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2012年3月15日21時27分
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<  第5回朝日杯オープン戦観戦記第30局(下)  > 決勝 ▲広瀬章人七段―△羽生善治二冠

羽生、貫禄の優勝

第3図拡大  

A図拡大  

B図拡大  

C図拡大  

表彰式での羽生善治二冠拡大表彰式での羽生善治二冠

感想戦の様子拡大感想戦で一局を振り返る羽生善治二冠(左)と広瀬章人七段

 羽生善治二冠の2度目の優勝で幕を閉じた第5回朝日杯将棋オープン戦。観戦記(下)では感想戦でのやりとりを中心に、勝敗のポイントを振り返る。

 まず第3図では本譜の▲5二銀ではなく、▲7五歩と突く選択肢も有力だった。以下は△7五同飛▲4五銀△7四飛▲7五歩△8四飛▲3六飛△5六歩▲同銀△7七角成▲同桂△7八角に▲4七銀(A図)までが「こんなふうになる可能性がかなり高い変化手順」(羽生)。A図以下は△5八歩▲6四歩△同飛▲5三角△5九歩成▲6四角成△同歩▲8二飛という順が並べられ、「これは後手が自信ない。こういう展開が怖いんで、△6七銀には不安があった」と羽生は真情を吐露した。

 けれども、大盤解説場で評判が悪かった▲5二銀以降も、先手はまだ形勢を損ねたわけではなかった。先手がいっぺんに敗勢に陥ったのは、その先の指し方に問題があったからという。▲5二銀△4二金上▲6三銀不成△7六飛と進んだ本譜で「▲7六同飛と応じたのが本局の敗着」(感想戦の結論)。正着とされたのは▲同飛に代えて▲4五飛で、これなら難しいながらも先手に分のある分かれだった。

 ▲4五飛に、(1)△7八銀成は▲5五角△8九成銀▲7七歩、(2)△5六歩も▲3三角成△同銀▲7七歩で先手が指せる。▲4五飛と浮く手に対し広瀬が恐れていたのは△5三金だったが、これには▲6四歩(B図)と突き出すのが好手。B図で△6六歩なら、▲4四歩の強手が成立し、△同金▲同飛△同角▲5四銀成は先手の攻めが続く。

 さらにB図で△6四同金は、▲5二銀不成△4四歩に▲2五飛(C図)と横にかわす手が軽い。これに対し(1)△7五飛には▲4三歩と垂らす。以下△3一金は▲6二歩が間に合い、△2四歩も▲2六飛△7八銀成▲6六角でいい。再びC図に戻って、(2)△4二金は▲5五角△5四金▲6三銀不成△5三金引に▲7七角で先手十分。(3)△6六歩は▲2六飛△5六歩に▲2五飛ともう一度浮くのが絶妙のアイデアで、△7八銀成に▲8五飛が速く一手勝ちが濃厚だった。

 以上のような綿密な検討を終えた羽生は最後に、「じゃあ、困っているじゃないですか。後手は完全に押さえ込む展開にしないと勝てないけれど、それは無理でしょうか……」。将棋はどんなに突き詰めても奥が深くて難しい。その事実が本局でも、いささかも揺るがなかったことに満足したかのように、羽生は一瞬明るい表情を見せ、それからゆっくりと一礼し、祝賀会場へと向かった。

(小暮克洋)

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