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<  第36期朝日アマ名人戦三番勝負第1局  > ▲倉川尚(挑戦者)―△清水上徹(朝日アマ名人)

倉川挑戦者が先勝

対局日:2013年5月25日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

参考図:  拡大  

第5図:  拡大  

終了図:  拡大  

■再会

 第36期朝日アマチュア名人戦三番勝負は、歴代最多タイの5連覇がかかる清水上徹さんと、初挑戦の倉川尚さんの対戦になった。清水上さんは朝日アマ名人を4連覇中で、「アマ最強」の呼び声高い実力者。倉川さんは3月16、17日に行われた全国大会で優勝し、挑戦権を得た。

 2人には、大学時代に将棋部で活躍した共通点がある。学年は清水上さんがひとつ上。清水上さんは明治大学、倉川さんは東京大学でそれぞれ主将を務めた。大会でぶつかることもあったが、「学生時代の戦績は1勝5敗くらい。(清水上さんは)雲の上の存在だと思っていた」と倉川さんは語る。一方の清水上さんは、「久しぶりに会ったが、爽やかな印象は変わっていなかった」と挑戦者について語った。5月25日、移動のため集合した駅のホームでは、親しげに話を交わす2人の姿があった。

 三番勝負の対局場は神奈川県湯河原町の「ゆがわら石亭」。到着後は立会人の加藤一二三九段のもと検分が行われ、両対局者は関係者とともに昼食をとって対局に備えた。

■力を蓄えた挑戦者

 第1局の先手は倉川さんと決まった。初手から▲2六歩△3四歩▲2五歩と飛車先を決めた。振り飛車党の作戦を限定させる趣向だ。清水上さんは△3三角と上がった形を生かして向かい飛車に構えた。

 対する角交換からの▲9六歩(第1図)が最新の対策。△9四歩と受ければ▲6五角△4五桂▲4八銀△5五角▲9七香で先手よし。後手は端を受けられず、先手は端の位を取って玉側で優位に立てる。

 倉川さんは「大阪に引っ越して気分一新、がんばろうという気になった」と、仕事で忙しい中でも将棋に触れる時間を増やそうと努めた。全国大会優勝後はこの三番勝負のために、関西の奨励会員から指導を受け最新形を学んだ。力を蓄えて臨んだ大きな舞台は、序盤から加藤九段が「先手不満なし」と太鼓判を押す展開になった。

■流れは後手

 第2図を見ればわかるように、後手は一歩得で△2五桂と跳ね出せているのだが、この形の生かし方は難しい。後日、広瀬章人七段に意見を聞いてみたところ、「後手は△2五桂と跳ねたあとは争点を作らず、平べったく構えることが多い。玉頭戦になると桂跳ねのメリットが薄くなる」と話した。

 倉川さんは第2図から▲5六歩と動いた。△同歩▲同銀に△5一飛。後手はその動きに呼応する形で飛車を使う。以下▲6七金右に△5四銀と中央に駒を進めて「後手十分の流れ」と広瀬七段。「ただ、端の関係で互角。端の位はとがめることが難しく、どうやっても生きる展開が多い」。将棋では自分の指した手が展開次第ではマイナスになり得るため、この「とがめられにくさ」は価値が高い。

 第3図までの進行は、清水上さんが持ち味を存分に発揮している。△5八角〜△4七角成と馬を作って飛車を押さえるあたりは、じわっとした重みのある手で、いかにも清水上好みだ。気になるのは5筋に垂らされた歩の存在。どう応じても味が悪く、ここが中盤の急所だった。

■もくろみ外れる

 清水上さんは第3図で△5三金と歩を払ったが、これが悪手だった。▲3三角△8一飛▲5五角成と進んで、中央の勢力図が一変した。「▲3三角と打てて自信が出てきた」と倉川さん。清水上さんは▲5五角成直後の△6三桂の切り返しに期待していたが、以下▲3三馬△5六歩▲5八歩△7五歩▲4二馬△6二銀▲6五歩(第4図)と進んでみると、打った桂が負担になっている。完全にもくろみが外れてしまった。

 第3図では△5六歩と突くべきだった。清水上さんは▲1五角を気にしていたが、△4一飛▲5二銀△5七歩成▲同金△同馬▲4一銀成△同金(参考図)と進んで難しい形勢だ。駒得の後手に対し、手番を握った先手からうまい攻めがあるか、という勝負になる。「(本譜は)ゆっくり指してもいいかと思ったが、大局観がよくなかった」と清水上さん。

 清水上さんはすでに1分将棋に入っている。第4図から桂頭を受けるために△3七馬と指したが、▲2五飛で飛車がさばけた。以下△6五桂▲6六桂△9二玉▲7四銀と進んではっきり先手ペースの流れに。こうした玉頭戦になると、端の位が大きくものを言ってくる。手順中、△9二玉と寄った手を清水上さんは悔やんだ。代えて△5五馬のほうが粘りがあった。「これでも悪いが、最善手かつ自分好みの手」と清水上さん。悪い中でも自分が納得できる手を指せるかどうかは大事なことだ。たとえ勝負に負けても、次につながる。

 本譜は▲2二飛成(第5図)が強烈な成り込みで、受けが利かない形になった。

■挑戦者、先勝

 第5図から△4二桂と受けたが、▲6六歩が冷静な手だった。角のラインを消して「万が一」を消している。以下は緩みなく寄せて倉川さんが勝ち切った。

 一局を振り返って、清水上さんは「倉川さんの積極的な指しまわしに、全体的に後手に回ってしまった」と話した。後日には「昔はあんな棋風じゃなかったんですけどね」とも。

 一方の倉川さんは初の三番勝負ながら、堂々とした将棋で見事勝利を収めた。「(清水上さんとは)社会人になってからも数局指して、全部負けている」と話していただけに、手応えをつかむ大きな一勝になった。

(松本哲平)

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