アサヒ・コム

 

メインメニューをとばして、本文エリアへ 朝日新聞社からアスパラクラブクラブA&A携帯サービスWeb朝日新聞サイトマップ文字拡大・音声

天気住まい就職・転職BOOK健康愛車教育サイエンスデジタルトラベル囲碁将棋社説コラムショッピングbe


第24回朝日オープン 予選2回戦 詳細

 【7/3 東京将棋会館】  ▲宮崎博文アマ  対  △宮田敦史五段

別ウインドウで開きます指し手再現  | 使い方

予選組み合わせ | アマ対プロ成績

画像

対局開始の朝

画像

正確な指し回しが光った宮田五段

画像

力を出し切れなかった宮崎さん

対局開始

 3日続けておこなわれた朝日オープン予選2回戦のアマプロ戦もこの日が最終日。1回戦で上野裕和四段を降した宮崎博文アマと対戦するのは新鋭・宮田敦史五段である。

 対局場は東京・千駄ヶ谷「将棋会館」の特別対局室。記録係の長谷川善久4級(15歳、森下卓九段門下)が振り駒をおこない、先手番は宮崎さんと決まった。

 午前10時、対局開始。両者一礼の後、宮崎アマは▲2六歩と初手を指す。対して宮田五段も△8四歩と飛車先を伸ばし、以下は相懸かりの立ち上がりとなった。

*   *   *

中段飛車と引き飛車

 宮崎さんは飛車先の歩を交換した後、(1)▲2六飛と引く。一昔前では何の変哲もない、常識とされた一手である。

 しかし現在プロの公式戦では(2)▲2八飛と深く引いた後、▲3八銀〜▲2七銀〜▲3六銀と組むことが圧倒的に多い。たとえば羽生善治選手権者に山崎隆之六段が挑んだ前回五番勝負第2局で先手の山崎六段が用いた作戦でもある。その一局、中盤では山崎六段が圧倒的優位を築いていた。ただし結果は羽生選手権者の勝ち。歴史的とも言える大逆転であったのは、記憶に新しい。

 宮田五段が△7二銀と上がった後、宮崎さんは小考する。その少しの間、宮田五段は息を抜きに控え室に姿を見せていた。本局が指されている特別対局室の隣りでは、中高生のための将棋教室が開かれている。元気のいい声が、時おり対局室にまで響いてくるそうだ。

 モニターテレビに▲7六歩が映っているのを見て、宮田五段は対局室に戻る。やがて宮田五段が△8六歩と指す模様が映った。

*   *   *

宮崎さん、ひねり飛車を採用

 ▲8六同歩△同飛の後、宮崎さんは8筋に歩を打たずに▲9六歩と突く。以下宮崎さんはひねり飛車模様の駒組を進めた。先手番になればこう指すと決めていたそうだ。宮崎さんにとっては実戦経験が豊富な作戦であり、また1回戦では上野四段を破った縁起のいい戦法でもある。対して宮田五段も事前に上野−宮崎戦を並べていて、宮崎さんの作戦をある程度予期していたそうだ。

 27手目▲9七角は丸田祐三九段が創案したとされる手法。

 (1)△8九飛成ならば▲8八角と引いて後手の龍に蓋をする。変化はあるが、これは先手よしとなる。

 宮田五段は(2)△9四歩と突いた。先手は次に9筋を突き捨てられてからの△8九飛成(△9八歩が生じる)を警戒しなければならない。

 以前は先手必勝法が生まれるとしたらこの戦法であろうとまで言われたひねり飛車であるが、現在ではあまり指されなくなってしまった。後手側の対策が進み玉を堅く囲えるようになったため、というのが一般的な認識で、ひねり飛車側の勝率ははっきりと悪い。

 宮崎さんとしてはできるだけ持久戦、玉の固め合いにしたくはない。宮崎さんは強気に▲8六飛とぶつけた。

*   *   *

昼食休憩〜再開

 宮崎さんが▲8六飛と指し、盤上に早くも緊張が走ったところで対局は昼食休憩に入った。

 ここまでの消費時間は宮崎50分。宮田1時間18分。

 休憩の間、宮田五段は控え室でゆっくりとうどんを食べていた。昨年12月に胃潰瘍の手術をして以降、体調は決して思わしいものではない。体重もずいぶんと減ったそうだ。

 午後1時、再開。▲8六飛に対して飛車交換を避けるならば(1)△8四歩が考えられる。しかし「さすがにそこまでおとなくしては……」というのが宮田五段の見解。打つならばまだ(2)△8五歩であろうが、▲7六飛と寄られて、これは先手の言い分が通った形である。

