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<  第6回朝日杯オープン戦第10局  > 1次予選2回戦 ▲井上輝彦アマ―△畠山成幸七段

畠山、熱戦制す

対局日:2012年8月15日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

第6図:  拡大  

終了図:  拡大  

■ダークホース

 井上輝彦アマは初の公式戦となった1回戦で、斎藤慎太郎四段を破りこの2回戦に進出。作戦勝ちから優勢を築いた序盤もさることながら、逆転を許したあと決め手を与えないよう泥臭く食い下がり、再逆転を果たした指し回しがとても印象深い。正直、新鋭で大器と評判の斎藤四段を破り勝ち上がってくるとは、誰も予想できなかったのではないだろうか。一躍アマのダークホース的存在として注目を集めることとなった。

 対する畠山成幸七段は1回戦はシード。対局開始前はいつも以上に笑顔を振りまき、緊張した様子を全く感じさせない。アマプロ戦特有のプレッシャーも当然掛かっていたはずだが、この辺りはキャリア20年以上を積んだ棋士としての余裕が感じられた。

■自分の土俵へ

 先手となった井上アマは3手目に▲6八飛と回り、四間飛車の作戦を示す。以下畠山が△3五歩と相振り飛車を見せた手に対し、▲2二角成(第1図)といきなりの角交換に出た。近年では居飛車対振り飛車戦でこの角交換振り飛車がプロ間で流行しているが、対振り飛車戦でも角交換に出るのが井上流のようで、早くも自分の土俵へと畠山を連れ込みに掛かった。

 ただ畠山も本譜の展開は想定通りだったようだ。「事前にアマチュア情報誌を購入し、井上さんの将棋を調べていましたので、驚きは全くなかったです」と局後、本局への自身の取り組みについて語ってくれた。

■強襲を警戒

 角交換後、四間飛車に構えた両者。▲6五角や△4五角からの馬作りがなくなったタイミングで、今度は互いに向かい飛車に振り直した。迎えた第2図はまだ序盤の駒組み段階で何げない局面に見えるが、ここで畠山は少考し△8二銀と8筋を厚くした。この手では△2五歩が自然で、やや違和感のある手だが、「ひょっとしたら▲6五角と打って来られるかと思って。以下△5二金左▲8三角成△同玉▲8四歩△7二玉▲8三歩成の強襲があります。こちらの角得ですが、時間の短い将棋では怖い順です。またその攻めで潰されてしまっては、周りに何を言われてもおかしくないので選べないですね」と局後の畠山。井上アマが、「▲6五角は頭にありました。もし△2五歩だったらもう一度考えてみるつもりでしたが、恐らく決行していたと思います」と返したことからも、ここは畠山の臭覚の鋭さが出た局面となった。

■1手損の狙い

 第3図から△5二金左とすれば、先後同型から後手が△3五歩の1手を多く指していることになり、先手が1手損の計算となるが、「そこが付け目で、実は△3五歩の1手は得になっていないと踏んでいます。理由としては本譜の先手のように▲6六銀〜▲7五銀と銀を繰り出すことが出来ないからです」と井上アマ。なるほど確かに8筋や2筋を最短ルートで突破を図った際に、△3五歩は必要のない手となっている。この辺りは井上アマの角交換相振り飛車戦における分析力が、非常にたけているところと言えるだろう。

■アマの逸機

 井上アマの戦略通りに進み、先手作戦勝ちとなった本局。井上アマがリズムの良い攻めを見せたのに対し、畠山は受けてばかりはいられないと、香取りを放置して△5四角(第4図)と自陣角を打って攻め合った。対して本譜は▲4八玉と玉の早逃げだが、こうなれば△5四角の顔が立った格好だ。

 図では▲1一角成の攻め合いが勝り、以下△2六歩▲5五馬△2七歩成▲同銀△同角成▲同玉△1六銀▲3八玉△2七飛成▲3九玉△2八歩▲8八香で先手が指せていた。井上アマは「その順はちらっとは思ったのですが、危険すぎて考える気になりませんでした」と局後語ったが、▲4八玉の一手を境に形勢は畠山へと傾いた。

 進んで第5図は▲5四銀と先手が角を取った局面。対して△8二銀と馬取りに銀を打った手が好手で、井上アマが軽視していた一手だった。井上アマは△5四同飛▲4六角の順を考えていて、それならまずまずと感じていたようだ。畠山もその順は自信がなかったようで、「△8二銀を発見して良くなったと思いました」とここで手応えを感じた様子だった。

■チャンスを逃す

 畠山が優勢に進める中、局面は終盤に。第6図で井上アマは▲5二竜としたが、△6二歩で攻めが続かなくなった。ここは▲3二竜と入り、△6二歩▲4八金左△同桂成▲同玉△1九竜▲2一竜の展開なら、桂を取りながら2筋への守りに竜を利かすことができ、先手相当だった。この順は後日畠山の双子の弟である畠山鎮七段が示してくれたもので、「後手玉は薄く、先手に金を渡すと頓死するので神経を使います。また先手は桂を持ったので、▲9五桂などの攻めが見込めるようになるのが大きいです。そう進めば兄が危なかったですね」と解説してくれた。

■プロ貫禄の勝利

 第6図以降も井上アマは粘りを見せるものの、その差を縮めることは出来ず、畠山の△7三同玉(終了図)を見てはっきりした口調で「負けました」と投了を告げた。

 結果的にプロが貫禄を示す形となった本局。局後畠山は、「初戦の井上アマ(先)−斎藤四段戦を見た印象では、井上アマは序盤巧者で終盤もしっかりしており、全く気を抜けないと思っていました。実際に序盤は悪かったと思います」とホッとした様子で語った。また井上アマは、「初戦に続き、本局でも自分らしい将棋を指せ、また熱戦になって満足しています。畠山七段は攻めも受けもしっかりしているなと感じました。やはり強かったです」とこちらはやりきった感じの笑顔で語ってくれた。

 8月15日のお盆の最中に行われた本局。井上アマは「明日も仕事なんです」と多忙の様子。「最近実戦をあまり指せていないのですが、また来年もこの素晴らしい舞台に是非立ちたいです」と早くも来期への意気込みを語ってくれた。井上アマはその後行われたアマ名人戦全国大会で、見事準優勝の活躍を見せてくれたことを付記しておく。

(雲井宏)

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