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2012年4月8日16時19分
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〈世界へ広がる将棋〉かつては世襲、今は実力勝負

図:将棋のルーツ拡大将棋のルーツ

 将棋はいつ、どのように誕生したのか。はっきりとはわかっていないが、ルーツは古代インドのゲーム、チャトランガとされる。それが西洋へ伝わってチェスに、東洋では日本の将棋、中国のシャンチー、朝鮮半島のチャンギ、タイのマークルックなどになった。

 日本に伝わったルートは中国大陸と、東南アジア経由の2説がある。600年ごろに原型が伝わったという説もあるが、確認できる最古の史料は、奈良市で11世紀半ばの銘がある木簡と一緒に出土した将棋駒。同時代の「新猿楽記」には、筆者の娘の恋人の趣味として将棋が登場する。日本人と将棋とのつきあいは、少なくとも1千年ほどにわたるのだ。

 現在の将棋盤は、マス目が縦横9列ずつ、駒は8種類40枚だが、当初はマス目も駒数も、もっと多い将棋が指されていたようだ。将棋史に詳しい遊戯史学会の増川宏一会長は「遅くとも16世紀には今の形になった」と話す。

 中世以来、将棋は貴族や僧侶に愛好され、武士や庶民にも広まった。戦国時代、徳川家康は京都で将棋指しや碁打ちを頻繁に召し出しては、公家や武士を招いて将棋会、碁会を開き、贈答用とみられる駒を大量に作らせた。「将棋会の本当の目的は情報収集だった」と増川さんはみる。

 江戸開府から9年後の1612年、一世名人の大橋宗桂が家康から扶持(ふち)を与えられ、ここに名人を頂点とする将棋の家元制が始まった。江戸幕府は、武士だけでなく、寺社から町人まで組織立てることで統制を図っており、家元制もその一環といえるだろう。

 名人はいったん就位すると死ぬまで名乗った。その地位は大橋家、大橋分家、伊藤家の3家のみで襲名されたため、幕末の天野宗歩のように「棋聖」と称される腕を持ちつつも、名人になれない者もいた。名人の主な役目は、年に一度、将軍などの前で腕前を披露する「御城将棋」と、詰将棋の献上だった。

 だが、世襲の名人制度は江戸幕府の崩壊とともに終わる。明治に入り、将棋の再興にかかわったのは、新しいメディアとして次々に誕生していた新聞だった。各紙は棋譜などを掲載して部数を伸ばし、将棋は大衆の人気を獲得していった。

 1935年には実力制の名人制度がスタート。名人は、名実共に、その年の将棋界の覇者となった。

 ほぼ全ての棋士が1年をかけて争う「順位戦」は、名人に連なる棋士の格を定める、重みのある棋戦だ。五つのクラスに分かれ、昇級のチャンスは年に1回。プロになって、名人挑戦権を得るまで、最短でも5年かかる。

 400年前から連綿と続く伝統の重みを受け継ぎつつ、実力制となったことで、名人戦は将棋史に残る数々の名勝負やドラマを生む特別な舞台となった。

     ◇

■名人400年の歴史

○平安時代後期

奈良・興福寺の旧境内から、11世紀半ばの木簡と一緒に将棋駒が出土。同時代の書物に、将棋についての記述が登場。いずれも日本での最古の史料

○鎌倉・室町・戦国時代

公家や僧侶、武士らが将棋を指していたとされる。大将棋、中将棋など、駒の種類や数が異なる複数の将棋があった

○1612年 一世名人大橋宗桂が、徳川家康より扶持(ふ・ち)を与えられ、「名人」制がはじまる。幕末まで、名人位は大橋家、大橋分家、伊藤家の3家で襲名した

○1634年、宗桂の息子、二代大橋宗古が二世名人に。「将棋治式三ケ条」で、二歩や行き場のない駒を打つことの禁止などのルールを制定したとされる

○1734年 七世名人の三代伊藤宗看が、将軍に詰将棋集を献上する。比類のない難解さで、「将棋無双」として知られる。弟の伊藤看寿(贈名人)の「将棋図巧」とともに「詰むや詰まざるや」の別名も

○1760年 将棋好きで知られた徳川家治が十代将軍になる

○1843年 十世名人の六代伊藤宗看が没し、将棋3家による名人制は実質的に終わる

○1921年 関根金次郎が十三世名人に

○1935年 関根が引退し、名人位が実力制となる

○1952年 大山康晴が木村義雄を下して名人に

○1957年 升田幸三が大山を破り名人に。59年に大山に奪還される

○1972年 中原誠が大山から名人を奪取

○1983年 谷川浩司が加藤一二三に勝ち、21歳で史上最年少の名人に

○1996年 羽生善治が名人を含め七冠を達成

○2012年 名人の森内俊之に羽生善治が挑戦。2人の名人戦対決は7度目。羽生にとっては、タイトル獲得数で大山を抜く、通算81期の新記録もかかった戦いとなる

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