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<  第6回朝日杯第37局3  > 本戦決勝 ▲渡辺明竜王―△菅井竜也五段

渡辺が初優勝

対局日:2013年2月9日

第7図:  拡大  

第8図:  拡大  

第9図:  拡大  

■長岡・金井対談(2)

――本局は「ゴキゲン中飛車」になりました。この戦型を巡る昨今の状況はどうでしょうか。

 長岡 居飛車側は「超速▲3七銀」が主流で、振り飛車側は△4四銀の対抗型か、△4四歩から△4五歩と突く菅井流か、それとも本局の△3二金(第7図)かという3択ですよね。その中で振り飛車側がどれを選ぶかには個性が出ますが、△4四銀は重い形になるので、軽いさばきが得意な菅井君はまずやらない。残る二つのうち、美濃囲いにちゃんと組めるのは3二金型ということで、これはいちばん無難な選択です。△3二金でそこそこ指せるというのが振り飛車党の現在の共通認識といってもいいでしょう。ちなみに4四銀型も相変わらず後手有望で、居飛車党の棋士で相穴熊の変化に自信が持てなくて超速を指さなくなった棋士もいるくらいです。

 金井 超速にゴキゲン中飛車側がどう対抗するかという構図が続いていますが、菅井君の場合は低い陣形に組むことを前提に△4四歩か△3二金かという選択になるのだと思います。本局で採用した3二金型は基本に忠実な指し方といえますね。

――▲5八金右まで、実戦例が多い形に進みました。

 長岡 個人的によくわからないのは、△3二金(第7図)以下▲5八金右に、本譜の△5六歩ではなく△4二銀はどうなのかということですね。僕が先手を持った場合は、△5六歩はちょっと無理をしている感じがして、△4二銀と上がられるほうがイヤです。▲6六歩ならそこで△5六歩と突けばいいので、後手は▲7七銀を気にしているということなんですかね。ただ本譜の△5六歩には▲3三角成とされるのが後手を持った場合は気になります。これには桂で取るか金で取るかもわからない。僕には先手が有望に見えるんですが。

 金井 △5六歩と突くタイミングは確かに難しいですよね。すぐ突いて▲3三角成には△同桂が振り飛車党の第一感かと思いますが、あとから▲3五歩が先手にとっては有力な狙い筋になります。△3三同金と取るのは形が悪く、後手がいかにも悪くなりそうです。

――そもそも昔の常識からいえば、後手が自ら位を放棄してみすみす奪還される△5六歩みたいな手がありえなかったと思うのですが。

 長岡 理屈と実戦はちがう、ってところが不思議ですよねえ。先手も厚みの勝負はあまりしたくないということ。実戦的には堅さの勝負をしたいんです。厚みを取ると玉が薄くなるんで。

 金井 これはまさに将棋観のぶつかり合いといえるでしょう。手数を重視する人は先手持ち、ということになりますね。一方で堅さを信じる若手は、後手を持って駒をぶつけてしまえば勝ちやすいと考える。5筋を突いて先手が手得するこの戦型はそういう戦いの表れなんです。

 長岡 △5六歩に▲3三角成という手は、渡辺竜王は考えないということなんでしょうね。

 金井 △5六歩には▲6六歩で手得できれば自信ありと見ている可能性はありますか。

――でも本譜のように、渡辺さんが位を取る展開は珍しいと思うんですけれども。

 長岡 流れということでしょう。手順に▲5五歩と中央に位を取った先手陣はかなり手厚い。ただ▲1六歩(第8図)は微妙な一手で、僕には意味がわかりません。△6四歩と突かれたらどうしたのか。そこで▲3七桂なら、突かずに跳ねそうな気もするし……。

 金井 ▲3七桂は手堅い手ですね。▲3五歩といったときに端角の反発を消している可能性はあるんですけどね。本譜は△5一角だったので、先手がこの持ち時間でこの歩をどういうつもりで突いたかはわからないままになりました。何げなく突いた可能性もありますし、どうだったんでしょう。渡辺竜王に、この局面でどれほどの準備があったかは不明です。あるいは、▲3五歩と突こうということなのかなあ。

 長岡 △5一角はちょっと消極的だったんじゃないかな。これも菅井君特有で、穴熊に組めればなんとかなるという気持ちがあって角を引いている可能性が高いと思います。

 金井 △5一角〜△6二銀は初見では浮かびにくい。事前のアイデアの一つにあった構想であると推測されますね。その場で思いつくのは大変な指し方です。

 長岡 なんといっても、駒が下がりに下がっていますからねえ。先手陣の厚みを隙と見ているのかなあ。▲1六歩△6四歩に▲3五歩はちょっと軽くてうまくいかない感じだし、▲3七桂がイヤだったということなら、▲1六歩に△5四歩と合わせるほうがいいと思うんですが。

――実際、この対局から3日後の順位戦C級2組の将棋(対村中秀史六段戦)で菅井さんは同一局面から△5四歩と合わせ、▲同歩△同銀▲5五歩に△4五銀とぶつけました。

 長岡 渡辺竜王からすると▲1六歩は、△5四歩とされるとほとんど1手パスになるけれど、それはそれで大丈夫という判断だったんでしょうね。

 金井 ▲1六歩は、こちらの形を決めないという意味で含みは一番ありますね。

 長岡 △5一角に▲6五歩と位を取った局面は、二つの位を取れて先手が十分にも見えるのですが、菅井君は位を取らせて低く固めて十分と見ていたのでしょうね。

 金井 ここから穴熊に組めば後手も戦えるということですか。

――ただ感想戦によれば、実際には穴熊は組むのがなかなか大変ということでした。

 長岡 例えば▲9六歩(第9図)に、本譜のように△9四歩と受けないで普通に穴熊を目指したら組めないんですかね。先に△9二香か△7一銀かはわからないですけど……。と思いながら改めて棋譜を見ると、▲9六歩に△9四歩▲6六角△3二飛までが、初手からわずか3分の消費ですか。これってすごくないですか(笑)。何も考えていないに等しいですよね。

 金井 綿密な下準備があったということではないですか。

――そもそも後手が穴熊に組むとして、△9四歩は突いてあるほうがいいんですか。

 長岡 先手に▲9五歩と伸ばされると▲6六角〜▲8五桂〜▲9三桂成のような攻めが生じるので、後手としても突けるものなら△9四歩は突きたいところですね。

 金井 この戦型は居飛車側が左桂を跳ねると端が弱くなるので、意外にも将来的には振り飛車のほうから端を攻めていく展開も考えられます。△9四歩と突きたい気持ちはわかりますね。

 長岡 でも、結果的にはここで端を受けずに穴熊を目指すべきだったような気もします。

 金井 この後で苦労しましたからね。穴熊にはとうとう組めなかったわけで……。

 長岡 ただ、このあたりは渡辺竜王の指し方が実に巧妙。穴熊に対する評価が敏感で、組ませても先手が損にならない場面を心得ている。そして結局、組めないように組めないように指してくるんですね。ここでは菅井君もまだ、いずれは組めると思っていたんではないですか。

 金井 ▲9六歩△9四歩に先手が▲6六角と上がったところでは、先ほどの局面に比べれば後手は端に思いのほかプレッシャーを掛けられていますよね。そこで△3二飛ですが、これは▲3五歩から1歩入手されるのを拒んだ一手です。

(小暮克洋)

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