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2011年11月25日16時4分
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<  第5回朝日杯オープン戦第9局  > 2次予選決勝 ▲阿部光瑠四段―△丸山忠久九段

阿部、A級棋士を連破

対局日:2011年11月4日

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■二回り離れた年齢差

 プロアマ戦の一斉対局から始まった朝日杯。最年少棋士の阿部は一瀬浩司アマと対戦し、苦戦しながらも終盤で逆転勝ち。その後、橋本崇載七段らを破って二次予選に進出した。

 丸山は一流棋士として10年以上活躍している。第1回朝日杯では準優勝した。本年は第24期竜王戦七番勝負で7年ぶりにタイトル戦に出場している。今回は2次予選からの出場だ。

 阿部は1回戦で三浦弘行八段を破って2局続けてA級棋士との対戦となる。丸山は1回戦で阿部健治郎五段に制勝し、阿部姓の棋士との連戦となった。

 盤側で観戦していて、ふと丸山と阿部は年齢が二回り離れていることに気付いた。丸山は1970年生まれ、阿部は94年生まれだ。丸山が90年に棋士になったとき、阿部はまだ生まれていなかったのだ。阿部が若いということもあるが、丸山もキャリアを積んでいるということでもある。現役棋士ではもう先輩よりも後輩の方が多い。

■両者得意の角換わり

 記録係の伊藤沙恵1級(屋敷伸之九段門下)による振り駒は、と金が4枚出て阿部の先手となった。丸山は角換わりと横歩取りのスペシャリストで、集中的に同じ戦型を指すことで知られる。8月以降、後手になると一手損角換わりを多用しており、本局でも△8八角成(第1図)からそのように進んだ。

 阿部は腰掛け銀模様で対抗した。角換わりは阿部の得意戦法でもある。アマチュア時代、第5回全国小学生倉敷王将戦の高学年の部決勝で、角換わり腰掛け銀同型を採用して優勝をしている。最近では何でも指すようで、その時の気分で変えていると言う。

 両者工夫しながら駒組みを進めていく。丸山が△6二飛と転じれば、阿部は▲1七香から1筋を攻める含みを見せる。

■好着想の▲3八飛

 第2図までは手順の前後はあるが前例のある展開。ここで△8二角と打つのが丸山狙いの一手だった。2八の飛をにらみながら△5五銀左を狙い、▲7一角の備えにもなっている。

 数分考えた阿部は▲3八飛と一つ寄せた。対局中にひらめいたというこの手が好着想。後手が攻めてくれば自然に3筋が薄くなることを見越している。また、後手が何もしなければ▲1五歩△同歩▲1八飛と勢いをつけて端を狙える。▲1七香と上がった流れから△8二角には▲1八飛が普通に見えるが、それだと後手から攻められて▲1五歩が遅い。

 丸山は▲3八飛に意表を突かれた。△8二角に5分以上考えていたが、再び考え込む。しかし、すでに△4四銀〜△8二角とこぶしを振り上げている。結局6分以上考えても△5五銀左と攻めるしかなかった。「囲いを簡略化して、攻めを急がないといけなかったかも」と局後の丸山。

 △5五銀左に▲同銀△同銀▲3五歩(第3図)と阿部のカウンターパンチが気持ちよく入った。△同歩には本譜の▲1五歩よりも▲3五同飛(△4六銀なら▲7一銀△3五銀▲6二銀成△同金▲3三歩△4二金▲5一角で先手良し)が良かったそうだが、本譜も端を突破して先手が指しやすい。

■阿部好調

 ある高段棋士が、本局の前に1回戦の阿部(先)−三浦戦の棋譜を見て「すごいな。早指しはA級並みだ」とつぶやいた。棋士になってまだ半年ちょっとの阿部だが、そのセンスは高く評価されている。

 しかし、まだ長い持ち時間ではムラが見られるようだ。三段リーグの持ち時間は1時間半だが、順位戦では6時間もある。阿部自身も「公式戦は慣れてきたが、時間の使い方が甘い」と課題とみている。現在第一線で活躍する棋士たちもデビューしたてのころは早指しのことが多かった。持ち時間の使い方をうまくコントロールできれば、あふれる才気が大輪の花を咲かせることだろう。

 第4図は▲1一香成と成り込んだところ。駒の損得はなく、攻め駒がさばけて先手優勢だ。玉形差が大きい。第3図と第4図を見比べれば、先手が攻めているのが一目瞭然だろう。

 △5六歩の手筋には▲4九香と攻防に据え、△5七角成に▲6八銀打と手順に固める。△8四馬なら▲5四歩△同金▲5五歩△同金▲7一角が厳しい。△6六歩からは丸山必死の肉薄だが、△8四桂(第5図)には▲7七銀打が手堅い。後手陣は守りが弱いので駒を使っても先手の攻めは途切れないのだ。△4九銀不成には▲1八飛が幸便だ。

■阿部快勝で本戦進出

 第6図の▲4三歩が手筋。△5三玉は▲5五歩△6四金▲5七銀上△同歩成▲7一角で次の▲3一角が厳しい。本譜の△同玉には▲2五角から▲1四角でさばけた。

 ▲1四同飛に△6九角では△5八馬の方が粘りはあったが、▲1二飛成△同飛▲同成香△3三金に▲2一成香と桂を取るのが冷静で▲2五桂や▲4六桂が厳しく先手がいい。いざとなれば▲5九金もある。終了図は後手玉に詰めろが掛かり、先手玉はまだ詰みはない。適当な受けもなく投了はやむを得ない。

「何も(攻めが)入らないで終わりそうだったが、本譜は攻めが入った。それでも、逆転はしていない。終始悪かったのか」と丸山は局後に嘆いた。▲3八飛からは阿部がペースをつかんでいたようだ。

 阿部は「A級棋士に連勝できるとは思っていなかったが、2局とも自分らしく指せた」と振り返る。終局後に記者から「本戦での目標はありますか」と聞かれ、はにかみながら「できれば1局勝ちたいです」と答えていた。本戦でも台風の目となりそうだ。

(君島俊介)

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