2011年7月19日
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25年ぶりの永世名人対決となった第69期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)は、挑戦者の森内俊之九段(40)が羽生善治名人(40)を破り、4期ぶりに名人に返り咲いて閉幕した。3連勝後に3連敗という劇的な展開となった今シリーズを森内新名人に振り返ってもらった。
■「羽生さんの強さ、再認識」
――羽生さんとの勝負を改めて振り返ってください。
「第1局は先手で横歩取りに。途中は不本意な展開でしたが、一番取れてほっとしました。第2局の矢倉戦は短手数での勝利でしたが、急に勝負どころが来て一瞬で終わったような将棋で、現代将棋の怖さを改めて感じました。(負けても)第6局まで行けることになり、最低限の責任は果たせたかなと思いました」
――第3局は羽生さんがゴキゲン中飛車にしました。
「ちょっと意表をつかれました。予想外の機敏な動きで来られましたが、歩得なので攻めを受け止められれば悪くないと思っていました」
――これも勝って3連勝ということになりました。
「望外というか、うまくいきすぎて驚きました。相手の手に乗って指している場面が多く、『何かおかしいな』とちょっと気持ち悪かった。そんなに簡単にはいかないだろうと思っていました」
――名人奪還にあと1勝と迫って足踏みしました。
「第4局は矢倉で完敗。予定変更の指し方が続き、難しい局面でないのに大きなミスをした。第5局は再び横歩取りで、読んでいない手を連続して指された。何が悪かったか分からない。羽生さんの強さを再認識させられました」
――第6局は第4局と途中まで同じ進行でした。
「第4局で納得できない点があったので、やりたかった手を指しました。終盤はきわどい将棋でしたが、最後にミスが出たのが悔やまれます」
――最終局の心境は?
「いずれにしても最後なので力を出し切りたいと……。もともと第7局を目指していたので本望でした。振り駒で先手になり、横歩取りで攻める展開。羽生さんが誘導した形なので、相当調べられているというのは分かりました」
――△4五歩(途中図)に対する▲4四角が鋭かった。
「普通は▲6六飛ですが、△9五桂が痛い。激しくいくしかないと思いました。その後、相手の飛車を捕獲してよくなった。一局を通して悪かったと言えるところはなく、最後に密度の濃い将棋を指せて、よかったです」
■「若手の天下、先延ばしに」
――改めて6期目の名人位への思いをお願いします。
「将棋界で最も伝統のあるタイトルで、子どものころからの夢でした。その時に一番実績のある棋士がなるのがふさわしく、自分が名人になったときは自分でいいのかと苦しんだ時期もありました。特に1期目は勝てなくて、こんな弱い名人でいいのかと、つらかった。名人らしい将棋を指さなければいけないと重圧を感じたときもありました。もちろん今でも重圧は感じますが、最初のころに比べれば楽になりました」
――40歳対決ということでしたが、40代という年齢についてどう考えていますか?
「若い頃は、40代というとどんなおじさんかと思っていましたが、いつの間にか自分がその年齢になった。しっかり成績を残さなければならないが、将棋界全体のことも考えないといけない」
――渡辺竜王、広瀬王位と下の世代が出てきました。
「みなさん優秀で、将棋も強いし、しっかりしている。いずれは若手棋士たちの天下になるでしょうけど、なるべくその時期を先延ばしにしていくのが、先輩棋士としての努めだと思っています。少しでも抵抗したい。幸いにも将棋はスポーツに比べて息の長い活躍ができる。行けるところまで頑張っていきたい」(聞き手・村上耕司)
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