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2012年7月5日11時10分
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「将棋はわからないこと多い」羽生二冠、自らの敗因分析

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 第70期将棋名人戦七番勝負で敗れた羽生善治二冠(41)に、6月下旬、話を聞いた。羽生将棋はいま、どんな場面にあるのか。

 「小さなミス、判断の狂いが勝敗を分けた」。羽生は敗因をそう分析する。「結論を急がずに粘り強く、もう一歩踏み込んで、掘り下げて、考えるべき場面がいくつもあった」

 将棋では、早く正確に多くの手を考えることが常に求められる。「その中でも、特に多くの手を読むべき局面、あるいは逆に、省略すべき局面がある。その割り振りを間違えると、失着につながってしまう」

 開幕前は羽生有利との声も高かった。名人挑戦をかけたA級順位戦で9戦全勝。かたや森内俊之名人(41)は公式戦11連敗を喫していた。

 「下馬評は関係ない。名人戦に照準を合わせて調整していたんだと思う」。好敵手の強さを、「流されず、自分のやり方を決して崩さないところ」とたたえた。

 40代に入り、記憶力や体力の衰えは避けられない。30代後半から「量より、全体の理解という形での記憶を重視している」という。

 一方、若手を中心に研究合戦のスピードは止まらない。新手が出ては消え、戦法は日々変化する。「全部には対応できないので、ある種の適当さが要になる」。カギは取捨選択だ。「その戦術に将来性があるのか、自分のスタイルに合うのか、長期的な視点で考えるよう心がける」

 勝負にかける思いにも、変化はあるようだ。「対局を繰り返す日々も無限に続くわけではない。一局の大切さを以前より強く感じている」

 昨年と今年、羽生と対談した伝説的な麻雀(マージャン)打ち、桜井章一(68)は「『勝負を度外視した勝負』を求めているように感じた」と話す。「勝負への執着や周囲に作られたイメージを超えて、本当の自分を探そうとしているのかもしれない」

 羽生は今、将棋の真理を突き詰めることに「興味半分、怖さ半分」と言う。以前は「突き詰めたらおもしろい」と思っていた。今も「さらなる可能性がひらけるのか」と期待するが、一方で「指す手がなくなり、その先は意義も意味もない世界にならないか」との思いも抱く。それは上り詰めていく者だけが垣間みる、ある種の虚無だろうか。

 敗北を経て「結局、将棋はわからないことが多い」と改めて感じる。ただ「わからないなりに積み重ねていけば、それなりの成果がある。そう信じて、続けてゆくしかない」と語った。(小川雪)

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