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第24回朝日オープン 予選2回戦 詳細

 【7/2 東京将棋会館】  ▲小野修一八段  対  △桐山隆アマ

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予選組み合わせ | アマ対プロ成績

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実績十分の桐山アマ

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午後1時頃の対局室

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66手目△4八歩まで

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熟考する小野八段

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感想戦で笑顔を見せる小野八段

熱気あふれるアマプロ戦

 本局の1日前に指された浦野真彦七段−吉田正和朝日アマ名人戦は、19歳の若き吉田アマの逆転勝ちに終わった。1回戦の阪口悟四段−吉田アマ戦に優るとも劣らない衝撃的な内容であり、前日の夕方から東西の将棋会館の控え室では何度も棋譜が並べ返されている。歴史的なプロ入り編入試験を控えている瀬川晶司さんとともに、吉田さんの動向は一躍棋界内外の注目の的となった。

 ただしアマ棋界は吉田さんや瀬川さんだけが強いわけではない。空前の層の厚さを誇るアマ棋界において、桐山さんは朝日アマ名人を始めとする数々のタイトルを制覇してきた。本棋戦では一昨年は西尾明四段、昨年は飯島栄治現五段と石田和雄九段、そして本年は1回戦で金沢孝史四段を破っている。その実力は疑うべくもない。

 一方の小野八段は現在B級2組所属の実力者。3年前の本棋戦ではアマ棋界屈指の実力者である清水上徹さんの進撃を止めている。プロの立場からすれば、頼もしいストッパーだ。ただしアマプロ戦のプレッシャーは独特なもの。局後小野八段は「こんなしびれる将棋はもう……」と言って笑っていた。できれば指したくない、というのがプロの本音であろう。しかしそのしびれるような勝負を見たいのが、ファンの心理でもある。

*   *   *

相矢倉

 振り駒で先手は小野八段。初手▲7六歩に桐山さんは△8四歩と応じる。両者とも居飛車の正統派である。小野八段は▲6八銀と上がり、以下は両者得意の相矢倉となった。

 相矢倉の最新形に組みあがった後、49手目、小野八段は2分で▲5五歩と突いて仕掛けた。ここまでの消費時間は合わせて3分。小野八段は先手番になったらこう指そうと事前に決めてきていた。持ち時間が3時間の本棋戦では、時間の使い方も重要なポイントとなる。

 桐山さんもまた5分しか使っていない。しかし桐山さんは小野八段が時間を使わずに指し進めていることに対して、いささか気圧される心境であった。プロが時間を使わないということは、何か用意の策があると見てほぼ間違いない。

 ▲5五歩では▲3五歩の仕掛けもあり、どちらも数多くの実戦例がある。桐山さんはアマ大会では▲3五歩と指されることが多いそうだ。「よく知らない方を指されました」という桐山さんは、ここから少しずつ時間を使っていく。

*   *   *

最新形

 55手目▲6六銀と中央に出るのが本局の小野八段の作戦。「銀が出る手をやってみたかったので……。玉が薄いですけれど」(小野八段)。代わりに▲5六銀と引く手もあり、そちらも一局。今期名人戦七番勝負第6局の▲森内俊之名人−△羽生善治四冠戦でも指された順だ。

 ▲6六銀に対してこれまでは(1)△8六歩▲同歩△5五歩▲7七角と進んだ例が多い。銀ばさみで4五銀を生け捕ろうとする後手に対して、先手は角を好位置に据え、後手玉をにらみつける。

 ▲7七角以下(A)△4四歩▲5五銀△4五歩▲同歩と進んだのは2002年竜王戦七番勝負第6局の▲阿部隆七段−△羽生善治竜王戦(肩書はいずれも当時)。小野八段、桐山アマともに、もちろんこの実戦譜は踏まえている。先手は銀損をしたが、代わりに角のはたらきが絶大である。

 最近多いのは(B)△8五歩▲同歩△9三桂▲5五銀△8五桂▲6六角。先手の攻撃もかなりの迫力であるが、後手からの継ぎ歩をからめた桂跳ねも早く、先手陣も心もとない。現在の研究課題のひとつで、局後も検討されたが、小野八段はこの変化に自信があった。対して桐山さんは「後手を持って攻めきれる自信がありません」と語っている。

