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<  第6回朝日杯オープン戦第14局  > 2次予選1回戦 ▲丸山忠久九段―△八代弥四段

丸山、新鋭を下す

対局日:2012年11月6日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

参考図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

終了図:  拡大  

■勝率8割超え

 大型新人が2次予選に進出した。八代弥(わたる)四段。棋士としてデビューして、本局までに22勝5敗と8割以上の勝率を挙げている。伸び盛りの若手はよく勝つと言っても、これだけの成績を挙げることは相当に難しい。1次予選では1回戦で清水上徹アマに勝った後、神谷広志七段、宮田敦史六段、飯島栄治七段と実力者を破った。堂々たる成績で、トップクラスとは初めて対戦する。

 丸山は前回、新鋭の阿部光瑠四段に敗れて初めて本戦入りを逃した。同じ轍(てつ)は踏みたくない。竜王戦では2年連続挑戦を果たしたが、順位戦では負け越しており不安定な状況での対局となった。

■師匠の得意戦型

 対局が開始されると、八代は深々と一礼した。丸山の礼も深かったが、八代は10秒ほど頭を下げていた。後手番になった八代は得意な横歩取りに誘導する。丸山は、今でこそ後手番では一手損角換わりを多用しているが、それまでは横歩取り△8五飛戦法のスペシャリストだった。この戦型の急所はよく分かっている。▲3四飛と横歩を取る手つきにためらいはなかった。

 第1図の▲3六歩は飛車を3六に引かず、右桂を活用する積極策が狙い。10年前に八代の師匠である青野照市九段が創案した。少しずつ指されていたが、今年の8月から実戦例が増えている。

 8筋に歩を受けないのは、展開次第で後手の8六の飛車を目標にすることも想定している。そのため、すぐに戦いが起こることも多い。類似形を調べてみると、100手以内に終局することがほとんどだ。

■駒組みから大決戦へ

 第2図は駒組みが進んだところ。第1図の形は実戦例が少ないため、あまり定跡化されておらず、駒組みの手順がきちんと整備されているとは言えない。たとえば、八代は玉を4二に配置して三段目を厚くしたが、これはこれで将来の▲3四桂が生じるので一長一短がある。そのため経験値は重要で、10年以上前からトップ棋士として活躍している丸山の知識や感覚の蓄積が生きそうな形でもある。

 第2図の△7三桂は持ち時間40分のうち、15分近く使って指されたもの。危険な手でもあるが覚悟を決めた。八代は▲7五歩を警戒していた。後手からすると、桂跳ねを直接とがめられたらひどいからだ。▲7五歩以下△8七歩▲9七角△7六飛▲8七金△7七角成▲7六金△同馬▲7四歩△6五桂(参考図)と激しい変化が予想される。丸山は「▲7五歩は微妙」とみて▲6五桂を選ぶ。これも桂を持っての▲3四桂を狙った指し方だ。以下△3四歩▲7三桂成と進んで第3図と進んだ。比較的穏やかに思えた駒組みから一転して大決戦へ。この戦型が持つ激しさを端的に表している。「ゆっくりしたかったが、どのくらいで妥協するか分からなかった」と丸山。

■踏み込みを欠く

 第3図からは△7三同銀▲3四飛△2三銀▲3三飛成△同桂と進んだが、▲2四歩(第4図)が痛打で局面のバランスが崩れた。△同銀は▲4六角の両銀取りがあるため、急所の歩が取れない。

 横歩取りという激しい戦型において、受け一方ではなかなか勝てないもの。△7三同銀では△3五歩▲6二成桂△同金▲3三角成△同銀▲9五角△8二飛▲7一銀△8九飛成▲6二角成△8六角とするか、▲3四飛の時に△8八角成▲同銀△2三角と攻め合うべきだったが、八代は自信を持てずにためらった。第2図で熟考したにもかかわらず読みの本線から外れてしまい、少ない残り時間で軌道修正を迫られたのが痛かった。「どこかで踏み込まないといけませんでした」と八代は嘆く。

 ただし、第4図以下△1二銀に丸山は▲5五角打としたが△6二金が粘りある一着でそう簡単でもなかった。▲5五角打では▲3四桂△5一玉▲7七角打とする方が後手陣を攻めやすかったという。

■これからが勝負

 第5図で打った△2六桂は待望の反撃だが、▲8八香から▲3三馬と挟撃態勢を築かれて受けがなくなった。1手パスになるため相当に指しにくいが、△2六桂の代わりに△8一飛▲1二馬△8九飛成なら本譜よりもアヤがあった。銀を取らせても馬の働きが悪くなるし、後手玉は8筋方面に逃げやすい。

 丸山は「▲1一馬と迂回(うかい)しているからおかしいと思っていた」と厳しく局面を評価していた。しかし、八代は第3図以降悪い流れを引きずってしまい、歯止めが利かなかった。

 終了図は▲7三桂不成△同金▲5二銀△同玉▲4二桂成△6二玉▲7三金からの詰めろがかかっており、△6四銀とかわしても▲7三桂打△同銀▲同桂成で受けなし。

 感想戦が終わり、丸山が席を外した後も、八代はしばらく席を立たなかった。「地元(八代は静岡県伊豆出身)の方に、応援してもらっていたのですが…」と意気消沈。トップ棋士から厳しい洗礼を受けた格好だ。それでも、「分からなかった変化はありましたか」と丁寧に本局について教えてくれた。途中からは一方的に攻められてしまい、持ち味を出すことができなかったのは惜しいがこれからである。早晩再戦の機会を作り、成長した姿を見せてくれることだろう。

(君島俊介)

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