< 第6回朝日杯第37局2 > 本戦決勝 ▲渡辺明竜王―△菅井竜也五段
■長岡裕也五段―金井恒太五段対談(1)
――長岡さんは振り飛車党だった奨励会時代、久保利明九段の薫陶を受けて強くなりました。さしずめ菅井さんは、長岡さんの元師匠のお弟子さんのような存在ということになりますね。
長岡 それはそうなんですが、普段の付き合いがないので彼がどういう考えで将棋を指しているかはまったくわかりません。僕は居飛車党になってしまいましたし。
――金井さんは、菅井さんについてはいかがでしょう。
金井 渡辺竜王が一時期、玉を固めて切れそうな細い攻めをつなげて勝つスタイルで「現代将棋の申し子」のような言われ方をされていましたが、その振り飛車バージョンではないでしょうか。久保さんを筆頭に、若手では戸辺誠六段や永瀬拓矢五段。中飛車と石田流の2本立てでスペシャリストとして活躍している棋士はほかにもいますが、菅井さんは菅井流として語られる新手や新手法の類がたくさんある。若いのに、それはすごいことだと思いますね。
――玉が不安定のままで早めに動くこともあるのは渡辺さんとの違いですね。
長岡 玉を固めて普通に指したらまず負けないと思っている節があるのではないですか。自分に自信があるから、時として序盤から大胆な作戦に出るのもいといません。菅井君と指した銀河戦(2012年11月)で、菅井君は▲2六歩△3四歩▲7六歩に△4二飛。ところがそれから6手目(▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲2五歩に)△3二飛と平気で手損して、以下相穴熊に進みました。どう考えても損な指し方だと思うんだけれど、この作戦選択には穴熊に組んじゃえばこの相手には勝てるという雰囲気を感じました(笑)。ひょっとすると、菅井君がそれでも損はないと思っている可能性は残るんですけれども。菅井君で一番わからないのは、作戦選択でかなりリスクのある指し方を意識的に採っているように見えることがあるところですね。ひそかな自信を持ってやっているのか、その勝負なら勝てると思ってやっているのか、将来を見据えての選択なのか、それがわからない。
それと時間の使い方。銀河戦で指していてびっくりしたのは、僕なんかは考慮時間制なので初めの30秒の時は、できるだけ28秒で指そうとする。使いきったあとは考慮時間に入りますが、それはギリギリの55秒まで考える。それを、菅井君はまったく気にしない。30秒使って考慮時間に入ってすぐに指すんです。わずか数秒で1分の消費が記録されたところで平然と指すなんて、僕の感性ではそんなもったいないことは信じられない。早指し将棋ではいかに少ない時間をやりくりするかが勝負、とこちらは思っているのに(笑)。相手に対しての時間攻めなのか、指す手が決まればそれ以上の時間はいらないと見ているのか。考慮時間に入った途端に指されるとさすがに驚きますよね。盤上も盤外も、菅井君のことはよくわからない。しかし、それでこんなに勝っているのだから、本当に強いんだな、とは思います。
金井 私は菅井君とは指したことがないので、そういうところはまだよくわかりません。
(小暮克洋)
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