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<  第7回朝日杯第5局  > 1次予選1回戦 ▲東野徹男アマ―△八代弥四段

東野アマ、わずかに届かず

対局日:2013年7月6日

第1図:  拡大  

第2図:  拡大  

第3図:  拡大  

第4図:  拡大  

第5図:  拡大  

第6図:  拡大  

終了図:  拡大  

■得意な戦型へ

 今回の朝日杯プロアマ一斉対局は、38歳の東野徹男アマが最年長出場者。40代以上のアマチュアが出場しなかったのは初めてのこと。若い世代が少しずつ台頭している。

 東野アマは公務員として、全国を回っている。サンフランシスコに赴任していたことも。今春の朝日アマ名人戦では北部九州代表として出場。ベスト8進出で初めての朝日杯出場を果たした。現在は新潟に在住。学生時代は東大将棋部の主将を務め、学生王座戦でチームを優勝に導いた。2003年にはアマ竜王を獲得している。

 東野アマは粘り強い棋風で、矢倉を中心にじっくりした将棋を得意にしている。本局の相手は19歳の八代弥四段。記録係の平井奈穂子研修会員による振り駒で先手になった東野アマは、3手目に▲6六歩と角道を止めた。事前に決めていた作戦だ。

 第1図は先手だけでなく後手も飛車先の歩を突いていない。通常の矢倉戦より先手は少し損だ。だが、東野アマはそれを受け入れてでも自分の長所を生かすため、相手が得意な激しい横歩取りを避けた。データを見ると、八代は本局まで横歩取りで8勝1敗。昨年の朝日杯2次予選の対丸山忠久九段戦で負けた他はすべて勝っていた。

 八代は第1図で勢いよく△7五歩。8筋を突かずに済んだ1手を攻めに生かそうとした。対して後手は▲同歩△同角として▲6五歩と位を取り、その後の▲7八飛の転換が力強い。東野アマは攻めを待ち構えていたのだ。矢倉戦ではあまり見られない形だが、渡辺明竜王や羽生善治三冠も似たような反撃の手を指したことがある。

■先手十分

 八代は昨年4月に四段昇段した静岡県出身の新鋭。いまも地元に在住し、対局のたびに上京する。局後の大盤解説会でのあいさつで、地元を中心とした普及活動への思いを述べていた。

 初出場だった前回の朝日杯はプロアマ戦で清水上徹朝日アマ名人に快勝。そのまま勝ち進んで2次予選に進出した。丸山九段に敗れたものの、そのころは8割以上の勝率を挙げる快進撃を続けていた。

 しかし、12月に竜王戦の今泉健司アマ戦で痛恨の敗戦。そこから3月まで4勝7敗と大苦戦に陥った。今年度に入り、本局まで5勝2敗とようやく調子を戻してきた。

 後で振り返ってみると一つの黒星が調子を落とすきっかけになる。逆もしかり。結局のところ、一局一局を積み重ねるしかない。そして、アマチュア戦で同じ轍(てつ)を踏まないように。

 「左美濃に囲えばやれると思ったが、少し苦しいかもしれない」と八代。第2図は先手がグイグイと駒を繰り出してペースをつかんでいた。さかのぼって第1図の△7五歩はうまくいかなかった。八代は攻めを狙うが、しっかり受けられてなかなか思うようにいかない。東野アマは「(第3図の3手前の)▲6九玉のところでは手応えがあった」と言う。1歩得の上に中央が厚い。

 第3図の△3七歩は▲同桂と取らせて2八角の働きを悪くさせる手筋。そうして△3五角▲3六歩△2四角▲2六歩に、△5四歩と合わせを狙う。懸命の手作りだ。先手は▲2六歩で▲7六飛から飛車をさばく指し方も考えられた。小競り合いの本譜も悪くない。角を追いながら2筋にキズを作ったのも大きいからだ。

■手が止まらない

 6筋のトーテムポールが圧倒的な存在感でそびえ立つ第4図は先手十分の態勢だ。

 考慮中に1分将棋となった八代の△3一金が勝負手。美濃囲いを崩すが、金を玉に連絡させて強く戦えるようにした。局後の大盤解説会で「よく金を寄ったね」と郷田真隆九段がたたえていた。

 もっとも、△3一金に▲2七歩△4四角▲5四銀△同金▲同歩△同飛▲5五歩と平凡に指せば先手が良かった。▲2三歩とたたく味の良さも捨てがたい。秒読みの中、東野アマは▲5四歩から強く攻める順を選んだ。部分的には先手に気持ちのいい手順が続く。しかし、後手の右桂を働かせる利敵行為の面もあった。桂を生かして△6五歩が入ったのは大きかった。△4四角と角も働き、流れが変わってきた。

 局後、このあたりの進行を東野アマは「手が止まらなくなった」と表現した。「よほど(△6五歩の前の▲6三歩成で)▲5五歩と反省しようかと思っていた」と話し、いかんとばかりに首を横に振った。

■流れ止まらず

 第5図の△7六歩は手筋ながら、△6六歩▲同金△7六歩▲5五歩△7七歩成▲5四歩△3八飛と攻めるのがよかった。

 というのも、第5図以下▲4三角△7四飛に▲7五歩と打つ手があったからだ。東野アマは「▲7五歩は△8四飛で得ではない」と感じていたが、それには▲5二とや▲2五桂がある。これならまだ難しかった。秒読みの中で、逆転模様の流れを押しとどめるチャンスをとらえられなかった。

 本譜は△7四飛以下▲6五桂△7七歩成▲同金寄に△8五桂の跳ね違いが厳しい。もう▲7五歩は利かない。素通しになった7筋を突いて、八代は△8九飛から△7七桂成(第6図)まで一気に寄り筋に持ち込んだ。金が入れば△3八金の1手詰みだ。「勝ち将棋鬼のごとし」というが、少し前まで盤の隅で寝ていた桂が大躍進。一方、後手玉は第4図で指した△3一金が生きて、なかなか詰めろがかからない。

■上を目指して

 第6図で▲4五桂は最後の勝負手だが、八代はあわてない。△同桂▲5五角△3三歩▲7七金上△同飛成。▲7七金上で▲7七角は△同飛成▲同金上△2六角から詰みだ。▲3四桂からの王手攻撃もわずかに届かず、東野アマの投了となった。

 終了図以下も▲1五歩△2三玉▲3四銀から王手は続くが後手玉は詰まず、先手玉は受けなし。「うまい指し方で先手の作戦勝ちだったが、東野さんにとって残念な一局」と郷田九段は総括した。

 「プロの技を見せられたのは△3一金だけでした」と八代。「ふがいない内容でしたが、勝ててホッとした」と振り返った。勝てたものの、序盤で苦しくして課題が残った。

 東野アマは「いい勝負にできて満足」と話したが、感想戦後は悔しさをにじませた。大盤解説会場で「今年は朝日杯出場が目標だった。それを果たせたので、次はプロに勝つことを目標に頑張りたい」と述べた。

 プロもアマも、立場は違えどプレーヤーとしての向上心は同じ。それぞれのステージで上を目指して戦い続ける。

(君島俊介)

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