか使っていない段階。一局の行方を左右しそうな積極的な動きだけに、持ち時間の長いプロの名人戦七番勝負ならば、2時間以上の長考で指される一手かもしれない。

■決断の角打ち

 清水上さんが2筋から逆襲しようとしたところで、一瀬さんは7筋、6筋を突き捨て、▲5三角(第2図)と打ち込んだ。「簡単にいいのかと思いました」と一瀬さん。この楽観的な思い切りのよさはアマ大会向きかもしれない。早くも大きな勝負どころを迎えた。

 清水上さんは慎重に読んで△3五角から飛車先を押さえて反撃した。対して一瀬さんは比較的素直に応じ続ける。以下▲2二歩成△同金▲2八飛△2七歩▲同飛△2六歩▲2八飛△6三銀▲4二角成△5二金。別室でネット観戦していた立会人の加藤一二三九段は、一瀬さんが▲6四角成と王手で馬を作るタイミングを逸してしまったと指摘した。その通り、先手の角がうまく捕獲されてしまう。形勢は清水上さんに傾いた。ただし後手陣はバラバラ。油断できるほどの差はついていない。

■清水上さん、玉頭攻めに転じる

 清水上さんは一瀬さんの動きをなおも逆用して、△7一飛から玉頭方面の攻めに転じる。進んで第3図は清水上さんが△7六歩と桂取りに突いたのに対して、一瀬さんが▲同銀と応じたところだ。ここで清水上さんは素直に△7六同飛と取った。これで悪かろうはずはない、というところだ。ただし正着は△2四歩。じっと桂取りを受けておけば、清水上さんのパーフェクトゲームだった。次に△7六飛と△3七桂不成が残って、先手は収拾がつかない。

 その後、清水上さんも少し攻め急ぐ。一瀬さんが期待したとおり、先手にも楽しみが出てきた。清水上さんが△7八歩(第4図)と打った局面は、先手玉が寄っているかどうか。そう簡単には読みきれないところだ。両者ともに持ち時間をほとんど使いきって、残りは3分。ともかくも、△8八金までの詰みをどう受けるか。難しかったのは▲7八同玉。以下△9九角成▲6九玉△5七香▲7五桂△7八歩には▲5八銀と受けて「実戦ならちょっと焦ったかもしれませんね」と清水上さん。

■読み切りの決め手

 本譜、一瀬さんは▲9七銀と一枚使った後、△9五歩に▲7八玉とかわした。何とか盤面右側の方にまで逃げ越したい一瀬さん。しかし清水上さんは読みきっていた。秒を読まれながら、焦点に放った△4八香(第5図)が見事な決め手。どう応じても受けがない。以下は▲7九銀△6七と▲5七金△同と▲4八飛△6七金まで進めて、一瀬さんは投了した。

 一昨年、昨年と初戦を落としていた清水上さん、今期は幸先のよいスタート。一方の一瀬さんは、勝負どころでの弱気を悔やんでいた。

(松本博文)

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