 ここまで宮田五段は飛車交換辞さずの構えで慎重に陣形を整備していた。そして昼食休憩をはさんで30分考え(3)△8六同飛と応じた。宮崎さんも90%以上、交換されると思ったそうだ。

 以下▲同角に宮田五段は(A)△2六飛と打つ。8六の角取りと2八飛成の両狙い。ただしあまり見たことのない筋である。宮崎さんにとっても意外な一手であった。

 宮崎さんは代わりに(B)△8九飛を読んでいたという。以下▲8八銀△8五歩▲9七角が進行例で、以下はぎりぎりの攻防が予想される。

 △2六飛に対して、先手はどう指すか。早くも重大な勝負どころとなった。

*   *   *

宮崎さんの判断ミス

 宮崎さんは△2六飛を見て必要以上に形勢を悲観してしまった。気落ちした宮崎さんは6分の考慮で(1)▲8五飛と打つ。この一手よりないと思っていたそうだ。しかしそうではなかった。

 宮田五段は(2)▲9七角と逃げられる手を読んでいた。△2八飛成に対しては、▲8三歩の反撃がある。後手はこの歩の対処が悩ましい。

 「▲8五飛と打ってからはだめだと思っていました。これはもう完全に悪いかと思ったんで……」(宮崎さん)

 「いや、だめってことはないでしょう。いいとは思っていませんでした」(宮田五段)

 宮崎さんの本当のミスは、この後に訪れる。

 ▲8五飛以下は△8三歩▲2七歩△7六飛と進んだ。次に△9三桂と跳ばれると先手は飛車を取られてしまう。よってどうするか。

 本譜、宮崎さんは13分で(A)▲9七角と引いた。これははっきり判断ミス。△7七角成▲同金△同飛成の二枚換えが実現して、後手優勢となった。このとき控え室を訪れてモニターテレビを見ていた島朗八段も、後手よしとの見解を示していた。

 ▲9七角では代わりに(2)▲8七金と強く上がり、△9三桂▲7六金△8五桂▲同桂△9九角成▲7四歩と勝負すべきであった。以下△同歩▲7三歩△8一銀で宮崎さんは手が続かないと思ったそうだが、▲9三桂不成(!)があった。△同香は空いた空間に▲9一飛と打たれるので△9二銀と逃げるよりないが、いかにも指しづらい。さらに▲7二歩成△同金▲6一飛△5一飛▲6四飛成と進めば難解な形勢である。

 1回戦では上野四段を相手に白熱の終盤戦を制した宮崎さんであったが、本局では残念ながら終盤に入る前に大きな差がついてしまった。

*   *   *

宮田五段、正確な指し回し

 △7七同飛成に対して▲5五角は飛香両取りであるが、△7六龍と引かれると逆に先手の飛車に当たっている。以下▲8六飛△同竜▲同角と進み、「こちらは駒損(角と金桂の二枚換え)でバラバラで、向こうはしっかりしている。ちょっと勝ち味がないですね」(宮崎さん)

 46手目、宮田五段が(1)△3三桂と跳ねて香取りを受けた手を見て、控え室では「落ち着いた手ですね」という声が上がった。

 すぐに(2)△8九飛と打ち込めば話が早そうだが、▲6八角△7六桂▲1一角成△6八桂成▲同銀で意外と大変。△6九飛成には▲5九銀と引いて頑張られる。一方先手からは▲2一馬〜▲1二飛の筋なども生じる。宮田五段は、玉側の香を取らせる発想はなかったそうだ。

 続いて▲8二歩に△9三桂も落ち着いた手。単に桂を逃げただけではなく、後で△8九飛に▲9七角と引かれたときに△8五桂を用意している。

 55手目(A)▲2一飛はごく自然に見える一着で、先手が反撃するならこれよりなさそうだ。

 しかし宮田五段は(B)▲7三歩成も読んでいた。あまり効いていないようだが、後で角を手にしたときに▲6三角の筋などが生じる。また先手は飛車を手持ちにしておけば、受けに使える含みもある。「ちゃんとやれば後手よしなんでしょうが……。でもはっきりとは読みきっていませんでした」。宮田五段は感想戦で、随所に深い読みを垣間見せていた。

