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<  第6回朝日杯オープン戦第13局  > 1次予選3回戦 ▲中村亮介五段―△古屋皓介アマ

中村、受けきり勝ち

対局日:2012年8月31日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

第6図:  拡大  

終了図:  拡大  

■すごく強いお兄ちゃん

 古屋アマはこの日の午前中に田中寅彦九段との2回戦に勝利。昼食休憩をとって午後2時から中村亮介五段との3回戦に臨んだ。

 2回戦を終えて、「緊張しました。田中先生はすごい迫力で」と語っていた古屋アマ。3回戦の相手中村とは年齢も近く、子どもの頃に通っていた八王子将棋クラブで対局経験もあるとのこと。「当時の中村先生は、少し年上のお兄ちゃん的存在でした。何局か指してもらいましたが、すごく強くて全然かなわなかったですね」と古屋アマ。

 しかし、両者がそろってみると、対局室はピリッとした緊張感に包まれた。中村にすごみのある気迫が感じられるのだ。年齢が近く、子ども時代を知る相手だけに「プロとして負けられない」という思いがより強かったのかもしれない。

■石田流封じ

 先手番を引いた中村は、3手目に▲7五歩と伸ばして石田流を目指す。対して古屋アマはすかさず角交換に出た(第1図)。△8八角成は石田流封じとして有名な手順で、▲8八同飛には△4五角▲7六角△4二玉▲3八金に△5四角が定跡化された進行だ。以下▲5四同角△同歩で後手は手損を盛り返し、先手の美濃囲いも防いで主張を通した格好になる。

 本譜の▲8八同銀は手得を主張する対応だが、△4二玉に▲7八飛と石田流にこだわると△4五角が厳しくなる。そこで、先手は▲6八飛と四間飛車に構えるのが定跡手順で、手得が生きるか7五歩と伸びた形が負担になるか、どいう戦いに進む。プロの実戦例では先手の勝率がいいが、石田流を目指す相手の狙いを外すという意味では実戦的な作戦といえよう。

「中村先生が先手なら、3手目▲7五歩は予想していました。石田流の戦いは経験値が違い過ぎるので、狙いを外す意味で角交換は予定の作戦でしたが、まさかあんな手があるとは。びっくりしました」(古屋アマ)

■プロの洗礼を浴びる

 角交換から△4二玉という古屋アマの手順は、プロの実戦例も多く定跡と言える。しかしここで、中村の目が早くも光る。ビシリと力強い駒音を立てて放たれたのは、天王山に角を打つ▲5五角(第2図)だった。序盤早々7手目に飛び出した中村の新手である。

 「▲5五角は以前からやってみたいと思っていました。成立しているかはギリギリで自信があったわけではありませんが、後手はずっと受けに回らなければいけないので実戦的には大変でしょう。△8八角成〜△4二玉の手順には危険な意味もあるのです」(中村)

 これが定跡の怖さである。プロが積み上げてきた定跡手順には、表に出ない変化が数多く内包されている。水面下の変化を熟知しなければ、うかつに踏み込めないのがプロの戦いなのだ。中村の▲5五角は、八王子将棋クラブの後輩である古屋アマに、「この変化に対する準備はできているのかい?」と問いかけているように感じた。

■高等戦術

 古屋アマは▲5五角に△4四歩と手筋の受け。歩損になるが▲4四同角と取らせることで▲7四歩の筋を消している。この対処は冷静で、先手は▲7八飛から▲5五角と戻して▲7四歩(第3図)と仕掛けたが、その間に後手も△6二銀と備えておりすぐには決まらない。7筋で歩がぶつかったまま駒組みが続いた。

 7四歩の形を解消しないと動きようのない後手は△4四金〜△5五歩で先手の角筋を止める。中村は相手のその動きを待っていたかのように左銀を繰り出して中央から反撃を狙ったのが第4図。相手から容易に解消できない形を作っておき、それを解消しようと動いてきた瞬間に攻める。将棋における高等戦術のひとつだ。

 第4図から△7四歩に、先手はさらに▲3九玉と一呼吸待ち△5三銀の瞬間に▲5五銀と中央の歩を食いちぎって本格的な戦いが始まった。

■ハプニングが生じる

 高等戦術を見せた先手が好調に見えたが、形勢は難解だったようだ。▲5五銀△4五金に▲3五歩(第5図)と攻めたところでは、「ここを攻めると自玉に対する反動もきついので、それほど自信はなかったです」と中村。第5図から△3五同金に▲7六飛は決断の一手。直後の△8八角が見えており、先手も忙しくなるからだ。

 その△8八角が打たれた局面で中村の考慮中のこと、記録係が中村の持ち時間が切れたことを告げたのだが、「え、まだ10分近く残っていますけど」と驚いて中村が答えた。記録係が見るサブの時計と、対局者が見る公式の時計に差異が生じていたのである。いったん時計が止められて対応が協議され、公式時計を正として時計を交換して対局が再開された。結果的に15分少々対局が中断したが、ただでさえ慣れぬプロとの公式戦中のことで、古屋アマには気の毒なハプニングであった。

■後手に痛恨の悪手

 対局再開後、先手は自陣の香を取らせている間に3筋から猛然と攻めたが、先に駒損しているだけに形勢は微差だったという。第6図では「△3七同金でまだ難しいと思っていました」と中村。ここで後手に痛恨の悪手が出てしまう。

 第6図から△3五金がミス。直後の▲1七角が絶好となってしまった。代えて△3七同金▲同角に△7三桂が粘りのある指し方。感想戦では最善を尽くせば先手が良さそうと結論されたものの、△3五香や△4五桂の攻めも残っており、まだまだ大変だったようだ。

 ▲1七角以降は中村が的確に後手の攻め駒を責めてプロらしく受け切った。終了図から△3八歩成は▲同玉で攻めが続かず、他の手では▲3六金と桂を外されてしまう。攻めを続ける手段がなくなっては万事休す。古屋アマは潔く投了した。

「最後は大差になってしまいましたが、プロを相手に2勝は出来過ぎで満足しています。今後はアマ名人戦も控えていますので、そちらに全力を尽くしたい」と、爽やかに語って古屋アマは将棋会館を後にした。

(宮本橘)

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