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<  第7回朝日杯第1局  > 1次予選1回戦 ▲小林憲治アマ―△石田直裕四段

小林アマ、プロに勝利

対局日:2013年7月6日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

第6図:  拡大  

終了図:  拡大  

■アマ棋界の「コバケン」

 小林憲治アマは奈良県に住む龍谷大学の2年生。第36回朝日アマ名人戦全国大会で4位に入り、本棋戦への出場権を得た。漢字は違うが、プロ棋士に「同姓同名」の小林健二九段がいて、彼もアマ棋界で「コバケン」の愛称で親しまれている。

 アマの「コバケン」は今回が初めてのプロ公式戦。朝、早めに対局室へ入り、対戦相手を待つ姿はどこか初々しさが感じられた。

 対する石田直裕四段は昨年10月にプロデビューしたばかりの新人。通算勝率は6割を超え、今期の竜王戦6組では初参加で決勝まで勝ち進む活躍を見せている。

 対局開始10分前。一般公開で多くの将棋ファンが見守る中、両者は静かに駒を並べ始めた。

■初手▲1六歩

 振り駒で先手となった小林アマは初手に▲1六歩と突いた。プロを相手に、1手パスにもなりかねない大胆な端歩である。

 しかし、彼には指したい戦法があった。それが第1図のダイレクト向かい飛車だ。プロの公式戦では後手番で用いられることが多い戦法だが、小林アマはあえて初手▲1六歩と様子を見ることで、この戦型を選択肢のひとつとして用意していたのだ。

 第1図から△4五角▲3六角△同角▲同歩△3五歩▲3八飛と進む。△4五角▲3六角の応酬は今では定跡化された順。△3六同角のところで△6七角成は▲5八金左で馬が詰む。これもダイレクト向かい飛車では基本とされる変化である。

■石田、仕掛ける

 しばらく駒組みが続いて第2図。本格的な開戦はまだ先かと思われたが、ここで石田が△8六歩▲同銀△4九角と動いた。

 8筋の突き捨ては△4九角以下、▲2八飛△3八歩▲4八金と進んだときに△7六角成を用意した手筋。この変化になれば馬が手厚く後手が指せる。

 しかし、本譜▲4八飛が石田の読みの裏をかいた。以下△2七角成▲1八角△同馬▲同香まで進むと、先手は4筋に飛車が回り、2筋の歩が切れて、仕掛けられる前よりも形が良くなっている。

 第2図での△8六歩は指し過ぎだった。代えて△5四歩▲4五歩△5五歩と進めれば一局の将棋である。

■小林アマ優勢に

 ▲1八同香から△2七角▲4五歩△3八歩と進んで第3図。後手は桂香を拾う手や△5四角成と引く楽しみがある。

 石田がうまく立ち回っているように見えたが、第3図以下▲6五歩△7三銀▲4四歩△同銀▲6六角で景色が一変した。

 ▲6六角が感触の良い角打ちで、斜めのラインが後手玉をにらみ、相当受けづらい。この5手は小林アマの実力を示す会心の手順である。形勢ははっきり先手に傾いた。

 角を打たれて石田は長考に沈んだ。持ち時間の40分を使い切り、そして秒読みぎりぎりまで考えて△1二玉。角筋をかわす苦心の延命策だが、以下▲2二歩△同金▲4四飛△同金▲同角で二枚換えとなった。

■失着

 ▲4四同角から△5四角成▲4五歩と進んで第4図。ここで石田が打った△4九飛が失着となった。

 代えて△3九歩成が勝った。この歩成りは桂取りと、次に△3八飛と金香両取りに打つ二つの狙いがある。そして何より3筋に歩が使えることが大きい。第4図は△3三歩と打って、先手の角筋を止めればすぐには寄らない形である。

 本譜△4九飛に▲3七桂がぴったりの桂跳ねで、飛車打ちが完全な空振りとなった。その後、石田は△8五歩▲7七銀△7五歩と巧みに先手陣を崩しにかかるが、そこで▲1五歩が「端玉には端歩」の好手。初手に様子見で突いた▲1六歩が、ここにきて攻め駒として参加し始めた。

■勝負のアヤ

 両者ともに1分将棋で迎えた第5図。手番を握る小林アマが優勢だが、1手間違えれば逆転する緊迫した局面である。

 小林アマは秒読みの中、▲8五銀と飛車先へ銀を捨て、以下△9六歩▲同歩△9三桂に、▲2四歩△3二玉▲3四角と進んだ。後手玉の寄りが見えてきた。

 ▲8五銀には△同飛と取るべきだった。銀を取った手が△9六桂以下の詰めろで、▲4一角には△3三玉と寄って耐えている。感想戦では△8五同飛に▲7六金と立てば先手が残しているとの結論になった。しかし、小林アマは「実戦で指せたかどうか」と自信なさげに語っていた。本譜よりはまだ勝負のアヤが残されていたかもしれない。

■小林アマが2回戦へ

 大詰めで迎えた第6図。先手玉は△9七銀以下の詰めろだが、▲2三角成△3二桂▲6三馬△5二金▲8五馬で勝利を決定づけた。

▲5五金(終了図)に石田が投了を告げた。午前中に行われた5局の中で最も遅い終局。そして唯一のアマ側勝利となった。

 局後のインタビューで小林アマは「石田四段は竜王戦でも活躍された強敵なので、ワンチャンスあればと思っていた」と語った。初のプロアマ戦については「緊張はなかった」と精神面の強さも見せた。

 勝った小林アマは2回戦で小林裕士七段と対戦する。意気込みを聞かれると「強敵続きですが、行けるところまで行きたい」と力強い言葉。今後の活躍が楽しみな19歳である。

(夏芽)

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