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<  第6回朝日杯オープン戦第17局  > 2次予選決勝 ▲田村康介六段―△丸山忠久九段

丸山、本戦へ

対局日:2012年11月6日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

第6図:  拡大  

終了図:  拡大  

■早指しの田村

 朝日杯は通常、午前に1局、午後に1局行われる。C級1組順位戦を対局中の糸谷哲郎六段が、昼食休憩時に記者のパソコンで1回戦の田村(先)―深浦康市九段戦の棋譜を見た。田村の快勝に「快勝だ…」とうなり、持ち時間を半分残していたことを告げると、二の句が継げなかった。早見え早指しで知られる糸谷六段にしてこの驚きようである。

 持ち時間が40分しかない朝日杯で、時間を半分残してA級棋士に勝てる人がどれだけいるのだろう。相手が誰であろうと物おじせずに自分のスタイルを貫くところが田村の大きな魅力だ。

■相振り飛車に

 2人は順位戦のクラスが違うこともあり、これまでの対戦は1局しかない。そのときは後手の丸山が得意の1手損角換わりから勝っている。

 記録係の鈴木肇三段による振り駒はと金が4枚。田村の先手に決まった。対局が開始されると、すぐに田村の手が伸びて▲5六歩。1回戦と同じ中飛車宣言だ。

 丸山は居飛車党だが、向かい飛車で対抗した。午前の田村−深浦戦と同じ戦型であることを知らなかったため、局後に「えっ、同じだったの」と驚いていた。

 近年になって丸山の序盤戦術は力戦志向や独自路線の色が濃くなってきた。角換わり系統の戦型を中心に、序盤からねじり合うことが多い。その点では、定跡が未整備で力戦になりやすい相振り飛車は望むところだろう。また、先手中飛車対策の相振り飛車は、居飛車党がよく用いる作戦の一つでもある。深浦九段も用いたことでもそれがうかがえる。

■一長一短の歩交換

 田村が5筋の飛車を三間飛車に振り直したことで、結局先手三間飛車対後手向かい飛車の戦いになった。

 従来の相振り飛車は向かい飛車が最有力と見られていたが、近年は角道を通したまま駒組みを進められる三間飛車が好まれている。田村は先手番の利を戦型相性の良さに転換したといえる。

 田村は早指しや「田村流けんか殺法」という著書などから乱戦派の印象が強い。しかし、居飛車、振り飛車問わず何でも指しこなせるタイプであり、作戦家の一面も持ち合わせている。本局については「戦型を相振り飛車に限定させて実戦的」と言う。初手▲5六歩からの中飛車は意識的に相振り飛車を誘ったわけだ。

 ▲7四歩(第1図)は本譜のように矢倉に組み替えられて一長一短だが、田村は「歩が切れないと手が作れないことが多いので交換した」と話す。このあたりの判断が相振り飛車の難しさだ。

■ノータイムの連続

 田村の三間飛車+高美濃対丸山の向かい飛車+矢倉の構図に決まった第2図。ここで丸山は△2六歩▲同歩△2五歩▲同歩△2六歩と手筋を繰り出す。「3歩持ったら継ぎ歩に垂れ歩」という格言通りの攻めで2筋を凹ませることに成功した。田村は△2六歩と打たれて苦笑いのような表情を浮かべた。

 しかし、第3図で△7四歩と守ったのはやや疑問。▲7七桂△8四銀▲7六歩と進んでみると、得にならなかったからだ。第3図では、単に△3四銀で後手十分だった。

 それにしても、田村の早指しには驚かされる。第3図は62手目なのだが、まだ5分も使っていなかったのだ。バシバシとノータイムで指し進めるのを盤側で見ていると目が回りそうだった。

■大決戦へ

 第4図で田村は▲4五銀と果敢に攻めた。ノータイムでの機敏な一着。これが丸山の意表を突いた。「(第4図の)△1四歩は大緩手。△4二飛と回るのだった」と悔やんでいた。この一手といえる△4五同銀に8分ほど使っている。銀交換後の△8七銀について、「先手が攻めてくるのは目に見えているがこれしかない。自信がなかった」と丸山。△7六銀成が受からない田村が激しく応じて大決戦に突入した。先手は5筋を突破したが、後手玉はまだ遠い。形勢は微妙だ。

■錯覚で後手優勢に

 第5図が勝負どころだった。丸山は5三とが働かないように急いで攻めている。本譜の▲5七同飛は強手だが、△4五桂と手順に銀を取られたのは当然ながら厳しい。利かされのようでも▲9八飛と逃げるべきだった。

 田村が警戒していた手順は▲9八飛に△7七成銀▲3三角成△2七桂▲同銀△同歩成▲2二馬に△2六歩▲2七歩△同歩成▲2八歩…以下千日手模様というもの。田村は千日手を嫌うタイプだ。そこで打開しようと歩を取ったのだが、実際は後手は歩切れなので△2六歩と打てなかったのだ。

 検討の結果、▲9八飛△7七成銀▲3三角成に△4七桂と攻めて難解だが、先手としては本譜よりも良かった。田村が後手の歩の枚数を錯覚したことで、形勢は後手に傾いた。

■丸山が本戦進出

 第6図の△6五角に▲3八玉△6七成銀▲2六飛と2六の歩を除去すればまだ大変なところはあった。実戦の▲4六飛では△6七成銀から食らいつかれて攻めをしのげなかった。2筋が壁なのが痛い。終了図の△5七金を見て、田村は3分使った後に投了した。先手玉は詰めろではないものの、△4七銀成▲同飛△5六角が厳しいため後手が攻め合い勝ち。

 局後に「(▲4六飛から)何かありそうだったが、何もなかった」と田村が嘆くと、丸山は「怖かったよ。何かあったら終わりだから」とほころんだ。対局時の険しい表情と感想戦のニコニコ顔が丸山流だ。

 第1回の準優勝者である丸山。第2回以降はあまり振るわないが、2年ぶりの本戦で大暴れしたい。

(君島俊介)

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