*   *   *

最終盤

 終盤力に定評のある宮田五段に、こうも慎重かつ正確に指し回されては、チャンスはなかなかめぐって来ない。58手目△2八金と打たれたとき、宮崎さんは投了まで考えたそうだ。しかし「手数が短すぎるので」と思い直し、(1)▲5九金と寄った。悪いながらも最善の頑張り。粘りのある手だ。

 代わりに(2)▲3六歩と上部に逃げ道を開くのは△6八桂成▲同銀△3九角▲3七玉△2九金▲3九金△同飛成で後手勝勢である。

 ▲5九金以下は△6八桂成▲同銀△3九角▲4九玉と進む。

 この時点で残り時間は宮崎1時間22分。宮田23分。

 宮田五段はあまり残っていない時間を割いて、最後の寄せを読み始めた。

 モニターテレビが止まっている間、控え室でも先手玉をどう寄せるかが検討されていた。しかしなかなかすっきりした順は見つからない。検討陣のひとりである片上大輔四段は「宮田君なら何とかするんでしょうね。宮田君は強いですから」と言って笑っていた。

 東京大学法学部在学中に四段に昇段して話題になった片上四段は、6月末に単位を揃えて卒業した。東大生ということではなく、将棋の活躍で話題になりたいと語っていた片上四段はデビュー1年目の昨年度、全棋士中勝率4位という好成績を残した。渡辺明竜王、山崎六段、そして宮田五段らが若手棋士の先頭集団を形成しているとすれば、片上四段はそれに次ぐグループに属していることになるだろう。

 宮田五段はまず(A)△4五桂を読んでいたという。しかしこれは▲6九桂ではっきりしない。宮田五段は23分のうち21分を使い、すっぱり(B)△5九飛成と決めにいった。

*   *   *

鮮やかな収束

 宮田五段が△5九飛成と切った時点で残り時間は宮崎1時間22分。宮田2分。宮田五段にはほとんど時間は残っていないが、そこで誤らないのが強みである。

 ▲5九同銀は△5七角成で必至なので、宮崎さんは▲同玉と応じる。以下△3八金で先手玉は受けなしとなった。手の見える方は(1)▲3二香の反撃が浮かぶであろうか。しかし後手玉は詰めろではないので△7八金で先手負け。また△同玉でも手は続かない。

 控え室では(2)▲6九玉と早逃げして最後の勝負か、と言われていた。しかしそれも△8七金としばって後手の勝ち。▲7八香は△8九銀、または▲7八桂△8九銀▲7九香ならば△4八角成でよい。

 本譜、宮崎さんは(3)▲8八飛。自陣飛車を打って最後の抵抗を見せた。対して宮田五段の△8七金が鮮やかな決め手。

 (A)▲同飛は△7八銀が詰めろ飛車取りとなる。

 宮崎さんは(B)▲6九玉と寄り、以下は△8八金▲同角△8七銀▲6六角△4八角成まで進めて投了した。

 終了時刻は午後4時12分。

 残り時間は宮崎1時間17分。宮田2分。

 投了図では先手玉に詰めろはかかっていないが、受けても一手一手。対して後手玉に迫る有効な手段はない。

 前日小野八段に破れた桐山隆さんと同様、宮崎さんもチャンスのない終盤戦になってしまったことを残念がっていた。しかし本棋戦で1勝できたことについては、「すごくうれしかったです」。朝日アマ全国大会で優勝1回、準優勝1回の実力者だけに、再びアマプロ戦に登場する可能性は高い。

 勝った宮田五段は3回戦で大島映二七段と対戦する。前回は本戦でベスト8にまで進出した実績がある。同世代の山崎六段に続いて羽生選手権者に挑戦することがあれば、棋界はますます盛り上がるであろう。


検索 使い方

キーワード入力

朝日新聞サービス

ここから広告です
広告終わり

将棋ピックアップ

朝日将棋塾

▲このページのトップに戻る

asahi.comトップ社会スポーツビジネス暮らし政治国際文化・芸能ENGLISHマイタウン

ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |
Copyright Asahi Shimbun. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission