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<  第6回朝日杯オープン戦第16局  > 2次予選決勝 ▲藤井猛九段―△泉正樹七段

藤井、初の本戦へ

対局日:2012年11月7日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

第6図:  拡大  

終了図:  拡大  

■角交換を避ける

本局は初手から▲7六歩△3四歩▲6八飛△6二銀▲4八玉△4四歩(第1図)と進んだ。△4四歩は角交換を拒否した一手。泉は午前中に行われた橋本崇載八段戦でも角道を止めて勝利を収めている。

 △4四歩に代えて△4二玉なら、以下▲2二角成で角交換四間飛車になった可能性が高い。藤井はこの戦法を数年前から一人で育ててきた。それが今、棋界で大流行している。先手番で▲7六歩△3四歩▲6八飛、後手番で▲7六歩△3四歩▲2六歩△4二飛、このオープニングを藤井以外の振り飛車党も多用するようになった。中飛車や三間飛車の数にはまだ及ばないが、数年後には振り飛車の主力戦法になっているかもしれない。

 しかし現時点では、まだ解明されていない部分が多い。角交換四間飛車を本当に理解しているのは藤井だけ、という声もある。泉は藤井より10年ほど先輩だが、この戦型に限っては、経験値で藤井に及ばないと考えただろうか。自分だけ角道を止めるのは少し悔しいが、それだけ角交換四間飛車を評価しているのだろう。

■戦機を待つ

 藤井は午前中に松尾歩七段と激戦を繰り広げた。10時に始まった対局は33分後に千日手が成立。2局目も11時47分に千日手になった。3局目の終局は12時43分である。3局も指せば、へとへとになりそうなものだが、感想戦もしっかりと行っている。棋士のスタミナは底が知れない。

 本局は6筋の位をとって6六銀型を構築した。5筋の歩交換を権利にして、攻めの陣形として不満はない。さらに守備では穴熊を目指す。無事に組み上がれば、あとはさばきを狙うだけである。

 対する泉は飛車先不突きを生かして、6筋に飛車を回った。その後は自陣の整備に専念する。しかし、激しい攻めが「野獣流」と呼ばれる泉の本領。このまま相手の攻めを待つような棋風ではない。△2四角(第2図)は反撃の第一歩。さらに8筋の歩を伸ばして、△6四歩を決行するタイミングを探っている。

■開戦

 第3図で△6四歩▲同歩△同銀▲7七角△6五銀▲同銀△6八歩も有力だった。2四の角を生かした攻め筋だ。以下▲5四銀△同金▲6八飛と進んで、さばき合いになると予想される。穴熊を相手に大駒をさばくのは怖いが、手番を握れるのは後手にとって大きい。この展開はいい勝負である。

 本譜は△6四歩の前に△8六歩▲同歩を入れた。△8二飛と回る含みもあって、悪くない突き捨てに思えるが、その後の進行を考えると指しすぎだったかもしれない。△6四歩▲同歩△同銀に▲4六歩が振り飛車らしい軽い受け。△同角▲5七銀△2四角の局面は後手の6四の銀が負担になっている。直後の▲4五歩も急所の攻めで非常に厳しい。

■先手有利

 泉は5筋に金を繰り出して押さえ込みを図ったが、第4図に至っても4五の歩を除去できずにいた。ここで△4五金は▲4六歩△3五金▲4四角が王手飛車取りでそれまでだ。仕方なく△3三桂で玉のコビンを守ったが、▲4四歩と取り込まれて後手は2歩損。先手有利と見て間違いないだろう。

 ▲8五歩から▲8六角もうまい手順で、次に▲6四角△同金▲5三銀の強襲がある。先手が8筋の突き捨てをとがめた形だ。△6五歩は手堅い受けだが、飛車と桂の活用は遅れる。このあたりは後手が辛抱する展開が続いた。

■勝負の分かれ目

 しかし先手も駒がさばけたわけではない。第5図は予断を許さない局面だ。泉も勝負どころだと考えていたのだろう。ここで長考に入っている。しかし正着を逃した。ここは△8二飛とすべきで、それなら難しい勝負だった。以下▲6四角△同金▲4三銀△6一角▲3二銀成△同金▲6二歩△同飛が感想戦で示された手順。後手陣はキズだらけだが、先手も飛車や左桂がさばけていないので、攻めきるのは容易ではない。局面が落ち着けば後手の駒得(角銀交換)が生きてくる。

 本譜の△4四金は拠点を消して大きな手だが、▲8四歩△8二歩を利かされて後手苦戦が明白となった。これで後手は歩切れ。△8二飛の転回も消えた。△8二歩を打ったときの泉の小さな舌打ちが、この利かしの大きさを物語っている。

 藤井はチャンス到来とみて一気に攻め込んだ。先手の角の動きに注目していただきたい。軽快なステップをきざみながら、急所の駒にビシビシと当たっている。

■快勝譜

 角をさばいた藤井は寄せに入った。▲4三金(第6図)はガジガジ流の攻め。「寄せははがすことなり」である。△8七角は次に△7六角成で自陣の受けに使う狙いだが、藤井はそれを許さず、あっという間に後手の守備駒を消し去ってしまった。▲5六銀(終了図)も鮮やかな決め手。△同銀は▲4三歩成△6三玉▲5三金で王手飛車取りがかかる。後手は反撃しようにも、先手の穴熊が鉄壁で指しようがない。

 本局は藤井の快勝譜となった。これで2次予選を突破。朝日杯が現在の形になって以降、初の本戦進出である。また本局の勝利で公式戦の連勝も「8」に伸びた。「1日に2勝はうれしい。この調子を維持してがんばりたい」と藤井と抱負を語った。

(岩田大介)

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