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<  第6回朝日杯オープン戦第18局  > 2次予選決勝 ▲伊藤真吾四段―△佐々木慎六段

伊藤、同期対決制す

対局日:2012年11月16日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

第6図:  拡大  

終了図:  拡大  

■平成5年入会組

 午前の対局の感想戦を終えた佐々木慎六段は、相手の屋敷伸之九段が退出したのを見届けてから、筆者に「午後は同期がそろったね」と声をかけてきた。森けい二九段を破った伊藤真吾四段と佐々木、それに筆者は1993年(平成5年)に奨励会試験を受け、合格した同期なのだ。

 この年に関東で奨励会試験から入会したのは17人。そのうち四段になったのは3人だから、お世辞にも層の厚い世代とはいえない。ネームバリューとしての出世頭は、女流棋士としてタイトルを複数回獲得した矢内理絵子女流四段になるだろう。千葉涼子女流四段、竹部さゆり女流三段も平成5年組で、当時は一度に3人も女性奨励会員が誕生したと話題になった。

 四段になったのは、佐々木、伊藤、そして遠山雄亮五段。それぞれ場面場面では骨っぽいところを見せるが、まだ大きな勲章は得られていない。あと5勝で優勝、賞金1000万円という舞台は、佐々木と伊藤にとって名をあげる絶好機といえる。

 対局開始時、伊藤はこちらに目配せをしてから、正面を見据えて一礼した。顔を上げた佐々木の顔にも「さあ、やろうぜ」と書いてある。

■振り飛車党同士

 両者の公式戦での対戦成績は、佐々木の1勝0敗。どちらも振り飛車党だが、その将棋は後手番の伊藤が中飛車、佐々木は居飛車で戦った。佐々木は奨励会時代から、相振り飛車よりも対抗形を好んで指すことが多かった。伊藤は午前に森九段の振り飛車を居飛車で破ったが、相振り飛車もよく指している。

 本局もやはり、伊藤の先手中飛車に佐々木が居飛車で対抗する形となった。第1図の後手陣は銀冠だが、これは伊藤が早めに3筋から動いていったため。局後に佐々木は「この戦型の銀冠は勝ちにくい。穴熊に組みたかったんだけどね」と振り返った。

 図の▲5六飛は、この戦型ではよく見られる手。うっかり△4二銀と上がろうものなら、▲6六飛△6二飛▲6五飛で早くも技が決まる。8五の歩を守るため△8二飛と戻れば、留守になった6筋から飛車を成り込むことができる。

 佐々木はこの筋を受けて△8四飛と浮く。突っ張って指すなら△7四歩もあるが、▲6六飛△5二銀(△6二飛は▲9五角)の形は銀の位置が悪く指しにくい。

■仕掛けを逃す

 第1図から数手進んで第2図。佐々木はすでに形勢を損ねてしまったと感じていた。▲7四歩と仕掛けられたあとに、互角以上に戦える変化が見えていなかったのだという。

 ▲7四歩に(1)△同飛は、▲同飛△同歩▲8三飛で先手優勢。6九金の一段金が利いており後手は飛車を打ちこむ場所がない。(2)△同歩も▲9五角△8二飛▲7四飛で先手よし。△9四歩と突いてあればこういった筋は消えるのだが、後手番ゆえ手が間に合わなかった。

 伊藤も▲7四歩の仕掛けは読んでいたものの、▲7四歩に(3)△8六歩の変化を割り切ることができなかった。以下▲同歩は△7四歩▲6六角△7五歩▲同角△7四飛で大変。△8六歩に▲同角は△7四歩。▲同飛も△同飛▲同歩で後手に手番が回る。たとえばそこから△7四歩▲7一飛△8八歩くらいでも、明快に先手よしとは言い難い。

 佐々木は▲7四歩△8六歩は、▲6六角でまずいと見ていた。対して△7四飛は▲8六飛、△8三飛も▲7三歩成△同飛▲7四歩△8三飛▲8六歩で先手が指せる。伊藤は局後に「▲6六角があるなら、▲7四歩と仕掛けるべきでしたね」と語った。とはいえ本譜の▲3七銀引も陣形を固める好感触の手。以降はしばらく駒組みが続いた。

■歩が四つ、ぶつかったら

 第3図は本格的な戦いが始まったところ。△6六歩は手筋の突き捨てで、▲同歩は先手の大駒2枚の利きが止まるし、▲同角は質駒になるうえ角が動きにくくなる。▲同飛は△同飛▲同角△6五歩▲7七角△7九飛と先着されてしまう。

 伊藤はこの歩を相手にせずに、▲5四歩と戦線を拡大した。これに△同歩なら飛車の横利きが止まる。後手は勢い△6七歩成としたいが、▲3三角成△同桂▲4四歩と攻められると玉形の差で後手不利になる。

 対して佐々木は、もうひとつ歩をぶつける△2六歩。「歩が三つぶつかったら初段」と俗にいうが、四つならば何段になるのだろう。

 伊藤はこの局面で1分将棋に。局後には「何がなんだかわからなかった。混乱しました」と振り返った。形勢は互角だが、実戦的には時間を10分以上残している佐々木に流れが傾いてきたか。

■先手優勢

 ▲6六歩と手を戻した第4図が本局最大の勝負どころとなった。佐々木は局後に「ここは有利になったかと思いましたが、具体的な手がわからなくて……。うまく手を渡して、相手に攻めてもらいたかったのですが。しかし次の手はまずかったです」と話した。

 佐々木の指した△2二角は、▲6五歩から角交換を挑まれたときに形よく応じる意味。しかし▲2五歩と伸ばされてみると、むしろ角頭が弱く負担になっている。△2二角と▲2五歩、この2手のやりとりで伊藤が優位に立った。

 第4図では、ぼんやりと△5六歩と垂らしておく手、または自玉のコビンをふさいでおく△2二銀がよかったようだ。

■伊藤勝ち切る

 第5図の△5五角はハッとする手。あわてて▲4一飛成と成り込むと△3九竜▲3二竜△3一金でまぎれてしまう。

 伊藤は秒に追われながらも▲4一角を着手。これが好判断で先手の1手勝ちがはっきりした。これに△4六角は▲3二角成が詰めろで明快。佐々木は△3一金と引いてアヤを求めたが、▲2三歩から▲3二歩と急所の利かしが入っては万事休す。

 第6図からの▲2二金も抜け目のない手で、5五角を自陣に戻してしまえば▲3九銀と竜を取ることができる。▲2二金に代えて▲3一歩成は、△2八角成▲同金△同竜▲同玉△2七銀▲同玉△4九角でトン死してしまう。最後まで油断ならないのがプロの将棋だ。

 終了図は後手玉に受けがなく、先手玉は4一竜の利きがあり詰まない。

 局後の検討をひと通り終えたあと、佐々木が「10秒将棋をやろうか。練習で10連勝しても意味ないけど」と声をかけると、伊藤が「本番で指せると思わなかったよ。2人で午前中に負けて、早い時間から10秒将棋をやることになるかと思ってたから」と返す。

 延長戦の10秒将棋は佐々木が圧倒。その後に3人で焼き肉を食べにいき、平成5年入会組の話で大いに盛り上がった。誰が結婚したとかしないとか、あいつは別の道でしっかりやっているとか、みんなに声をかけて同窓会みたいなことをやりたいだとか。

 同期の誰かが大きな活躍をしたら、お祝いも兼ねて声を掛けやすくなる。まずは伊藤の朝日杯の本戦。頂上まで駆けのぼることができるだろうか。

(後藤元気)

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