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2012年2月20日15時31分
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<  第5回朝日杯オープン戦観戦記第25局  > 本戦1回戦 ▲久保利明二冠―△菅井竜也五段

菅井、居飛車で勝つ

対局日:2012年1月20日

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■よき兄貴分

 久保と菅井。共に関西所属で、VS(1対1で行う研究)や研究会をする間柄だ。また、ゴキゲン中飛車と石田流のスペシャリストという共通点もある。

 「久保先生(研究会へ)に声を掛けて頂いたのは奨励会初段の頃ですね」と菅井。菅井が入品(初段へ昇段すること)したのは2006年の2月。6年も前に久保が才能を見抜き、それに応えるように順調に菅井は昇段を重ねてきた。

 両者は公式戦初対局。棋王・王将を持つスター棋士の久保は、菅井にとっては何かと世話になっている先輩でもある。恩返しの意味でも思いきってぶつかっていきたいところだろう。本局への意気込みを「すごい楽しみでしたよ。いろんな展開を考えてみましたし。時間の短い将棋なので、チャンスはあるんじゃないのかなと思っていました」と菅井は瞳をキラキラさせながら局後に語ってくれた。

■駆け引き

 戦型は菅井が飛車を振って、久保が居飛車で迎え撃つのではないかと、勝手に想像していた。久保が先手に決まり▲7六歩に菅井の指し手に注目していると飛車先に手が伸び、△8四歩。盤側にいるこちらは驚いたが、当の久保も菅井も涼しい顔をしている。

 △8四歩について局後に聞くと、菅井は「振り飛車を教わるつもりで居飛車を選びました」と答えた。一方の久保は9手目に▲4八銀。これはどう見ても矢倉模様に進みそうだ。「彼とはいつもたくさん指しているので、違う将棋をと思った」と久保は振り返った。

 第1図は△1一玉と後手が潜り込んだところ。矢倉からスキあらば穴熊に組む手法は、現代では当然の感覚なのだろう。ここまで久保は慎重に時間を使い、菅井は若者らしくキビキビと時間を使わず指し進める。

 先手としては、後手が穴熊を組み上げる前に少しでもポイントを稼いでおきたい。久保は▲7五歩△同歩▲同銀と、左銀で後手陣を圧迫していった。

■攻め合い

 久保は、柔らかな手つきで▲3三歩(第2図)を打った。この手から久保は一分将棋だが、慌てたそぶりはみじんも見せない。▲3三歩△同銀右に▲4五銀△8二飛▲6六角△2五銀▲同歩△7四桂▲5七角△6六歩▲7七金寄△8六歩▲同歩△同桂▲8七金上△9八桂成▲8三歩△同飛▲8四歩△同飛▲6六角△8七飛成▲同金△6七金(変化図)が検討され、後手が穴熊の堅陣なので指せそうとの結論に達した。本譜は△3三同銀右に▲6六角。▲6六角のあたりについて、久保は「ちょっと分からなかった」と振り返った。

 第3図は▲3四香と打った局面。歩の裏を攻めるのは厳しいと言われており、先手が一本取ったかに思えたが、両対局者は「難しい」と口を揃える。▲3四香に△4二金と頑張るのは角筋が止まったので▲1五香と走る手や▲3五銀があって後手は支えきれない。後手は△7四桂と反撃。目障りな角に狙いをつけたもので、「7四に桂を打っておかないと勝負にならない」と菅井は話した。

■流れは菅井に

 △7四桂▲5七角に△3六歩(第4図)が「いい手だった」と久保が褒めた菅井の好手。▲同飛なら△3三歩と催促されてしまうし、放置しても△3七歩成〜△3三歩だ。▲3二香成は、△同飛で3筋を逆襲する形になり味がよい。ここから形勢は後手に傾いた。

 本譜は▲3五銀とぶつけた。菅井は△6六歩▲7七金寄△4五銀と銀をかわしたが、△3七歩成▲同飛△3三歩▲4四銀△同歩と進めた方が良かったようだ。菅井は「たしかにこの方が良かった」と振り返った。

■粘りを許さず

 第5図は△6六歩に▲5二歩とした局面。しかし、代わりに▲1二歩△同玉▲1四歩△同銀▲1三歩△同桂と後手陣を乱しておいた方がアヤがあった。「正確に指されれば負けそうですが、チャンスがあったかも」と久保は話し、菅井は「勝ちそうだけど、ちゃんと指せるかどうか……」と語った。銀などの駒をたくさん持つと、先手からは▲2一銀と放り込んで詰ましにいく筋も生じるため、後手にとっても怖いところだった。

 特別対局室でのタイトルホルダーとの対局。さらに形勢がよくなり、震えてもおかしくないと思うのだが、菅井の対局姿は物怖じせず堂々としている。第5図の▲5二歩に対して△6七歩成となった局面で、「ハッキリ勝てそうだと思った」とは菅井の弁だ。

 その後は20手ほど指し進め、△2二角(終了図)に久保は駒を投じた。

 感想戦後、久保は「(菅井とは)よく指しているので普段と変わらず指しました。さすがに(手が)良く見えてますね」と少し悔しそうな表情を浮かべながら勝者を称えた。

 兄貴分を撃破してベスト8進出。早指しが得意な菅井の暴れっぷりに今後も要注目だ。

(滝澤修司)

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