 桐山さんは25分考えて(2)△6二角と引いた。公式戦では初めて現れた手。形は違えど名人戦第6局でも現れた筋で、桐山さんにはそのイメージがあった。ここからは未知の局面。両者の力が試される展開となった。

*   *   *

中盤戦

 △6二角は桂を支える2六歩を狙った手。▲2八飛もありそうだが、小野八段は△1五歩(!)と突かれる手を気にしたという。その深謀遠慮に桐山さんは局後苦笑していた。

 小野八段は▲5九角と引く。対して桐山さんは26分で△3三桂と跳ねる。小野八段が最も警戒していた順だ。攻める側と守る側が駒を交換する場合は、一般的に攻める側の方が得な場合が多いが、この場合は桂を手にして反撃に使えるのが大きい。矢倉ではしばしば現れる有力な手段である。

 △3三桂の次、先手は(1)▲5六銀と引き、△2五桂▲同歩△同銀▲4五歩も有力であった。このあたりは、考え始めるといくらでも時間がほしいところ。

 小野八段は気合よくノータイムで(2)▲3三同桂成とした。

 桐山さんは(A)△同銀引と応じる。(B)△同銀上もあるが、桐山さんは5筋が薄くなると判断して指しきれなかったそうだ。

 小野八段が▲5八飛と中央に狙いをつけたのに対して、△5五桂が桐山さん期待の反撃。以下は▲5七金△8四角▲5六銀△4八歩と進んだ。

*   *   *

昼食休憩

 66手目、4筋の歩が切れたのを利用して打たれた(1)△4八歩は鋭い狙いを秘めた手。小野八段も一瞬「はっ」としたという。 (A)▲同飛は△6六角▲同金△5七銀。 (B)▲同角は△6六角▲同金△4七銀。

 いずれも先手陣は収拾がつかなくなってしまう。

 この△4八歩は昼食休憩直前に指された。小野八段は1分使って12時10分、昼食休憩に入った。

 ここまでの消費時間は小野5分。桐山1時間38分。(持ち時間各3時間)

 同様の意味で、(2)△4七歩と垂らす手も考えられた。先手は▲7七角と上がり、これは別の将棋となる。

*   *   *

再開

 対局再開の時刻は午後1時。その20分も前から小野八段は盤の前に座り、読みふけっていた。

 再開後、小野八段は▲2五歩と突いた。以下は△4九歩成▲2六角と進む。と金を作らせる代償に、先手は好位置に角を進めた。

 ここで(1)△4八とも考えられた。と金の押し売りである。▲同角、▲同飛とも前述の通り△6六角があるので、先手は▲6八飛とかわす。以下は△4七桂成▲同銀△同と▲同金と進んで後手は銀桂交換の駒得。ただし後手は歩切れで、先手の2枚の桂はすぐ攻めに使えそう。形勢は微妙だ。

 本譜、桐山さんは20分考えて(2)△6二角と引いた。この時点で消費時間は小野6分。桐山2時間1分。形勢は互角であるが、時間の差はさらに開いた。

*   *   *

桐山さんに逸機

 △6二角以下は▲同角成△同飛▲7一角と進む。後手が飛車をどこに逃げるかという局面だ。

 本譜、桐山さんは(1)△6一飛と逃げた。

 しかしここは(2)△9二飛が優ったという。振り返ってみれば、ここが本局最大のポイントであった。その違いは後で現れる。

 小野八段は▲2六角成と成り返った。代わりに▲8二角成であれば、桐山さんは△2六角と打つつもりだったという。角とと金のコンビネーションでそれは後手も指せそうだ。

 本譜は▲2六角成以下、(A)△5九角▲同馬△同と▲同飛△2七角と進んだ。

 桐山さんは次に△3六角成から粘ろうと苦心の策に出た。しかし先手陣は手順にと金が消えてさっぱりした形。控え室の評判は、一気に先手乗りに傾いた。

 控え室には桐山さんと同じジュポン化粧品に勤めている渡辺徳之さんが応援に駆けつけていた。現在33歳の渡辺さんはいまの吉田アマ名人と同じ19歳のときに朝日アマ全国大会で決勝にまで勝ち上がっている。桐山さんをよく理解するアマ強豪の一人だ。

