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<  第6回朝日杯第36局2  > 本戦準決勝 ▲羽生善治三冠―△渡辺明竜王

渡辺、羽生を破り決勝へ

対局日:2013年2月9日

■長岡・金井対談(1)

――羽生善治三冠と渡辺明竜王について、思うところをお願いします。

 長岡裕也五段 羽生三冠と渡辺竜王の対戦は、どちらかというと羽生三冠が押されています。全体として少し分が悪く、苦労している印象を受けますね。ただ一時期(最も分が悪かった期間をとると)1勝9敗だったことを思えば、最近はだいぶ盛り返しているという見方もできる。最高峰の2人なので両者にいえることですが、序中盤でしくじるとつらい。羽生三冠のほうがよりミスが許されない感じでしょうか。

 金井恒太五段 羽生三冠は対渡辺竜王戦に限っていえば、総合力で勝とうという戦い方をしている感じがします。トラックに戻っての、最後の競り合いにはしたくないのではないでしょうか。

――本局は「横歩取り」となりました。昨今の横歩取りを巡る状況はどうなっているのでしょう。

 長岡 後手が苦戦しています。大別すると後手には8五飛―4一玉型、8五飛―5二玉型、8四飛―5二玉型の3通りの選択肢がありますが、どれも現状は後手が割と苦しいですね。本局の1週間ほど前のA級順位戦8回戦(対羽生戦)に続き、本局でも渡辺竜王が横歩取りを採用したのには意表をつかれました。苦しいはずの横歩取りをあえて連続で採用するのは、2手目△8四歩にけっこう苦労しているのかな、という印象を受けますね。△8四歩と△3四歩。どちらがよりチャンスがあるかという比較で、横歩取りのほうがいいという判断をしたのではないでしょうか。

 金井 先手は後手のそれぞれの形に対して有力策があって、困ってはいませんね。本局の8四飛―5二玉型には、6八玉―4八銀のような指し方も有力とされています。ただ後手が苦戦しているとはいえ、先手からすると決定版というほどの手応えはない。そのあたりの兼ね合いで、まだ脈があるという感触を渡辺竜王が感じている可能性はあると思います。

――相矢倉や角換わりと比較すると、後手は例えば勝率4割5分なら満足でしょうか。

 長岡 それだけあれば十分ですかね。相矢倉はトップ同士だと先手がかなり勝っている印象ですし、工夫した割に後手が惨敗するケースも目につきます。渡辺竜王の横歩取り連発は久しぶりでしたが、その戦いぶりを見るにつけ、いまだに破壊力のある作戦であるのを実感しました。前局のA級順位戦にしろ、初見で新手を出して、それが皆の研究の上をいくわけだからすごい。

 金井 久しぶりに変化球を投げたという感じですが、相変わらず精度が高いですね。

――横歩取りにも、受け重視だとか、攻めっ気満々だとか、個性は出ますよね。

 長岡 渡辺竜王は攻めのスタイルを貫いていますね。

 金井 ただ攻撃的といっても、行ったら行ったきりではなく、含みを持たせながら攻め筋を広げるのがうまい。常に複数の攻め筋をちらつかせながら指し手を組み立てるイメージです。

――横歩取りの先後どちらを持ちたいかと聞かれれば、高橋道雄九段のような例外的なタイプを除けば、プロなら皆、先手持ちという状況ですよね。

 長岡 僕も後手を持って指すことがありますが、基本的に先手を持ったときに横歩を取らないという選択はしません。横歩取りが後手ノリになる歴史が、これから先も作られることはないと思います。とはいえ、数年前に大流行した8五飛―4一玉型に対する新山崎流も、今はやる人がほとんどいません。1手何かが変わるとすごく変わってくるのが現在の情勢です。その意味では、横歩取りは結論がなかなか定まりにくい戦型であるともいえるでしょうか。

 金井 よほど後手番に愛がある人以外は、先手を持ちたいと考えていますね。

――不利感の漂う筋を一つ一つ克服し、最後に後手有望の結論になる可能性はありませんか。

 長岡 そういうことにはならないでしょう。8五飛―4一玉型を例に挙げれば、現在は6八玉―3八銀型の郷田流の構えと、7七角―6八銀―6九玉と固める作戦がはやっています。そのどちらも先手が押しているのが現状です。後手がきつい状況がいつまでも続いていくのだと思います。

 金井 後手にも飛車と玉の位置の組み合わせでいろいろ楽しみは出てきましたが、逆に後手の5一金型に固める発想を借用して、先手も金を5九に寄る囲い方が現在は有力です。これは先手にとってかなり大きな進歩なんです。例えば8五飛―5二玉型に対して▲7七角と上がり、玉が6九でも5八でも▲5九金と寄ると非常に堅固な構えになる。総合的に見て、先手の優位性は動かない状況にあります。

 長岡 細かくなりますが、8四飛―5二玉型は8五飛―5二玉型と違って、6九玉型に対してはけっこう強い。角を換えて△3三桂と跳ね、飛車を転換して逆襲するイメージです。6九玉―6八銀―5九金型には、玉形の偏りをついて2筋から反撃するのが効果的なんです。後手としては自玉が堅いのが一番の主張点ですから、先手にいかに固めさせないで仕掛けるかがポイントになります。三つの選択肢の中で8四飛―5二玉型がいま一番はやっている理由は、このタイプには先手がちょっと固めづらい意味があるからなんです。

――ひと昔前、8四飛型に代わって8五飛型の中座飛車が出現したのは、後手陣の弱点を狙う▲3五歩への反発と、積極的に指し手を組み立てられるメリットが重視されたからですよね。それが、いまは先手に固めさせない方策は何か、に力点が移ってきたということですか。

 長岡 先手玉が中住まいに組んだ場合の評価が、非常に低くなったことが背景にあります。

 金井 先手も後手も積極的なよさを求めた時代もありましたが、今はそれより双方ともに堅さを追い求め、ほかの要素は多少犠牲にしても仕方がないという風潮にあります。

――A級順位戦最終9回戦の▲高橋道雄九段―△三浦弘行八段戦(3月1日)は、先手が後手に横歩を取らせて形勢有利に進みました。どう理解すればいいのでしょうか。

 長岡 先手が横歩を取らずに2八に飛車を引き、後手が△7六飛と横歩を取ってくれるなら、この先手の指し方は明らかに得なんです。▲2八飛に△7六飛の展開はバランス上、後手が中住まい玉に囲うしかなくなるというのが先手にとっての最大の利点です。そもそも先手としては、仮に2八の飛車を2六か2五に浮いたとしても、後手番で横歩を取らせた場合と手の損得は同じ理屈ですから。しかし、それでもなお先手番を持って▲2八飛と引く人が少ないという状況は、いかに通常の後手番の横歩取りがつらいかという証左であるともいえるでしょう。

 金井 もちろん、▲2八飛△7六飛で先手がよくなってしまうこともあるわけですけれど、他の後手番の作戦を考えれば、後手は喜んでこの変化に飛び込む傾向にありますね。

 長岡 ▲2八飛と引いても先手が悪くはないかな、という感覚が自分にはあるんですが、あくまでも相対的な話。どの戦型でも後手を良くするのは難しい。▲2八飛と引けば先手も通常の後手番に比べれば勝率が高くなり、後手も横歩を取れるのなら満足ということです。

(小暮克洋)

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