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<  第36期朝日アマ名人戦三番勝負第3局  > ▲倉川尚(挑戦者)―△清水上徹(朝日アマ名人)

清水上名人が5連覇、歴代最多に並ぶ

対局日:2013年5月26日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

参考図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

終了図:  拡大  

■連戦

 第1局は倉川尚挑戦者、第2局は清水上徹・朝日アマ名人が制して迎えた大一番の第3局。5月26日の午前に行われた第2局が終わると、予定を早めて午後1時に開始される運びになった。昼食休憩を挟んでの連戦だ。

 倉川さんは「午前中のダメージが大きかった」と話す。精神面だけでなく、前日の寝不足がたたって体力的にもつらさを感じていた。一方、清水上さんは「平常心で対局に臨めたと思う」と話した。三番勝負における2日目の連戦は何度も経験がある。初めて朝日アマ名人を獲得したときも、2日目を連勝しての奪取劇だった。

 振り駒で先手番を得たのは倉川さん。勝った第1局と同じように▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角と形を決める作戦をぶつけた。対する清水上さんも前夜にきっちり対策を用意している。▲7六歩と角道を開けた手に△4二銀と上がり、第1局とは作戦を変えて臨んだ。

■序盤の工夫

 清水上さんが振り飛車を目指したところで、倉川さんの工夫が出る。角交換からの▲6六歩(第1図)が狙いの構想。形としては「丸山ワクチン」と呼ばれるゴキゲン中飛車対策に似ている。図では△2二飛と向かい飛車にしたいが、それには▲5三角から馬を作れる。このとき△4四角のラインを防いでいるのが▲6六歩の効果だ。結果、後手は△5二飛の途中下車を余儀なくされ、先手は定跡形に比べて1手得することに成功した。

 後日、片上大輔六段に本局の棋譜を見てもらった。片上六段は倉川さんと同じく東京大学将棋部のOB。同期の間柄だった倉川さんについて、「矢倉党で筋がいい将棋。きれいで非力な印象だったが、強くなっている」と語った。清水上さんとも昔から交流があり、「学生時代に10秒将棋を数百局は指した」と話す。「私が四段になるまでは若干分が悪かった」というのだから驚きだ。

 片上六段は本譜の展開を、「1手得できているので(先手の)景色が明るい」と語る。プロの目線で見れば大きな得だが、当の対局者はいたって冷静だった。清水上さんは「一局の将棋。力を出しやすい戦型なのでこちらも十分」、倉川さんは「(丸山ワクチンは)個人的には1手得してどうか、くらいに思っている」と話す。角交換型の将棋は手詰まりになりやすく、長期戦になれば手得の強みは薄まる。本譜も先手がどう打開するかが大きなテーマになった。

■にらみ合いからの打開

 駒組みが進んで第2図。清水上さんが5三の銀を引いたところだが、ここでは一瞬のスキが生まれていた。すなわち▲6五歩。△同歩▲同桂△同桂には▲6四角が王手金取りになるため、後手はすべて素直に応じることはできない。先手が戦いを起こす手段としては有力だった。本譜は先手が仕掛けを見送ったため、飛車がにらみ合う膠着(こうちゃく)状態に陥った。

 関係者は千日手を覚悟していたが、「(千日手は)まったく考えていなかった。指し直しで負けたら後悔するので」と倉川さん。清水上さんもその雰囲気を感じ取っていた。

 午後2時16分、倉川さんは▲1四歩(第3図)と打開に踏み切った。△1四同歩に▲2四歩△同歩▲2三角と打ち、次に▲3四角成を狙う。▲2三角に△4三角なら▲1四香でなんとかなる――これが倉川さんの読み。ところが清水上さんの指し手は△3五歩。歩を逃げながら桂頭を攻める味のいい手で、倉川さんが見落としていた好手だった。この手を境に形勢は後手に傾いた。

 局後、立会人の加藤一二三九段が▲1四歩に代えて▲2九飛△2一飛▲1四歩△同歩▲2四歩△同歩▲1四香△同香▲2二歩(参考図)を指摘した。△同飛と取れば▲3一角△3二飛▲4二角成△同飛▲2四飛と突破して先手よし。

 そこで後手は参考図から△5一飛とかわす。以下▲2四飛は△5五歩▲同歩△同飛▲1四飛△5九飛成で後手よし。先手は4八金・4二金型にしてから仕掛けたほうが▲5八金と寄れるだけ得だが、それでもこの変化は後手に分がある。結論として、先手の打開は無理筋だった可能性が高い。

■防衛、5連覇

 本譜は後手が桂得に成功。その桂で△4三桂(第4図)とされて馬を切らざるを得ないようでは、はっきり先手が苦しくなった。「一気にだめにしてしまった」と倉川さんは肩を落とす。対抗形では飛車側で大きな差がつくと致命傷になることが多い。清水上さんは第1局の借りを返すように、玉頭から先手陣を攻めたてた。

 △5五歩(第5図)も好手で、▲同歩なら△8八歩▲9八銀△8九歩成▲同銀△8七歩で攻めが続く。▲同玉は△6九角が王手竜取りだ。倉川さんは▲7三歩から必死の反攻に出たが、清水上さんは手厚い指しまわしで崩れない。

 午後4時6分、△7七と(終了図)に倉川さんが投了を告げた。以下は▲7七同玉△8八銀▲7八玉△7七飛▲6九玉△5八飛成までの詰み。

 清水上さんは歴代最多タイとなる5連覇を達成。「自分らしい粘り強い将棋を指せたと思う。5連覇は大きな目標のひとつだった。達成できてうれしい」と喜びを語った。倉川さんは「(三番勝負を)接戦にできたのでよかったと思う。またこの舞台に立つことを目標にがんばりたい」とはっきりとした声で話した。

 終局後、軽い打ち上げを済ませ、帰途に着く。大阪へ戻る倉川さんと別れて東京に向かう途中、清水上さんは対局の疲れなど感じさせない様子で、関係者とにこやかに語らっていた。底知れない人、との思いを強くする。来年は前人未到の6連覇がかかる勝負が、清水上さんを待つ。

(松本哲平)

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