 渡辺さんは△5九角に代えて(B)△6四歩▲同歩(▲5三歩は△6五歩▲5二歩成△6六銀で勝負形)△同飛▲6五歩△6三飛とし、△4七歩を狙う。以下▲2七馬ならば△8三飛と回っておいて、後手も戦えそうだ。少なくとも、本譜の順よりは優っていたか。桐山さんも局後、「そうだったね」と同意していた。

*   *   *

小野八段優勢

 80手目△2七角は攻めではなく、馬を作って何とかがんばろうという意味。

 対して先手は有力な攻め手が多い。

 控え室で検討されていたのは(1)▲5三歩。後手は6一飛が絶好の攻撃目標になっているのがつらい。△6二飛は▲4一角があるので△同銀と取るよりなさそうだが、▲4五桂が厳しい。桐山さんは「それでも自信がありませんでした」と語っていた。しかし小野八段は一歩を渡すと△4七歩の垂らしがあるので避けたという。このあたり、すでにプロの落ち着きぶりがうかがえた。

 本譜、小野八段は(2)▲4五歩と突いた。歩を押し上げる、本筋の攻め手である。△3六角成には▲4四桂。後手はやはり6一飛の形がつらい。先手優勢が次第にはっきりしてきた。

 戻って74手目△6一飛の代わりに△9二飛と逃げていればどうなっていたか。本譜と同様に80手目△2七角まで進んだときに、後手の飛車は6一ではなく9二に位置している。そちらの方が好形だったのだ。以下は▲6四歩△同歩▲6三角△8二飛▲7四角成△3六角成が進行例。後手は△4七歩の垂らしを狙って、十分の形勢であった。

*   *   *

手堅い指し回し

 小野八段好調の攻めが続く中、92手目、桐山さんは△4二金と寄って辛抱した。

 消費時間の通計は小野36分。桐山2時間32分。(持ち時間各3時間)

 時間とともに、形勢も大差となってきた。

 モニターテレビの動きはここでしばらく止まっていた。

 すぐに目に映る(1)▲5五銀直(△同歩ならば▲3六馬で、後手の馬が抜ける)は△同金▲同銀△3七馬で大変な形勢。桐山さんにとってみれば望むところの斬り合いであり、それで負けなら仕方がないという心境であった。

 小野八段は他に(2)▲4九飛や(3)▲3九飛も考えたという。そして38分の熟慮の末に、(4)▲4五歩が指された。これが確実な攻め。控え室の検討の熱気はむしろ高まっていたのだが、局後の検討では後手に勝ちは出なかった。

*   *   *

互いの連帯感

 104手目、残り時間5分の桐山さんはそのすべてを使い、一分将棋になるまで考えて△6七金と打った。桐山さんほどの力があれば、自身に勝ちがないことはすでにわかっている。

 桐山さんは121手目▲8八玉まで先手玉を追い、形を作って投了した。

 投了図では先手玉は詰まない。一方後手玉は▲2四銀△同金▲同飛△同玉▲3五角以下、並べ詰みとなる。受けても一手一手で、投了もやむを得ないところだ。

 終了時刻は午後4時23分。

 残り時間は小野1時間21分。桐山1分。(持ち時間)

 桐山さんは局後、「終盤までは持っていきたかったです」と語っていた。不完全燃焼な一局。少し元気のなかった桐山さんであったが、感想戦を終えた後、控え室で浦野七段−吉田アマ戦の棋譜を並べる際には笑顔が戻っていた。才気あふれる吉田さんの存在は、アマチュアの希望でもあるのだ。関係者との打ち上げで桐山さんは「明日は宮崎さんによろしくお伝えください」と言っていた。そこにはアマ同士の連帯感のようなものが感じられた。

 小野八段もまた前日、浦野−吉田戦は並べていた。その棋譜からは、浦野七段の無念さが伝わってきたという。本局、小野八段がリードを奪ってから着実に押し切った指し回しは実に見事。局後に見せた、ほっとしたような笑顔が印象的であった。


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